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経営は真似できない。しちゃいけない。

テレビや本で敏腕経営者の素晴らしい経営を目にすると、「さっそく自社に取り入れよう」と思いませんか?

経営の始まりは真似でもいいかもしれません。むしろ明確な経営方針がない状態では、真似をする事が最初の一歩目でしょう。

しかしある程度基盤ができた状態で無配慮に新しい経営手法を導入してしまうと組織のバランスが崩壊する可能性があります。


経営者は「ひとつの軸」を用意し、社員延いては顧客と共にそれを守る必要があります。そのために、新たな経営手法を取り入れる際にはそれを自社に通じるようにリデザインする必要があります。


軸のない会社には存在意義がありません。

顧客があなたの会社を選ぶ理由はなく、求人に応募してくる人には一貫性がなく、社員もバラバラの目的を持って活動します。そして最後には、あなた自身もその会社を存続させる意味に悩まされるでしょう。

今回はそんな問題を解決するために、「会社の軸の必要性」と「経営手法を自社流にリデザインする方法」についてお話します。




優先順位は決まっていますか?

あなたの会社における優先順位は何でしょうか?

グループ 1


よくある失敗は、「会社に軸が無い状態で全てを追いかけて転ぶ」という展開です。この優先順位のサークルのすべてを満たす事は理想ですが、時間や資金・人材などリソースが不足している中での実現は夢物語です。

分かり易いイメージとして以下の図をご覧ください。
行先の定まらないエネルギーの左図は、全てが中途半端に終わる事が容易に想像できるでしょう。

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これは、どれだけ優れた経営方針であっても進路がバラバラでは大きく進むことができない様子を表しています。

経営は「行先の定まらないエネルギーの使い方」を辞め、「特定方向への推進力を持ったエネルギーの使い方」を行うことが重要です。


これがフリーランスや一人事業主であればその限りではなく、左図の状態でも上手くいく場合があります。それは、「可視化されていないだけで、自分の中にはたったひとつのゴールがあるから」です。

しかしこれが複数名の組織になるとどうでしょうか。
全社員がバラバラの目標に向かって努力することは、同じボートに乗った船員がバラバラの方向へオールを漕いでいる状態です。努力しても一向に進むことができない状況に対して次第に疲弊していくでしょう。


そのままでは、それぞれが課題に立ち向かい努力しているにも関わらず、様々な問題に改善の気配は見えず、長期的な成長も見えません。

そんな彼らに必要なことは新しい+αの経営方針ではなく、明確な、一致団結して取り組むことができるたったひとつの経営方針を与えることです。



チャンスの見極め

事業を行っていると様々なチャンスが訪れます。

大抵の選択肢というのは”まあまあ良い”話です。
どんな選択だって、やるに越したことはないでしょう。例えば「得意ではないが金になる仕事」や「使う予定はないが格安なビジネスツールの勧誘」または「意外な方面からの事業の誘い」など。

どれを選んでも損はなさそうです。

ただその中に、非常に優れた選択肢はいくつあるでしょうか。


例え全てが僅かなベネフィットを与えてくれるとしても、これらすべてを受け取ることはできません。現実的にはリソースに限りがあるため、様々な選択肢から非常に優れた選択肢を見極める必要があります。

私はそれが経営者の役目だと考えています。

さらに言えば、上司に確認を仰ぐことなく社員自身が判断できる基準を作ることが理想です。


そのたったひとつの経営方針を掲げることこそが、経営者だけではなく、社員延いては顧客と共にそれを守るという全体の流れに繋がります。



ちぐはぐな経営方針の上書き保存は組織のバランスを破壊する

成功したビジネスモデルをテレビを見たり、有名経営者が執筆した本を読んでいると真似したくなりますよね。特に本ではその有用性を事細かに説明してくれるため、「さっそく弊社も働き方改革だ!」と言いたくなります。

しかし、「真似たから上手くいった」という話はあまり聞きませんよね。


先ほども簡単に触れましたが、それ以外に考えられる理由を挙げてみます。

1:経営方針の浸透には時間がかかるから

2:自分の信念に基づいた方針ではないから

3:採用にミスマッチを起こす


詳しく見ていきましょう。

【1:経営方針の浸透には時間がかかるから】

社員はあなたが掲げた経営方針に対して「何を優先するか」程度であればすぐに理解するでしょう。
しかし社員にとって本当に大切なことは、その経営方針に沿った行動をするための手段を理解することです。

行動するための手段とは、個人の権限を明確にすることや、発生するデメリットの許容範囲を決めることや、情報選択時の基準を作ることなどです。

これが様々な選択肢から非常に優れた選択肢を見極める方法であり、上司に確認を仰ぐことなく社員自身が判断できる基準となります。

これらを実現するためのルールブックを作るだけでも十分な時間が必要であり、それを社員が理解して行動に落とし込むにはさらに多くの時間が必要であることが分かるでしょう。


【2:自分の信念に基づいた方針ではないから】

それは本当にあなたが実現したい世界ですか?

聞こえがいいだけの経営方針には心が宿りません。
「世界を変える」「お客様ファースト」「子供たちの未来のために」etc...

目標を実現するために定められたルールというのは、細部まで行き届いた設計がなされていなければただの足枷にしかなりません。

あなたが理想とする経営を会社全体で体現するためには、あなたがその一人目となり全体の指針となる必要があります。

あなたは社員に行動を求める以前に、徹底してそのルールブックに基づいた行動ができますか?

経営方針とは設計した段階では理想であってもかまいませんが、決して空想であってはいけません。ルールブックを更新し続け、いつか実現する必要があります。


【3:採用にミスマッチを起こす】

社員一丸となりひとつの目的に向かって活動するためにはもちろん十分な社員教育が必要ですが、それ以上に初めから同じ目線の人材を募ることが重要です。

そのためには採用において、新卒や中途問わず「自社の経営方針に共感してくれる人材」を迎え入れることが理想です。

いまは多様性の時代であり、異物こそイノベーションを生み出す鍵だと捉えることもできます。しかしそれは全体が同じ理想を持った時にようやく生まれる物であり、多方向へ努力し続ける個人同時による物ではないでしょう。

経営方針を頻繁に変え、毎年度違った考え方の人材が集まることはメリットとは言えないでしょう。


これらの理由から「経営方針はたったひとつ、一貫性を持ち、時間をかけて浸透させていくもの」ということが分かります。

経営方針の変更を「時代の変化に伴う方向転換」と言えば聞こえはいいですが、柔軟性を残しつつも一本の芯を作らなければ、顧客がサービスを選ぶときに「あなたの会社である必要性」はなくなります。



会社の軸を作る

あなたの会社にとっての軸は何でしょうか?

会社の軸としてよくある表現は「ミッション・ビジョン・バリュー」です。
それぞれの言葉が意味する領域は曖昧ですが、私はこれらを一括してコンセプトと呼び、重要視しています。


コンセプトこそが「会社の軸」です。

答えは必ずあなた(経営者)の中にあります。

コンセプトはブランド設計の基礎であり、会社存続の意義とも言えます。

一貫したコンセプトは同じ考えを持った社員を集め、より強固な組織を作り上げます。またその思想は社員の行動に現れることで顧客にも伝わります。さらにこの徹底したルールは社員の判断を早め、イノベーションを生み出す事に繋がります。


この話は慎重に検討する必要があり、また今回の主題ではないためここまでにしますが、コンセプトを見落としている人は是非今一度検討する事をおすすめします。

私の会社ではこの重要なコンセプト設計のお手伝いをしています。
気になる方はページ最下部からご相談ください。



会社の軸を守る

経営者は、この会社の軸を守る必要があります。
そのために必要なことが、ルールブックの整備です。

会社にとって甘い話はそこら中に転がっていますが、その中から非常に優れた選択肢を見極める必要があります。また、社員自身が判断できる基準を作ることが経営者の役目だと考えます。

つまり経営手法というのは新しい考えを「取り入れる」のではなく、基盤を元に「アップデートする」必要があるということです。



情報を吟味する

ここでようやく「アップデートについて、、」と言いたいところですが、その前にひとつ抑えておきたいポイントがあります。


私は「守破離」という考え方が好きです。

守破離:日本の茶道や武道などの芸道・芸術における師弟関係のあり方の一つであり、それらの修業における過程を示したもの。

守とは、師匠の考え方をしっかりと学び、基礎を固めること。
破とは、師匠以外の考え方も取り入れて発展させること。
離とは、それらを軸に独自の新しいものを生み出し確立させること。


ここまでnoteを読まれた方は、すでに今自分に何が足りていないか気づいているのではないでしょうか?

不足を感じている人は、この守破離のいずれかの要素が欠けている可能性があります。


例えば、自身に明確な基礎が無いのに見様見真似でやってみること(破→離)は、まず自分の中の基準(守)を作る必要があります。
例えば、十分に基礎があるにも関わらず無差別に新しい情報を取り入れて方向性を見失うこと(守→破)は、新しい情報を吟味する基準(離)を作る必要があります。

自己完結できる能力を持っている方(守→離)は、もっと様々な情報に触れる事(破)で更なる成長ができるかもしれません。


私が一貫してお伝えしたいことは、まず基礎を作ること。そして多くの新しい考え方に触れること。最後にそれらを吟味し、自分らしさとして形にすることです。

守・破・離のどれが欠けても成功することはできないと考えています。



リデザイン(アップデート)する

ここまでくれば答えは目の前です。

あなたが築いた基盤を変える事なく、作成したルールブックに基づいて情報を取捨選択しましょう。もう様々な選択肢に惑わされることはなく、非常に優れた選択肢を見極めることができるでしょう。


ある会社にとっては強みとなる経営方針も、他社に取り込むとむしろ逆効果なんて事はよくあります。


大まかな考え方をお話しましたが、これからあなたのやるべき事は見えたでしょうか?

あなたの会社にたったひとつの軸(コンセプト)はありますか?

そのコンセプトをアップデートするためのルールブックはありますか?

それらを元に、どのように会社として表現しますか?


これらはすぐに出来ることではありませんが、私はこれが経営において最も重要な事だと考えています。



最後に


多くの競合と比較される現代では、サービスの差別化だけでは戦う事が難しくなっています。

自社または製品の魅力を最大限伝える事ができるように、様々な視点から物事を捉える事が重要です。弊社は、これらを総じて「デザイン経営」と捉え、一緒に考えたいと思っています。

現在、「ブランドマネージャーの能力を個人・ベンチャー企業に取り入れる」ためのサービスをご用意しておりますので、先行に不安を感じている方はご一読ください。


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松本直樹@decico
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