網タイツの思い出
広告代理店やデザイン関連の職には、
たまに勘違いした奴が迷い込んでくる。
こんな風に書くと「私?」「僕?」と思われる方がいるかもしれないけれど、それは大丈夫です。
そう思う人は必ずそんな奴ではない。
まず勘違いしている奴は、自分が勘違野郎だとは絶対思わないから。
ともかく、反省とか深く考えるとかいう行為とは無縁の生き物なのだ。
ある日…
「Aさんの過去の作品を見せて欲しいんです。」
同じ社内の営業女子が、突然私をつかまえて言うのである。
「?」
「今度の私担当のお仕事は、Aさんがデザインされるんですよね」
「あ、ああ。そうみたいだけど」
なにげなく彼女の足元を見る。(なんでもいいが、その網タイツは色んな意味でキツイぞ…)
「あたしAさんの作るモノを見たことないので、 見せて頂きたいんです。」
「え、ああそうなの。」
(全く違う意味でドキッとするなこのタイツは。心臓に悪いわ)
「明後日までに用意しておいてくださいね。」
「で、それはクライアントに見せるためなの?」
(なんだかそのタイツは、スーパーの冷蔵ケースを思い出すぞ)
「いえそうじゃなくてぇ、あたし今度のお仕事上手くいくかどうか 心配で、今のうちAさんのお仕事見て判断しておいたほうが いいと思って」
「…」
(そうだ!ハム売り場だな。間違いない!)
失礼なのはお互い様だと思うが、
およそ相手の気持ちや、立場を考えないと言う意味では、多分彼女の方が数倍失礼なような気がする。
もうその彼女の顔も名前も忘れてしまったが、あの網タイツだけは強烈に残っている。
ちなみに、その彼女がデスクの近くを通る際に、使用中のMac(デスクトップタイプ)のコードを引っかけて抜いていったこともあった。
もちろん彼女は、それに気がつかずに立ち去っていった。やっぱり勘違野郎は、振り返るということをしないのだ。