Re:誰もが “漂流者”
絶望した時にこそ観て欲しい『 キャスト・アウェイ 』 (2000年)
チャック:「我々は皆時間に支配されている 具合が悪いとか腹が減ったとかそんな言い訳は通用しない。生き残るも死ぬも時間しだい 常に今 何時か考えろ そして決して時間に遅れるという罪を犯すようなマネをしてはならない!」
と社員に叱咤激励をする主人公チャックは婚約者ケリーを持つ運送会社フェデックスに勤める男。トム・ハンクスが演じている事もあって中和されていますが、はっきり言ってブラック上司です。(時間に追われる仕事人間という現代人)
せっかくの家族ぐるみのクリスマスにも仕事で抜け出すチャック。そして乗った貨物機は嵐によって墜落。チャックは無人島に流れ着きます。島から脱出することが無理だとあきらめたチャックは無人島でただ生きるだけの生活を強いられます。それは絶望の日々です。後で自殺も考えたと告白します。
しかし『キャスト・アウェイ』は、実は無人島でのサバイブ生活からの脱出ものの話ではありません。“絶望”と“希望”についての映画です。
そして月日は流れ、4年後。ある日突然、潮風に乗って流れ着いた帆...
原始人化(猿)したチャックがトタン板(モノリス)によって閃くというパロ。
無人島からの自力脱出に成功するチャック。
チャックは元の文明生活に戻りますが、婚約者ケリーは他の人と結婚しているという現実に直面します。婚約者ケリーはチャックにとっての生きる希望でしたが、漂流生活から生還したチャックに待っていたもの ――それは“絶望”でした。
お約束"雨"のシーン。
無人島から生還したチャックは再び “絶望” の淵に立ち、漂流してしまったのです。
主人公にとって無人島での生活とは何だったのでしょう?
チャックが4年間漂流している間、友人の奥さんは癌で他界してしまっていました。その時、その友人はおそらく絶望したはずです。チャックの婚約者のケリーだってチャックが死んだと思って絶望したはずです。
たとえチャックのように無人島に漂着しなくとも人間は誰でもいつでも突然に“希望”を失い“絶望”してしまうのです。誰もが “漂流者” となってしまうのです。そして “絶望” した時 人はどうするのか …死を選ぶこともひとつの選択です。
チャック:「 戻ってきて、またケリーを失った でもこれからどうすべきか分かってる…何の “希望” も無くても、息をして吐いて生きるんだ。明日も日は登る…潮流が何を運んでくれるか誰にも分からない… 」
“潮流が何を運んでくれるか誰にも分からない…” とは何でしょう?
ラスト、
チャックはもう時間に支配されていた生活を捨て旅をしています。「時間に遅れるという罪を犯すようなマネをしてはならない!」と言っていたチャックが、今は罪を犯しているというわけです 笑。真逆人間に生まれ変わった。
オープニングとラストに出てくる分岐点のクロス(十字架)
無人島で生きる糧の一つになっていた荷物を送り届けるとこですが、チャックは道に(文字通り“人生に迷う”)迷ってしまいます。
そして迷ってるとこに優しく道を教えてくれた女性・天使(ヒッピー風のアーティスト 彼女もまた愛する者との別れで“絶望”した人なのかもしれません…)が向かった方向、まだ舗装されていない道を見つめるチャック。
彼が見つめるその方向は何が起こるか分からない未来であり人生、そして―“希望” です。
オープニングで婚約者ケリーとの車の中での曲、そして最後にチャックが車で旅してる時に流れるのはプレスリーの曲。そのチャックが旅してる時の曲は Return of Sender(心の届かぬラブ・レター)。
“何の希望” も無くても、息をして吐いて生きるんだ。明日も日は登る…潮流が何を運んでくれるか誰にも分からない…"
近所の散歩道にある、お豆腐屋さんと よくドラマの撮影に使われていた自営のコンビニが取り壊されていました。20年近く見慣れた風景がコロナ禍(が原因と確認していないけれど) で壊されている様に、今日とても哀しい気分になりました。
ではまた。