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国内ステーブルコインの市場動向と可能性

こんにちは。
リサーチャーのmitsuiです。

この記事では「ステーブルコイン」について深掘りします。主に国内ステーブルコイン市場について深掘りし、その市場動向の解説と可能性についての考察を行います。ぜひ最後までご覧ください!


ステーブルコインとは?

まずは前提知識となる「ステーブルコイン」について解説します。尚、より多くの場面で利用される定義を元に解説していきますが、単語の定義は人によって異なる部分がありますのでご了承ください。

ステーブルコインの誕生背景

ステーブルコインとは、法定通貨や暗号資産などで価値が固定されたトークンの事を意味します。

元々、ブロックチェーン上に存在する暗号資産はグローバルな即時決済や送金を可能にする素晴らしい技術として新しい通貨になるという期待を込めて"仮想通貨"と呼ばれていました。

しかし、まだ技術的にも法律的にも未成熟であったことから、価格が大きく変動し、通貨として利用できる未来が想像できず、通貨ではなく資産として見られるようになり、その名称が仮想通貨から暗号資産へと変わりました。

これは世界の先進国が集まるG20にて、日本で仮想通貨と呼ばれていたものを「暗号資産」と呼ぶことが提案され、日本の金融庁が決定したものです。2018年12月14日、仮想通貨の呼称を「暗号資産」へと変更することを決定し、2020年5月1日から正式に履行されました。

その際の説明としては法定通貨と混同することが多いという理由が語られていましたが、通貨としての機能を果たすことは難しいという側面も存在したと言われています。

本題から逸れましたが、この一般の暗号資産におけるボラティリティの激しさからステーブルコインの必要性が叫ばれるようになりました。

まとめると以下がステーブルコイン誕生の理由です。

  • ブロックチェーンの透明性、分散性、低手数料、即時決済の仕組みはすごい。

  • 既存の暗号資産は価格ボラティリティが激しすぎて通貨としては使えない。

  • 安定した価格を維持する暗号資産が欲しい。

  • 安定した何かに価値を紐付けた暗号資産を作ろう。

  • ステーブルコインの誕生!

ステーブルコインの種類と市場動向

このように誕生したステーブルコインですが、現在は法定通貨担保型、暗号資産担保型、商品(コモディティ)担保型、無担保(アルゴリズム連動)型の4種類が存在します。4種類あるとはいえ、一般的なのは法定通貨担保型のステーブルコインです。

https://fisco.jp/media/stablecoin-about/

現在の市場動向を見てみると、法定通貨担保型のUSDTが65%のシェアを誇っています。その下に同じく法定通貨担保型のUSDCが続きます。

https://defillama.com/stablecoins

法定通貨担保型のみがステーブルコイン?

ここまで価値が固定されたトークンを指してステーブルコインと定義し、その中には4種類あることを説明してきました。しかし、日本国内でステーブルコイン発行基盤の開発・運営を行うProgmat代表の齊藤さんは"理想のステーブルコイン"に対して、少し異なった定義をしていますのでそちらも紹介します。

理想のステーブルコインとは以下の3条件が揃ったものと定義しています。

  1. 誰でもアクセスできる

  2. どこにでも送れる

  3. 絶対にデペッグしない(特定の法定通貨と常に等価で交換できる)

https://note.com/tatsu_s123/n/n1f7f6df36752

これらの定義をステーブルコインとすると、現時点におけるステーブルコインは実質的にパブリックチェーン上に存在する法定通貨担保型のステーブルコインしか該当しません。

https://note.com/tatsu_s123/n/n1f7f6df36752

また、誰でもアクセスできてどこにでも送れる要件を電子マネーでは満たすことができないので、法定通貨と同等であればなんでも良いわけではありません。きちんとブロックチェーン上に存在し、誰でも利用できて、どこにでも送れて、自由に売買ができる通貨である必要があります。

https://note.com/tatsu_s123/n/n1f7f6df36752

もちろんこれProgmat齊藤さんの1つの定義となりますが、筆者個人的には納得感のある整理だと感じました。

この記事でステーブルコインの定義を深掘りし、断定することはありませんが、現在の市場で多く利用されており、ステーブルコインの実際のユースケースとしてイメージがしやすいのは法定通貨担保型であることは間違いありません。よって、記事中の以降の説明の中で出てくる"ステーブルコイン"は基本的には法定通貨担保型を意味して利用しています。

ステーブルコインのメリット

続いて、ステーブルコインのメリットについて見ていきます。実際に我々の生活、そしてビジネスにおいてどのように活用されるようになるのでしょうか。

ステーブルコインのメリットを一言でいうならば「安定した通貨でブロックチェーンの恩恵を受けられる」です。

ブロックチェーンの恩恵とは、

  • 透明性

  • 即時&低手数料の国際送金

  • パーミッションレス(誰でもアクセスできる)

  • DeFiへのアクセス

  • スマートコントラクトの利用

etc..

まず国際送金が最もわかりやすいかもしれません。ビジネスでも個人でも海外に送金しようとすると時間もお金もかかります。以下は1例ですが、国際送金にかかる手数料と発生場所を記した図になります。

個人(法人)の金融機関から為替で両替され、海外中継銀行を経て、個人(法人)の受け取り銀行に届きます。この例で計算すると1度の送金で5,000円近い手数料がかかります。

https://www.bloomstreet.jp/overseas-remittance-guide/

では、これがステーブルコインであればどうでしょうか。以下は暗号資産取引所のBinanceでステーブルコインUSDTを出金する際にかかる手数料です。ETHネットワークだけ少し高めですが、平均して0.8USDT(1USDT=1ドルなので0.8ドル = 120円前後)となります。

https://www.cave.co.jp/nftgame/1125

そしてこれはBinanceという取引所からの手数料なので、P2Pでウォレット同士で送金すればもう少し安くなる可能性があります。また、送金に数日かかることもなく、数分で完了します。

リモートワークが進み、グローバルな働き方がスタンダートになってくる中で個人の生活でも企業でもステーブルコインのメリットは大きいと言えます。実際にグローバル企業が給料をステーブルコインで支払う例も増えています。

また、ブロックチェーンの誰でもアクセスできる点もメリットの1つとして欠かせません。例えば未成年や発展途上国に住む銀行口座を持たない人でもウォレットアドレスを作るだけでステーブルコインの受け取りや売買に参加できます。そして、DeFiにアクセスすることでそのステーブルコインを利用した資産運用や借入などの金融活動に参加できます。

ブロックチェーンによって誰もが金融にアクセスできる世界を実現できますが、利用できる通貨が既存の暗号資産だけでは価格ボラティリティが激しすぎて投機的な利用が多くなってしまっていました。その中でステーブルコインが誕生したことで、現在の銀行と同じような仕組みに誰もがアクセスできるようになります。その基盤となる重要な通貨がステーブルコインです。事実、現在のステーブルコインのユースケースの多くはDeFiプロトコルでの利用になっています。

最後はスマートコントラクトの利用です。例えば、定期支払い、収益分配などのお金の流れを自動化できます。これを透明性高く誰にも改竄できないように実施できるのがスマートコントラクトです。ステーブルコインを使えばお金の流れを自動化し透明性を高くすることができます。

これらのメリットは全てステーブルコインがブロックチェーン上に存在するからこそできることです。

上記でも電子マネーとの違いに言及しましたが、ステーブルコインはよく○○ポイントやSuicaなどとの違いはなんですか?と聞かれます。

上記で説明した通り、誰でも参加できて自由に売買できるという違いもありますが、既存の電子マネーはブロックチェーンの恩恵を受けることができないという違いも存在します。

国内の注目事例5選

ここまで少し抽象的な解説をしてきたので、ここで国内に絞ったステーブルコインの事例をいくつか紹介します。

①Progmat

上記のステーブルコインの定義でも取り上げましたが、国内のステーブルコイン市場を分析する際に避けては通れないプロジェクトがProgmatです。ステーブルコイン(SC)だけでなく、ユーティリティトークン(UT)やセキュリティトークン(ST)も取り扱う基盤を構築しています。企業のSC、UT、STを発行をサポートしています。

https://note.com/tatsu_s123/n/n03a291fa52ab

②JPYC

日本円を担保としたステーブルコインで最も有名なステーブルコインといっても過言ではありません。Ethereum、Polygon、Gnosis、Shiden、Avalanche、Astar上で発行されており、JPYC Appsで1JPYC=1円として利用ができます。現在は前払式支払手段で発行されていますが、Progmatと提携して信託型のJPYC発行を準備していると発表されました。

https://jpyc.jp/

③GYEN

GMOインターネットグループ株式会社の連結会社で、米国の現地法人であるGMO-Z.com Trust Company, Inc.がStellar Development Foundationと提携して発行する日本円担保型のステーブルコインです。同時に米ドル担保型ステーブルコイン「ZUSD」も発行しています。これらは日本国外で流通するものであり、日本国内居住者への販売は対象外となっています。

https://www.gmo.jp/news/article/8064/

④DCJPY

銀行預金をクラウド化し、銀行預金から発行できるデジタル通貨です。2024年7月にローンチが予定されています。多くの銀行を株主に持つディーカレットが基盤を構築しています。

https://www.decurret-dcp.com/news/nl-20231012.html

⑤XJPY

GincoとProgmatが協業して発行する暗号資産業界横断ステーブルコインです。日本円を担保としたXJPYとドルを担保としたXUSDの発行を予定しています。暗号資産業界におけるクロスボーダー取引の決済効率向上を目指しており、実証実験にはCumberland Global Limited、ビットバンク、メルコインが参画しています。

https://progmat.co.jp/press/pdf/press231106_01.pdf

以上、5つの国内事例を紹介しました。

日本円ステーブルコインが普及することで考えられる未来

ではここで、上記のような日本円を担保にしたステーブルコインが普及するとどうなるのか、その可能性について考えてみます。すでにステーブルコインのメリットについては上述しているのですが、より具体的なユースケースについて考えてみます。

まず挙げられるのは「送金手数料の安さ」です。国内における銀行間の送金には現在300円程度の手数料がかかりますが、ブロックチェーン上にあるステーブルコインでは送金手数料は数円で済みます。

これが実現する理由にブロックチェーン上のステーブルコインであれば、P2P(個人間)での送金が可能になる点が挙げられます。現在の法定通貨はデジタル上で保管、送金するには銀行システムを介する必要があり、そのために手数料がかかります。一方のステーブルコインであれば、自身が保有するWeb3ウォレットに保有し、送金したいときは相手のウォレットアドレスに直接送るという手順になります。仲介者が存在しない分、安価な手数料で誰にでも送ることができます。そして、このシステムは国内でも国外でも変わらないので、国際送金の場合でも数円の手数料で即時送金が可能になります。

続いて挙げられるのは「DeFiへの接続による資産運用の選択肢の増加」です。現在、銀行口座に資金を預け入れていても金利はほとんどつきません。よって、投資信託などを購入し資産運用を行なっている人が増えてきています。

ステーブルコインの発行が容易になると、この選択肢が増加すると予想します。DeFiの世界では高利回りから安定した利回りの商品まで、非常に多く存在します。そして、怪しい暗号資産投資だけでなく、RWAと呼ばれるような現物資産にペッグされた資産をブロックチェーン上に載せて売買する動きも増加しています。よって、現在の投資信託への投資の延長線上にあり、安い手数料で高利回りの投資商品がブロックチェーン上に存在することも増えてきています。そのような世界で使える通貨としてステーブルコインは機能します。

一方で、課題として挙げられるのは「透明性」と「管理の難しさ」です。

ブロックチェーンはすべてのやり取りに透明性があります。これはメリットとして挙げられることが多いですが、個人間の送金の全てが誰からも閲覧できる状態を想像すると、少し嫌ですよね。なので、取引の秘匿性を担保できる状態での送金が可能になることでより普及が進むと考えられます。

2点目は「管理の難しさ」にあります。仲介者がいない分安く送金できると書きましたが、その分自身でウォレットを作成し、資産を管理し、送金を実施する必要があります。全てが自己責任のため、学習コストが発生すると同時に万が一の場合の補償が存在しません。

これらは課題として挙げられますが、上記の国内事例を見ていただけると分かる通り、国内の金融機関(銀行や証券会社等)がステーブルコインの発行体を目指す動きが加速しています。なので、銀行口座と連携して一部をステーブルコインにして送金ができるようになったり、そのまま証券口座にチャージして証券口座からブロックチェーン上の投資商品にアクセスできるような設計になっていくかもしれません。

そうなると、比較的安心してこれまでと同じようなユーザー体験の中でステーブルコインに触れることができるようになるかもしれません。総じて、大きなトレンドとして金融機関を始めとした国内事業者が日本円を担保にしたステーブルコインを発行し、ブロックチェーン世界の入り口を作っていく動きはどんどんと加速していくと考えています。

2024年以降のステーブルコイン業界の展望を考察

さて、ここまでステーブルコインの定義やメリット、具体的な事例について見てきましたが、最後は展望および筆者なりの考察となります。

まず展望ですが、2024年以降のステーブルコイン市場は間違いなく拡大します。これには2つの理由があります。

①web3業界が拡大する

上述した通り、ステーブルコインはブロックチェーンの恩恵を受けることができる安定した通貨です。DeFi市場には多岐に渡るプロトコルが存在しており、既存の金融システムの多くを代替できるような機能を備えています。また、資金運用の面でもDeFiでの運用は利回りが非常に高いです。(当然ながらリスクのある運用もあるので注意は必要です)

このように、ステーブルコインはDeFi市場、そしてそれ以外のNFTやDAOにおいても、web3市場が拡大していく中の中心的な役割を担っている通貨なので、web3市場全体の拡大と共にステーブルコイン市場も拡大していくことが見込まれています。

②日本国内における法整備が実施された

細かい説明は省きますが、日本では2023年6月に資金決済法が改正され、ステーブルコインの発行事業を行うことができるようになりました。これまではステーブルコインの法的な扱いが定まっておらず、JPYCのような前払式支払手段でのみ実施されていましたが、今後は海外におけるUSDTやUSDCのような信託型ステーブルコインの実施ができるようになりました。

前払式支払手段と信託型の大きな違いは、日本円への払い戻しができるか否かです。前払式支払手段で発行されたステーブルコインは日本円への払い戻しができませんでしたが、信託型で発行されるステーブルコインは払い戻しができるので、より便利なステーブルコイン体験を実現できます。

他にも細かい法整備がなされたことで、大きな資本を持つ銀行などの金融機関がステーブルコイン事業への参入ができるようになりました。また、このステーブルコインに関する法整備は日本が世界に先駆けて整備したとされています。

実際に2023年にステーブルコイン事業への参入を発表した事業者は多く存在します。その多くが半年から1年の研究開発や実証実験を経て、2024年の春から夏にリリースすることを発表しているので、2024年の後半にかけてステーブルコインのプロジェクトが続々とローンチされていきます。

この先にステーブルコインがどれほど根付くのか、どのようなビジネスになるのか、どれほどの時間軸で浸透していくのか、これはまだわかりませんが、少なくとも2024年の後半には国内ステーブルコイン市場が大きく盛り上がることは間違いありません。

その上で筆者なりの考察になりますが、やはりステーブルコイン市場は拡大すると考えています。それはweb3が社会のインフラとして普及していくと考えている前提がありますが、その社会においてステーブルコインは現在の法定通貨のように経済の核を担う存在であるからです。

もう少し俯瞰で考えてみます。

国家における暗号資産の取り扱いは非常に難しいと考えられます。暗号資産が完全に普及すると、国家の通貨機能が暗号資産に代替されてしまう可能性があり、国家は金融政策を打てなくなり経済のコントロールができなくなります。税収のコントロールも難しくなり、国際送金が容易になると国からの資本の流出も防げなくなります。結果、必然的にパワーダウンするはずです。

しかし、ブロックチェーンがもたらす技術革新は便利であり、資本主義で回る国が多い中でユーザー体験を劇的に良くする技術を国家が完全に抑制することは難しいです。

その中で、既存の"法定通貨"を担保にしたステーブルコインは、国家としてもパワーバランスを保ったまま技術革新を進められる1つの解決策になり得ます。日本円担保型のステーブルコインが流行るということは、日本円の価値が毀損されないということです。むしろ、海外においても日本円担保型のステーブルコインで決済が行われると日本以外での需要が増えることで国際的に見た日本円のプレゼンスが向上していくことも考えられます。

一方で逆もまた然りです。ドル担保型のUSDTやUSDCが日本国内で利用されるようになると、日本円よりもドルにお金が流れていくので、日本国内の経済なのにドルを強化する動きに変わっていきます。

国家としてはブロックチェーンによる暗号資産の規制は苦慮しながらも、いずれ進んでいく普及の中で自国通貨がリプレイスされないようにする必要があります。だからこそ、ステーブルコインの事業は国家としても応援しやすく、普及が加速する可能性を秘めていると考えています。

もちろんここで言及した内容はかなり俯瞰的な話で、実際の現場ではより多くの観点がありますので一リサーチャーによる独断と偏見になります。

とはいえ、web3市場が再び盛り上がってきて、日本ではステーブルコインに関する法律を世界に先駆けて整備したこのタイミングは、ステーブルコイン市場が拡大していく条件が揃っています。

特に2024年は数多くのステーブルコインプロジェクトがリリースされていくタイミングですので、日本国内で大きな盛り上がりが見られそうです。それぞれの情報を追いかけて、触ってみることでステーブルコインのメリットが理解できるかもしれません。

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