小さい頃
小さい頃は、よく目の前に手をかざしてじっと見つめていた。
自分の身体とその背景の世界
何がこのふたつを隔てているのかずっと考えていた。
考えてるうちに何だか体内と外界が一緒くたになって、ぐにゃぐにゃと形を成さないものになっていくような感覚に襲われた。
それは恐怖というより、ちょっとスリルのある遊具で遊んでいるような、どちらかというと楽しく興味深い体験だった。
自分の髪の毛を引き抜いて畳の上に散らし、何時間もそれを眺める事もあった。
先ほどまで自分の一部であったものが、引き抜いた瞬間に外の世界のものになるのが不思議でならなかった。
寝る前、寝室の窓からこっそり隣の家の居間を覗き見るのも好きだった。
記憶している光景は夏。
彼らは5人家族で、スイカを食べながら野球を観戦していた。
テレビ画面に釘付けになっている彼らと、それを見ている私。
テレビの中は別の世界で、テレビを見る彼らも別の世界で、彼らを見ている私もまた別の世界に居る。
ただただ不思議だった。
幼稚園に行く前、多分3歳か4歳くらいの時の記憶。
#幼少期 #記憶#エッセイ