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圧倒的クオリティーを担保するための理想的な関係性とは

前ハマってると書いた葬送のフリーレンの著者のインタビューをwebで漁ってて、マンガ大賞2021を受賞した時のエピソードに驚いた。原作と作画の二人はまだ顔を合わせたことがなく、仕事は原作のネームを作画担当が確認し質問があればメールでやり取りする程度だという。
担当編集を介してるとはいえ会ったことのない人にこれだけ信頼を置けることにまず驚きだし、細やかなニュアンスをネームやテキストレベルで読み取って表現できるってすごすぎる。それであのクオリティーを保ってるんだから天地がひっくり返る。しょっちゅう顔合わせててもうまく伝わらないことも多いこの世の中で、仕事の質や密度について考えさせられる。
フリーレンは異世界ものという限定されたジャンルの作品ではあるけど、こんなにニッチでハイコンテクストな作品が一般層にずっぷし刺さってる理由ってなんだろう。
身内以上の信頼関係で結ばれた徒弟制だったり、まったく属性の違う仲間同士が目的達成のために集うパーティーというコミュニティ概念。それはお互いを尊敬する一方で必要以上な馴れ合いを必要としない、ビジネスライクな利害関係で相互補完し合う生きるために最適化された繋がりでしかないのかもしれない。
そこで得られる絆の重みって相対的に死別や離別、大義名分などの節目の象徴的な出来事によるものより、日頃のたわいないやり取りや失敗だったり、徒労に終わった虚しい努力の数々がほとんどだったりする。だからこの漫画の世界においては強敵を倒したり、難関のダンジョンを攻略したり、仲間との出会いや別れなどカタルシスの瞬間が軽々しくダイジェストっぽく清々しいくらい端折られる。
冒頭の著者二人のドライな関係性のエピソードからそうしたフリーレンの独特な世界観設定の本質のようなものを感じざるを得ない。

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