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出れば母乳で

記事を読む前に
【わが家の家族構成】
私:生き方も考え方も行動もぶきっちょな助産師。マジメにコツコツ派。自然派志向。ネガティブに悩みまくった後、急にポジティブな思考に切り替わる瞬間があり、そのゾーンに入ればどこまでも前向きにがんばれる。
夫:妻のネガティブ小言に付き合わされているが根っからの自分軸思考で惑わされることはない。
ハカセ:第一子、長男、2006年生まれ
ピョン吉:第二子、次男、2008年生まれ
姫どん:第三子、長女、2011年生まれ

こんにちは。助産師のぶきっちょです。情報が溢れている昨今ですが、お産に比べると母乳については情報が少ないのか、赤ちゃんが生まれて初めて授乳ってこんな感じなのー?と壁にぶち当たるお母さん達を少なからずお見かけします。

入院中のお母さん達に、母乳育児について聞いてみると、多くのお母さん達から、

1️⃣「出るなら母乳で、出なければミルクでも良いです」

という控えめなご希望とか、

2️⃣「一緒にいる時は母乳で、人に預かってもらう時はミルクが良いです」

とか  

3️⃣「1年したら保育園に入るので哺乳瓶に慣らしておくために混合にしたいです」

とか言われることがよくあります。

かくいう私はどうだったのかというと、そこまで考えていませんでした。なにせ行き当たりばったり。そして生き方もぶきっちょでど真面目な刷り込み自然派。
その頃は、「牛の子には牛の乳、人間の子には人間の乳が1番いいはずだ。吸わせていればいずれ出てくるに違いない。人間だって哺乳類なんだから。」という熱血な思いで、ひたすら母乳を飲ませまくっていました。その辺の話は下の記事をご覧ください。

完母、完ミ、混合育児。おっぱいを取り巻く様々な育て方。人によって生活背景も身体も子どものタイプも違うので、何が良いのかは一重には言えません。

1️⃣のお母さんのご希望についての私のお返事は、
「頻回に吸わせていれば出るものですよ。母乳が出るかどうか、どのくらい出るかはお母さんの主体的な行動にかかっています。」
です。頻回、とは少なくとも1日8回以上。頻回の授乳ができていれば、入院中は母乳が少量しか出ずにミルクを足しながら退院しても、
泣いたらおっぱい、泣いたらおっぱい
を繰り返していればいずれ出るようになってきます。最初はミルクを足していても、2、3ヶ月したら母乳だけになりました、と言われるお母さん方にもよくお会いします。吸わせていれば徐々に増えていくので、吸わせているうちにいつの間にかゴックン、ゴックンと赤ちゃんが飲み込む音がし始めたり、ツーンと母乳が出てくるタイミングが分かるようになってきたりするものですよ。
と答えさせてもらっています。

2、3ヶ月を過ぎて一回に200mlほど母乳が出るようになれば、赤ちゃんの栄養は母乳だけで補っていけます。しかし、100mlしか出ないおっぱいだと、残りの100mlをミルクで補ってあげないといけなくなります。毎回ミルクを作らないといけない混合育児になってしまうかも知れない、と分かると、
「やれるとこまでやってみます」
と、言われ、それまでの受け身の姿勢から能動的な姿勢に切り換えられるお母さんもいます。

もちろん、乳房が張りすぎる人、母乳が出過ぎる人、乳腺炎になりやすい人、乳頭が切れて痛い人、乳頭の形の問題で赤ちゃんが咥える時に苦労されている人などなど、様々なお母さんがいますので、一概には言えません。
また、吸わせているのに母乳が減っていく、そういう人にもお会いしたことがあります。その場合は、授乳前の乳頭乳輪マッサージが十分でなく、乳頭乳輪が硬いまま授乳していたり、赤ちゃんの咥え方が浅くて効果的に吸えていなかったりしていることが多いようです。そういう人は出てくる母乳が冷たいことがよくあり、乳房ケアに来られた時には古い母乳を出し切って、新しく母乳が作られるまでケアさせていただいています。
悩んだら近くの助産師をぜひ頼ってほしいなと思います。

2️⃣をご希望のお母さんには、まず確認から始めます。
「つまり、母乳があげられる時にはミルクは足さず、母乳だけで育てたいということですよね。」
ほとんどの人が、そうです、と頷かれます。
ということは基本的には母乳で育てるということになります。
ならば、やはり泣いたらおっぱい、泣いたらおっぱい、です。人に預けるための練習は、時々搾乳をして哺乳瓶で母乳を飲ませる、ということをされてみたらどうですか、と提案しています。
すると、

母乳とミルクの味は違うからミルクの味にも慣れさせたい。

と、おっしゃられる。では、母乳は搾って捨てて、1日のうち何回かはミルクを飲まされるのはどうですか、と提案します。どちらにしても、一回の哺乳量を母乳で補うためには、泣いたらおっぱい、泣いたらおっぱいが必要になります。
乳頭への刺激が少ないと母乳を分泌させるためのホルモンは減ります。また作られた母乳を乳房から出し切らずに余らせれば、それ以上母乳を作らない身体になっていきます。身体は出て行った分だけ母乳を作るので、搾る量、飲ませる量が少ないとやはり分泌量が減る原因になってしまいます。

3️⃣をご希望のお母さんにも1️⃣や2️⃣の内容をお伝えして、納得して選択できるように説明させてもらいます。母乳を減らそうと思えば、いつでも減らせます。それまでずっと吸ってきたおっぱいを急に吸わないようになると、張ってくるので、しんどい時は搾り、しんどくなければやり過ごします。そうしているうちに分泌は減っていきます。この間は乳腺炎になりやすいので注意は必要です。職場で搾る場所がない、というお声もよく聞きますが、トイレなど個室で母乳パットにさささっと乳房が軽くなる程度に搾ることならできるでしょうか。あまり深刻に考えずにやってみてください。そのうち楽になってきます。
私も仕事復帰後、昼休みに母乳を搾り、自宅に戻ればおっぱいを飲ませて、一歳過ぎまで母乳を飲ませました。

母乳を増やしていくなら、最初の1ヶ月の乳頭への刺激が勝負だと経験的に思っています。刺激が少なければ、母乳の分泌量は減っていきます。母乳を作ることは母体にとっては絶対必要ではなく、作らなくて良いならそのエネルギーを生命の維持、産後の回復に回したいというのが身体の意思のように感じます。

ここまで1️⃣2️⃣3️⃣への対応を書いてきました。これは余談ですが、最近聞いた話では、
保育園に預けるなら哺乳瓶が飲めるようにしておいてほしい、とか
母乳はもうやめてほしい、とか
保育園側から言われることがあるとのことで、それを聞いて驚きました。保育園側も大変なんでしょうが、いつまで母乳を飲ませるかは母親自身が決めれば良いことだと思うのです。
わが子が通った保育園は、子ども達中心に保護者と保育園が繋がっていこうという保育園で、母乳育児に理解があり、冷凍母乳を持って行けばそれを飲ましてもらえました。完母で育ったわが子は哺乳瓶を最初拒否していましたが、根気強く対応してくださり、飲めるようになりました。保育園選びもお母さん方の希望をしっかり出して、話し合って、後悔のないように決められると良いと思います。

長くなりました。
母乳育児についていろいろ書いてきましたが、どうしていくか、それは母と子の状況によって違います。人の母乳育児を羨ましがる必要はないし、過去の自分を後悔する必要もないです。

ただ乳頭への刺激が少なければ確実に母乳分泌量が減っていき、特に最初の1ヶ月が大切であること。
その時期を過ぎ、進行性変化が消退しつつある人から母乳を増やしたいと言われても、その人が満足できる程には増えないこと。
母乳育児を希望されている方に向けて、その事実だけはお伝えしたくてこの記事を書きました。

どのように育てるにしても、赤ちゃんが決めることでもあるので、実際のところはなかなか親の思うようにはならない現実もあるようです。混合育児を希望されていても結局哺乳瓶を嫌がるようになりました、とか、逆に母乳を嫌がるようになりました、というお話をお母さん方からお聞きしますから。
では今回はこの辺で。よい1日を😊

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