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ベーシックチャンネル

昔からずっと好きな音楽レーベルがあってベーシックチャンネルという。世間的にダブテクノと言われるジャンルでテクノハウスを聴かない向きにとっては難解な部類の音楽になるだろうか。最初はなんか気持ちいいな、くらいのものが聴き込むほどに味が出てくる。そして気付くと途方もない浮遊感とともに没入している。一言で言うとヤバい音楽だ。
短い小節のループを音色やフィルター展開していく際に生まれる高揚感、この発明はデイブクラークのRED2が始まりと言われている。その手法を極端に切り詰めた結果ベーシックチャンネル的なスタイルのダブテクノが生まれた。
音楽というのは時間の芸樹と言われるが、物語性がすっぽり抜け落ちた音楽に始まりも終わりもない。一般的な音楽は「今」という意識の窓を音が通り過ぎていくが、ベーシックチャンネルの音源はそこに滞留し続ける。そのようにデザインされている。そういう聴き方を求められるし、それが正しいというわけではないが、その方が高揚感なり多幸感なりを効率的に享受できる。
ベーシックチャンネルの聴き方の概念を他の何かに例えるとしたら、歌舞伎でいうところの「中村屋!」という掛け声だったり、ボディビルの「肩にちっちゃいジープ乗せてんのかい!」みたいな掛け声に近い。漫才で言えばにゃんこスターのリズム縄跳びのネタ。性癖で言うとアナルオーガズム。
沸点があったとしてそこには絶対到達しないのだが、寸止めでじわるというのが基本設計であり、つまり始まりも終わりもないから永遠に気持ちいいと言う感慨があり得る。必然的に曲は間延びして長尺である。
意識を1ループのグリッドにフォーカスしていく中でディレイの揺らぎの中に神が見えると言う至高体験があるのだが、その話はまた今度で。

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