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なぜ『Perfect Days』は"feeling good"なのか-映画『Perfect Days』をデコンする-

こんにちは。先日のデコン会で、映画『Perfect Days』をデコンしのでシェアします。


映画にならなかった353日


今までの映画の公式サイトはただの情報の羅列でした。映画が主役でWebサイトはそれを補足するもの、情報を提供するものという役割だった。でも『Perfect days』は主従関係ではなく並列関係。

Webサイトの意味と役割と変えました。

映画では12日間を表現して、webで残りの353日間を表現した。つまり映画で描いていた平山の日常は、たかだか1年のうちの2週間足らずでしかないのです。残りの日々にももちろん価値があるわけで、それらの日々も合わせて『Perfect days』です。

触れられる作品


映画だけ観ても完結はするんですが、『Perfect days』のオフィシャルサイトでしか見られないコンテンツもあります。おまけとか補完というレベルをはるかに超えていて、もはやこのサイト自体がもう1つの作品になっています。

サイト限定書き下ろし小説「Days of HIRAYAMA」を掲載しています。しかもこのサイトは"触れられる"仕様です。

カーソルに合わせて文字が揺れたり、文章に合わせてほうきで掃く音がしたり、髭剃りの音がしたり。音が文章にシンクロします。

音、ゆらぎ、触覚あわせて『perfect days』への没入感を高めていきます。

情報から体験に。

このサイトは情報ではなく体験です。

Spikes AsiaでEntertainment部門で受賞していることからもこのサイト自体が情報ではなくエンタメとして機能していることがわかります。

たかしの留守電

これもまた映画本編にはない、web上にしかないコンテンツです。もちろん映画のストーリーとリンクしています。

これを知らなくても映画は楽しめますが、これを聞いたほうがもっと楽しめます。いかにもタカシが言いそうなウザい感じで最高です。10のうちの9とかです。

そのくせ、亡くなった親父を思い出して、

「こうやって思い出しているほうが逆に生きているっていうか、そんな気しません?」

などという10のうちの50くらいの名言をサラッと吐いてきます。

映画『perfect days』を観た人で、まだこのWebサイトや、たかしの留守電をちゃんと見ていない人は、実はまだ『perfec』くらいまでしか観ていないのかもしれません。残りの『t days』も見ることで初めて『perfect days』は完成します。

なぜ『perfect days』は"feeling good"なのか


映画の最後、カセットテープから流れるNina simonの『Feeling Good』を聴いて平山が涙を流すシーンがあります。

一見何事もなく日々を淡々と生きているように見える平山にも、父とのわだかまりを抱えていたり、いろいろあるのです。それでも平山のルーティーンライフは美しく、この映画全体を通じてなんとも言えない気持ちよさを感じます。

"マーガリン疲れるんだよ。本物のバターをくれ"

現代人は胃もたれしています。
日本でも世界でも。
情報が多すぎて。
"マーガリン"ばっかり食わされて。

この
「胃もたれしている」
「余白が欲しい」


というのが、現代人共通のインサイトでしょう。だからこそこの映画が刺さるのです。

このデコンをしながらなんとなく曲のイメージと歌詞が浮かんできました。一曲作れそうです。もしCibo mattoのハトリミホをフィーチャーしてラップさせることができるなら、途中で一瞬ビートを止めて、

"マーガリンは要らない、ひとかけらのバターをちょうだい"

と言わせたい。
軽くエコーかけて。

缶コーヒーの奏でる音楽


デコン会ではこの半年くらい、毎回のように「リアル」とか「手触り」といったキーワードが出てきていますが、この映画でもやっぱり出てきたなという感じです。

カセットテープはこれを体現するアイテムとして機能していました。平山が毎朝家の前で買う缶コーヒーもそうです。

ボタンを押し、ボトンと落ちてくる缶コーヒーが小気味良いビートを奏でていました。Spotifyなんていうお店はどこにもないけど、カセットのスイッチをカチッと押す行為には明確な質感とリアリティがあります。

ボタンが液晶に置き換わり、スイッチがタッチに置き換わった今、小銭を入れ、ボタンを押し、ボトンと音を立てて出てくる缶コーヒーは案外貴重なリアリティです。リアリティの感じられない時代に生きるからこそ、ひとかけらのバターのような平山に、美しさと心地よさと"Feeling good"を感じるんではないでしょうか。

この映画もきっとループして何度も観れてしまうのでしょう。
大好きな音楽のアルバムがそうであるように。

平山が奏でる缶コーヒーの音が聴きたくなったら
またこの映画を「Play」したいと思います。

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