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裏・ボニー(♀)&クライド(♂)

『ザ・テキサス・レンジャーズ 』(2019年)

原題 "The Highwaymen" (無法者)

テキサス1934

真っ赤な最新モデルのフォードV8で現れるボニー&クライド

看守「ヤンキースがベーブ・ルース(引退1935年)と3万5千ドルで再契約だ 信じられるか?」 囚人(若者)「人生が10回あっても稼げねぇ...夢は見ねぇよ」―― 当時、世界恐慌で貧困が広がっていた時代。

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ボニー&クライドの手引きによって囚人たちが脱獄(解放させる)。運転するクライド、マシンガンを撃ちまくるボニー(♀)(真っ白な服)。二人の逃亡から2年、銀行を襲いまくり義賊としてロビン・フッド扱いになっている ボニー&クライド

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なかなか二人を捕まえることのできない事に業を煮やした州議会は、かつての"テキサス・レンジャーズ"を復活させることに。"テキサス・レンジャーズ"が昔何をやったかは後々語られます ここでは"殺し屋"。毒を以て毒を制す。

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「カウボーイにボニーとクライドを退治させようってわけ?ワイアット・アープも墓から掘り起したらどう?」とファーガソン知事。(かつてケビン・コスナーは映画で"ワイアット・アープ"を演じていたからね というギャグ )

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ボニー&クライドの逮捕ではなく"殺し"を依頼されたフランク・ヘイマー

フランクは今の自分の射撃の腕を確かめるために投げた瓶を銃で狙う​ 外れ。子供にもホントにあの伝説のフランク・ヘイマー?って疑われてしまうという​…トホホっぷり。

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最終的に的をマシンガン乱れ撃ちで当てた事にして納得するフランク。​ボニー&クライドの行く末を知っている人なら 少しウッとなるシーン。

次に向かうは元“テキサス・レンジャー”かつての仲間 メイニー・ガルト(ウディ・ハレルソン)の所に。

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「おじいちゃんって有名だったんでしょ?たくさんの人を撃ったって...地獄に落ちる?」と孫に言われちゃうメイニー...。ただのアル中ジジィ。

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やはりこちらも銃の腕は衰えまくり 弾 外れまくり。...本当に大丈夫かこのジジィたち?状態。

隠居しておったかつてのならず者ガンマンに殺しの依頼...銃の腕は衰え 的を狙っても当たらずマシンガンでぶっ飛ばす。そして昔の殺し仲間の相棒を誘うという流れ...これって「許されざる者」と同じ!(「トゥルー・グリッド」とかもそうね) ウディ・ハレルソンがモーガン・フリーマン的 存在って事ね。

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ボニー&クライドが真っ赤なフォードV8なら、フランクメイニーは真っ黒のフォードV8で追う。奥さんの車だからか絶対にメイニーに運転をさせようとしないフランク。ハンドルを握るのはあくまでも自分  笑。

「歌は歌うなよ」と言うフランク。当然ノリノリで歌うメイニー。仲良過ぎ。

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殺人行脚を続ける ボニー&クライド 。彼らの姿は映るのですが会話や何を考えているのかというシーンは全く見せない演出です(顔も常にはっきりは見えません)。ボニー&クライドの事を知りたかったら「俺たちに明日はない」(1967年)を観てちょという割り切りが良い。

しかも、ことさら強調されているのはクライドではなくボニー(♀)(真っ赤な服)の方です。この映画だと撃ちまくって殺していたのはまるでボニー(♀)一人だったとしか見えないなです!笑。これじゃあ この映画 ――

"自由奔放に生きている若い女性を大人の男たちがぶっ潰す!"

という構図にしか見えないっす!(かなり意図的) おもいっきり現代のテーマに寄せてきたお話に見えなくもない 笑。

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フランクメイニー この二人の"老い"というものが、行く先々でことさら強調されます。どこへ行っても老害のジジィ扱い 疎まれる。最新の科学捜査を無視し現場を雑に荒らすも、フランクメイニーの二人は銃の知識もあり現場検証も的確で、証拠物を発見する能力を見せつける。その上、死体そばのボニー(♀)の足跡を見るだけで動きや彼女の性格も見極めるフランクたち。

さすが年の功!と思わせるシーンではありますが実はそうではないと言う事が後々分かってきます...。かつては人殺しだったフランクメイニーゆえ、何を隠そう人一倍 ボニー&クライドの犯行や動きが読めるのです。ウソつきは人のウソを見抜けるように殺し屋は人殺しの事が手に取るように理解できるという...。そして、フランクメイニー この二人は人を殺してしまった後の苦しみもまた知っているのです。

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ボニー&クライドが事件を起こすたびに現地へ向かうも...相手は一日700キロ横断移動している相手(日本の本州を二日で移動ぐらい?)。

メイニー「そこまでのパワー俺たちにあると思うか…?」


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ボニー&クライドを追いかけるという事はフランクメイニーはもまた同じようにアメリカ中を横断する事。その横断によってフランクメイニーはアメリカの街々の酷い貧困ぶりを見て回ることになるのです。

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終盤、"テキサス・レンジャーズ"が昔何をやったかが明かされます。それはただの人殺しという虐殺…しかもフランクメイニーたちの方がボニー&クライドよりも酷いことをしてきた。

ラスト、ボニー&クライドの二人がはっきりと映ります。それにハッとします。まだ服ぶかぶかの子供じゃん!(と少なくとも私は) 結構ショック描写でした。

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『ザ・テキサス・レンジャーズ 』(2019年) は2005年ごろから企画があったそうで、その時はポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの二人でで映画化が進められていたとか。この二人は「明日に向かって撃て」(1969年)で実在の銀行強盗ギャングを演じてます。これって「かつて殺しまわってたギャング」に「現代の若いギャング」を殺す という構図が見えてきます。

フランクメイニーはかつての若い自分を殺したのかもしれません。または人々のカリスマ、反体制、希望(キリスト)を葬ったのか。


驚いたのはボニー&クライドの人気が今のアイドル並みの熱狂だった事。そして殺された後、民衆にその無残な姿を晒されたという事…。

1934年は同じく義賊で名を馳せたかの デリンジャーもまたこの年に死んでおります。

ラストシーンはフランクが頑なに運転させなかった車を、最後メイニーに席を替わり運転を任せます。それは自分の役目を終え、一つの時代が終わったという事…。


ではまた。




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