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日清カップブードル『hungry?』をデコンする
カメラはニコン、あだ名はデコン、出口昆です。
こんにちは。
ここ数年、有志で集まって広告をデコンストラクションする「デコン会」を毎週行なっています。
今月のテーマは”クラシックコピー”
国内外の今やクラシックとなっている有名なコピーをデコンします。今回は日清カップヌードルの『hungry?』をデコンしたのでシェアします。
30年経っても消えないもの
この広告をリアルタイムで見ていた人の多くは、今でもこのCMのことをはっきりと覚えていると思います。
制作年は1993年。
すでに30年以上経っていますが、「こんなCMあったっけ?」とは全くならず、明確に記憶されています。
1993年といえば、radioheadの名曲『Creep』が生まれた年ですが、Creep同様、全く記憶から消える気配がありません。
まさにクラシック。
本当はマンモスの作り物と人間を使ってやりたかったようですが、予算の関係上で断念。そこでCGを使って作ることになりました。
そしてあのマンモスと、それを追いかける原始人の忘れられないビジュアルが誕生しました。
食欲100万年
これがこの企画の企画名だそうです。人類は100万年前から食欲旺盛で何も変わらないということでしょう。
そこで原始人の登場です。彼らの時代から僕らはずっとhungry。実際のところ、当時は、食欲はあっても今より遥かに食べ物を得るのが難しく、常に空腹だったはずです。
原始人に「hungry?」って聞いたって腹減ってるに決まっていますが、だからこそhungryさが際立ちます。
今はそんなことしなくてもこれあるから。
命の危険冒してまでマンモス追わなくてもこれあるから。
腹減ってるの?(hungry?)
じゃあこれだから。
と、カップヌードルを提示します。
命懸けで狩りをしなくても3分あれば食にありつける時代です。
現代に生まれて本当によかった。
独創性のある会社であることが伝わっていない
「カップヌードルはすでに日本中の誰もが知っている商品で、CMでわざわざ商品内容を説明する必要はありませんでした。それよりも日清食品が独自の創造性を持つ企業であることを消費者に感じてもらうことがミッションだった。そのため映像でいかにインパクトを与えるかに注力しました。」
このCMの映像と演出を担当した、東北新社の中島信也氏はこのように述べています。すでにみんなが知っているからこそ、「hungry?」一言のCMが成立したということです。そしてインパクトに全振りできたと。
hungry? got milk?
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このキャッチコピーの大きな特徴は英語一文字であることです。正確に書いたらAre you Hungry?ですが、それじゃ違う。
「一文字+?」型です。
だからこそ、インパクトがあり、hungryが際立ちます。小文字であることも独特の質感を生んでいます。
これを見て僕は「got milk?」を思い出しました。
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こちらも有名なクラシックコピーです。これは一文字ではないですが、これもHave you got milk?じゃだめで、got milkという「最小の言葉+?」にしたことが重要です。
そしてhungry?同様、小文字です。
「hungry?」と「got milk?」。これらはお互いに影響されていたのかもしれないし、たまたまかもしれません。
3大走る系映画
時代性というものは確かに存在し、知らずにシンクロしていたなんてことも割とよく起こります。
例えば90年代後半に、
『Trainspotting』(1996 イギリス)
『Run Lola Run』(1998 ドイツ)
『弾丸ランナー』(1996 日本)
という映画が流行りました。いわゆるミニシアター系と呼ばれる映画なので、メインストリームというわけではありませんが、それでも同時期に「走る」ことが大きな意味を持つ映画が生まれたことはとても興味深いです。
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僕はこれらの映画を『3大走る系映画』と呼んでいますが、90年代後半はきっとみんな走りたかったんです。それをみんな求めていた。それがイギリス、ドイツ、日本でシンクロしてしまったのです。映画という表現を通じて。
僕はそう感じています。
この話はいつか機会があればどこかでまとめたいと思いますが、「hungry?」と「got milk?」も時代の気分によってシンクロしていたのかもしれません。
「got milk?」もまたどこかのデコン会で取り上げたいと思っています。
それではまた。
Decon the world!
出口昆