L1/L2領域におけるトレンド
こんにちは!
リサーチャーのmitsuiです!
この記事は「L1/L2領域におけるトレンド」と題して、現在のL1とL2の状況を整理した上で、今後の展望を考察します。
L1/L2とは?
まず基本用語のおさらいですが、ブロックチェーンには「Layer(層)」という概念があります。幾つかのLayerがありますが、その中でも特に出てくるのが「Layer1」と「Layer2」です。L1やL2と略されます。
L1は基盤となるブロックチェーンでBitcoinやEthereum、SolanaやAstarなどが挙げられます。L2はL1をサポートするブロックチェーンで、EthereumのL2チェーンであるOptimismやArbitrum、Polygonなどが挙げられます。
L2チェーンとサイドチェーンの違い、L1とL0の違いなど、ブロックチェーンのLayer構造の定義に関しては、意見が分かれる部分でもあるので、一旦この記事の中では「L1は独立して存在する基盤ブロックチェーン」で「L2はL1をサポートするチェーン」とさせてください。
L2はL1をサポートするチェーンと言いましたが、具体的に何をサポートするのでしょうか。その多くは「高速トランザクション」と「安価なガス代」です。先ほど例に出したEthereumのL2チェーンであるOptimismやArbitrumなどはEthereumのスケーラビリティ問題を解決し、安価なバス代で高速なトランザクションを実現します。
L2にも多くのプロジェクトがあり、チェーンによって独自の特徴もありますが、大きな括りとしてはL1のスケーラビリティ問題を解決する存在がL2です。
Ethereum一強と言われる時代のL1のトレンドと課題
その上で、現在のL1/L2のトレンドを見る際に外せないのは「Ethereum」の存在です。現在のL1はEthereum一強の時代と言っても過言ではありません。以前の記事でも言及した内容を改めて整理して紹介します。
L1は198本が存在
TVL順で並び替えると56位以下のチェーンのTVLは$10mを下回る
上位5つのL1だけで全体の8割弱のTVLを占める
Ethereumは全体の過半を占める
Ethereumを拡張するL2のTVLは、シェア第3位のBSC単体よりも大きい
DefiLlamaからの引用でDeFi系プロトコルをベースにしたデータではありますが、「Ethereum一強」を裏付けるデータとなっています。
Ethereumの強さはまた別の機会で言及するとして、ここではL1のトレンドと課題を解説します。
L1のトレンド
大きく3つのトレンドが存在すると考えています。
①領域特化
GameFi特化のOasys、DeFi特化のSei、メタバース特化のLAMINA1、ReFi特化のKYOTO Protocolなど、各領域に特化したL1チェーンが続々と誕生しています。例えば、GameFiは高頻度で少額決済が必要になるなど、各領域のDappsで求められる特徴が異なるので、そこに特化したL1チェーンが誕生しています。
②圧倒的な高性能
基本的に後から誕生したL1チェーンの方が既存チェーンの課題解決として誕生するので高性能です。よって過去のL1より圧倒的な高性能を謳って参入してくるL1チェーンが生まれています。代表格はFacebook社(現Meta社)のリブラ計画(後のDiem)に携わっていたメンバーが構築するL1チェーンAptosとSuiです。Suiは1秒間で12万トランザクションを処理できるとされており、Ethereumは15-25、Solanaは2,825だとされていることから、その性能差は歴然です。
③既存L1と互換性を持つL1
Cosmos SDKを利用したL1、Avalancheのサブネットを利用したL1、独自チェーンながらSolidity開発が可能でEVM互換を持つL1など、新規L1チェーンでありながらも既存チェーンとの互換性を持ち、既存エコシステムに参加するL1チェーンが多く生まれています。
課題
その上で課題として挙げられるのは、L1の乱立によって、相互運用性の実現が遠のくことです。これはユーザー目線でも開発者目線でも課題であり、相互運用性が特徴の1つであるブロックチェーンの真価が発揮しづらくなります。
もちろんDapps毎にマルチチェーン対応や、シームレスにFTやNFTをブリッジするソリューションも生まれていますが、ブリッジはセキュリティリスクが存在しており、これからさらに数十億人がweb3へ参入してきた際に耐えられる技術には至っていません。
とはいえ、相互運用性が実現する世界にはなるはずですので、主要L1チェーンが数個になり収斂していくか、乱立したL1間を安全に資産ブリッジさせられるソリューションが成熟するか、どちらかになると考えています。
また、そもそも小規模なL1になるとモデレーターの分散化が困難になり、分散型の運営が事実上不可能になり、運営が停止となっていく可能性も十分考えられます。その際、そのL1チェーン上で発行していたFTやNFTはどうするのか、こういった議論も生まれてくるかもしれません。
凌ぎを削るL2で必要となる要素や論点
続いて、L2について見ていきます。
主要なL2のほとんどはEthereumのL2となりますので、ここではEthereumのL2競争という観点で解説していきます。
現在、EthereumのL2が非常に盛り上がっています。
Celo、CantoがL1からL2への移行を発表し、Fantomも検討をしているとしています。そして、日本発のL1チェーンであったAstarもPolygonと共にEthereumのL2となる「Astar zkEVM」の開発を発表しました。
また、EthereumのL2であるOptimismのOP Stackを活用してコインベースの「Base」チェーンやサム・アルトマン率いる「Worldcoin」が作られました。OptimismはSuperchain構想と呼ばれるEthereumのL2を束ねて相互運用性を実現する構想を発表しており、OP Stackを活用すると簡単にEthereumのL2を構築することができるとしています。
EthereumのL2での盛り上がりを整理すると、独自でL2を構築するというよりも、OP StackやPolygon CDKのようなL2構築ツールを利用した独自L2の構築が多いです。
ここで確認すべき論点は2つです。
1つ目は「なぜL1からL2へ移行するチェーンが増えているのか」という点です。こちらに関しては上でも紹介した過去記事にて言及しているので、詳しくは以下の内容をご覧ください。
2つ目は「L2の中にも独立L2とL2基盤L2の2種類がある」という点です。(1文の中にL2という単語が多数出てきてややこしいですね。)
要するに、BaseやWorldcoin、AstarzkEVMのような独立したL2と、OptimismやPolygonのようなL2構築キットを提供しているL2が存在するということです。
これは上で紹介したL1のトレンドとも非常に似ています。Cosmos SDK等で構築されたL1が続々と誕生しているように、OP Stack等で構築されたL2が続々と誕生しています。
その背景には今から自分たちだけで開発者も含めたエコシステムを築き上げることが難しいという点があります。既存チェーンの基盤を活用するとそのエコシステムに参加しながら独自チェーンの構築ができるので事業者からしてもメリットがあります。
その中でも、L1ではなくL2を構築する理由は、やはりEthereumエコシステムへの参加が一番の理由でしょう。もっとも大きなEthereumエコシステムに参加することが開発者やユーザーを自チェーン及びDappsに集客する大きな要因となり得ます。実際にAstarzkEVMの発表の際にも「AstarをEthereumエコシステムと接続させることで有力なDappsをAstar上に誘致しやすくなる」とコメントしていました。
ですので、L2でのシェア争いは単純な「Optimism vs Arbitrum vs Polygon」のような構図だけではなくなり、Optimism基盤 vs Polygon基盤のようなL2の中でもエコシステム競争となっています。よって、ひとえにL2と言えど、どのように構築されているのか、どのポジションを狙っているのかを考えることが大切になってきます。
まとめ
長くなりましたが、大きな影響力を持つ「Ethereum」を中心とした議論となりましたが、直近のL1とL2のトレンドについて解説しました。
現在はEthereumが一強とはいえ、まだweb3ユーザーは世界に数億人しかいないと言われており、今後マスアダプションを果たすことになれば、現在の20~30倍もの人口にリーチできる計算となります。
そう考えると、強力なエコシステムを誇るEthereumが強いことは間違いありませんが、この先のシェア争いが決したと考えるのは早計です。今後どうなっていくのか、引き続き注目ですね。
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