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すべては、「すべてのモノをブロックチェーン上でやりとりできる世界をつくる」ために

「全てのモノをブロックチェーン上でやりとりできる世界をつくる」というミッションを掲げる株式会社Decentier。代表取締役として同社を創業した小畑は、何百年と業界の慣習が変わらない世界でキャリアをスタートさせ、ビットコイン、ブロックチェーンとの出会いからweb3の可能性に魅了された一人です。小畑が見据えるweb3の未来と、Decentierの今とこれからを語ります。

ーーDecentierを創業するまで、小畑さんはどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。

私は2008年に東京海上日動火災保険株式会社に入社後、一貫して「貨物海上保険」の法人向け保険商品の企画、設計、営業などを担当していました。仕事にやりがいはあったものの、数百年変わっていない貿易実務の非効率性や国際送金に都度数万円の手数料がかかっている実情を前に「もっと効率的なやり方があるのではないか」と、ずっと疑問を抱えながら仕事に取り組んでいました。

そうした中で、2016年頃にビットコイン、そしてブロックチェーンの存在を知ることになります。従来の技術では到底実現し得なかったこと、例えばわずか数百円単位の手数料で金融機関を介さずにお金のやり取りができることなど、破壊的な革新性を秘めたテクノロジーだと感じ、2017年にbitFlyerに転職。暗号資産取引所やブロックチェーン事業の事業開発などに携わりました。bitFlyerでの経験は非常に刺激的で、web3の世界にますます魅了されていましたが、そんな中、2022年に前職のNOT A HOTELと出会います。

NOT A HOTELの洗練されたコンセプトやビジネスモデル、そして何よりあの世界観に心が震えたのをよく覚えています。不動産というリアルアセットを仕事として扱った経験はありませんでしたが、もともと不動産や旅行は大好きで、自分が今まで取り組んできた経験が生かせるのではと考え、NFT事業の立ち上げを担当する機会を得ました。優秀なメンバー、魅力的なプロダクトに囲まれ仕事をすることは恵まれていましたし、過去在籍していたスタートアップ2社には心から感謝しています。

ーーそうした環境から離れてでも、このDecentierを創業したきっかけは何だったのでしょうか。

「より本気でweb3領域で勝負していきたい」と考えたからです。約1年前、この会社を立ち上げる際に書いたnoteをぜひ見ていただきたいと思いますが、NOT A HOTELでNFTを発行したことで、このテクノロジーが持つ比類ないポテンシャルを引き出すことに没頭したいと強く感じました。

NOT A HOTELで目の当たりにしたことは、NFTという共通規格を利用することで、不動産や利用権をより小口化にして分割して販売でき、インターネット上で価値が転々と流通していくという光景。改めてこのテクノロジーが持つポテンシャルに腹落ちしたというこの体験が、Decentierを創業する原動力になったと言ってもいいかもしれません。bitFlyerにいた頃からブロックチェーンの可能性やポテンシャルを様々な場所で説いていましたが、事業者の側に立って自分の手で事業開発を推し進める中で、この領域で取り扱うものを不動産だけに限るのはもったいないと感じる自分がいました。

Decentierでは「すべてのモノをブロックチェーン上でやり取りできる世界をつくる」というミッションを掲げている通り、暗号資産や不動産のみならず、あらゆるものがブロックチェーンを介して流通する時代がくると確信しています。「価値の流通」を推し進めていきたいという思いを共にしてくれた市薗や岡嵜と共に、この会社を創業するに至りました。

ーーDecentierは創業から約1年が経過しましたが、どのような事業を展開しているのでしょうか。

この会社を創業した段階では、web3領域で新規事業を興そうとしている企業や、独自のNFTを発行したい事業会社、暗号資産関連に関心がある事業会社らが抱えているペインを解消することを目的とした、Decentier独自のプロダクト開発に注力していこうと考えていました。

しかし、様々な企業にヒアリングしていく中で、Decentierが持っている知見やノウハウ、または事業開発の経験が生かせるプロジェクトが想像以上に多く、企業側でweb3技術を使って新しい事業を作っていくことに対する需要が非常に高いことが分かったこと。それに伴って、自分たちが思い描いていたサービス構想がまだ時期尚早かもしれないと見えてきたことで、現在はコンサルティングサービスの展開により注力しています。クライアントの皆様とコミュニケーションを取っていく中で、日々接する市況の変化や顧客ニーズの高まりなどを自社プロダクト開発に生かせる面も多く、現在はこの二軸で事業を展開しています。

ーーコンサルティングサービスにおいて、Decentierが持つ強みや特徴はどういった部分になりますか。

web3領域はトレンドの移り変わりが非常に早く、技術面でのキャッチアップは必要不可欠です。また、金融や不動産、チケット、音楽、アートなど、web3と親和性が高いテーマで事業を創造していく際に、法規制と向き合う場面も多く、技術面での議論に合わせて、関連法にも明るくないと単なる「絵に描いた餅」になってしまいます。

Decentierにはweb3領域における事業開発やコンサルティングを手掛けてきたメンバーが複数名いることから、圧倒的な優位性を確保しています。前例のない課題やチャレンジが目白押しであるからこそ、ゼロイチでビジネスを立ち上げてきた経験が生かせる場面も多く、この分野に明るくない人たちを巻き込むビジョナリーな発想や、ステークホルダーの背中を押すドキュメンテーション能力が自分たちの武器となっており、誰もが知る大手コンサルティングファームとも、テックドリブンなスタートアップとも異なる稀有な存在だという自負があります。

とはいえ、この優位性が何年も続くとはもちろん思っていません。時が経てばより多くのプレイヤーが参入してくることになるでしょうし、それまでに自分たちの強みやプロダクトをさらに磨き上げていきたいと考えています。既に誰もが知る大手企業らとタッグを組み、様々なプロジェクトが水面下で進行中です。形になれば間違いなく経済紙のトップを飾るだろうプロジェクトに関わらせてもらっていることは、とても有り難いことだと感じています。

ーー自社のプロダクトについても、どのような状態なのか教えていただけますか。

自社プロダクトの開発はCTOの長濱を中心に進めています。複数走っているコンサルティングのプロジェクトから、各事業会社がweb3領域に対して抱いている感覚や理解度などを見つつ、web3へのマスアダプションが見えてきたタイミングを見計らい、ギアを上げていく予定です。現時点ではデジタルな会員権を発行するサービスを構想中で、いわゆるRWA(Real World Assets)領域でのプロダクトだと思っています。

ここ最近様々なところで話題に出ますが、ブロックチェーンが実現できることの本質はトークナイゼーション(Tokenization)だと思っています。
手間やコストの問題で流動性を持たせることができなかった様々なアセットをインターネット上で簡単に流通できるようになることにものすごく大きなポテンシャルを感じています。分かりやすいところで言うと、米ドルの価値に連動するように設計されたステーブルコインであるUSDTやUSDCなどもありますし、私がNOT A HOTELで取り扱ってきたように、不動産や利用権とNFTをかけ合わせたアセットも含まれます。

法定通貨の経済圏(Fiat Economy)の中にある資産をトークンと結びつけて、web3の経済圏(Crypto Economy)においても資産や価値として扱える状態にするということを目指していて、「すべてのモノをブロックチェーン上でやりとりできる世界をつくる」というミッション実現に向けて一歩ずつ前に進んでいる段階です。

ーー小畑さんにとって「すべてのものをブロックチェーン上でやりとりできる世界をつくる」という時代はいつ頃来ると考えていますか。

厳密に「すべてのもの」が対象となるにはまだ時間がかかると思いますが、既にNFTとの高い親和性を発揮しているアセットやコンテンツが複数あり、そう遠くない未来に「すべてのモノをブロックチェーン上でやりとりできる世界」はやってくると思っています。一気にユーザーが増えるきっかけとなるのは、不動産かもしれないし、漫画の権利かもしれないし、限定品のスニーカーやチケットかもしれません。

ただ、いずれにせよ、NOT A HOTELが世界中から称賛を集めたように、素晴らしいプロダクトやコンテンツが起点となることは間違いないと思っています。先進的なテクノロジーを扱っているから素晴らしいのではなく、プロダクトやコンテンツが持つストーリーや魅力があってこそ、マーケットが広がっていくという熱狂を自分自身が間近で見てきたからこそ、素晴らしいコンプロダクトやコンテンツクリエイターらを巻き込んでいくことは必要不可欠だと考えています。
世界中を魅了するプロダクトやコンテンツと使いやすいウォレットやマーケットプレイス。Decentierとしては、それぞれがうまく噛み合うタイミングを見出し、時流を作るポジションにいられたらと思います。

ーーDecentierに集まっているメンバーはどのような方が多いのでしょうか。今後仲間になる方に対して求めたい要素もあればぜひ教えて下さい。

現在のチームにおけるコアメンバーは30代半ばが多く、若々しさや勢いで勝負するというより、土台がしっかりしている組織だと思います。メンバーの多くは大手企業やスタートアップでweb3領域の技術開発やコンサルティングを経験していますが、もちろんweb3領域はDecentierが初めてというメンバーもいます。
そんなメンバーに共通しているのは、web3に対する熱意があることと、当社のミッションに共感してくれること。ブロックチェーンの存在は知れば知るほど便利で、価値があるものだと考えていますし、このテクノロジーが世の中に浸透することで未来がより面白く、ワクワクするものになると確信している人と巡り会えたらと思います。

また、この仲間探しに関連してDecentierがこだわっているのが会社の資本政策です。Decentierでは、ベンチャーキャピタルなどからのエクイティファイナンスは行わず、なるべく自己資金とデットファイナンスで会社運営をしていくという方針を取っています。

ーーそのような資本政策を実践している理由は何なのでしょうか。

スタートアップと呼ばれる企業はベンチャーキャピタルなどからの資金調達を行い、この資金を元手に最短・最速での事業成長を目指し、出資を得た投資家に対するアップサイドの実現を目指すのが通常です。

私自身、そうした成長著しいスタートアップに在籍してきましたし、事業を最速でスケールさせるという観点では最適な手法であると思ってはいますが、投資家のお金を出資金としていただく立場になる以上、いち早く成長することが求められ、どうしても収益性の低いプロジェクトやプロダクト開発は切り捨てる力学が働きがちです。先にも述べた通りweb3の世界はトレンドの移り変わりも早く、その中には一見短期的な収益は上げづらいようなプロジェクトもあります。ただ、得てしてそうした仕事のほうがワクワクできたり、強く未来を感じられたりするものであることも少なくありません。そうしたワクワクできる仕事に取り組めるチャンスがあるかどうかは、web3領域という最先端を携わるチームにとって、非常に重要な要素だと捉えています。

Decentierという会社を作った以上、実現したい未来に向かって取り組める仕事に没頭したいですし、そうした環境に惹かれてくる仲間たちと一緒に働きたい。そうなった時に選択肢と可能性を狭めないためにも、自分たちのやりたいことを貫ける会社で在り続けたいと考えていますし、この会社のスタンスにワクワクできる方と一緒に働けたら最高だなと考えています。

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