グラデーションの中で生きている
AKIBA BROADWAY(略してアキブロ)の初日・初回公演を観た。『萌え』の過剰摂取によりクラクラしながら本店7階でこれを書いている。
アキブロとは、あっとほぉーむカフェでお給仕するメイド10人が『特別な萌えエンターテイメントを提供する』というものだ。このショーの事前情報はほとんどなく、何がそこで行われるのか一切が不明の状態だった。
散々迷った挙句、最終的に観にいこうと思ったのは当日券が販売される直前の15時頃。
ACZ所属のナギさんのツイートを見たのが決め手だった。珍しく書き間違いのあるツイートから緊張と熱が伝わってきたのだ。その文字には感情があった。
開演。
直後に浴びせかけられる萌えのシャワー。表面張力ギリギリまで溜めたバケツいっぱいの『萌え』をこれでもかとみんながぶっかけてくる。
お屋敷でよく聴く楽曲に乗って、メイドたちが『メイドの日常』をショー形式で披露していく。その平和すぎる日常に目頭が自然と熱くなっていく。
なぜ涙が出そうになるのだろうか。心身に『萌え』が足りていないからだろうか。
日々の暮らしの中で、いつしか溜まっていく些細なストレス。これは確実に人間を疲弊させる。それに対して必要な栄養素、それが『萌え』なのかもしれない。
その栄養素が徐々に体内に浸透し、細胞を潤していくのを感じながら、いつの間にか足でリズムを取っている自分に気付く。
見どころはいくつもあったのだが、その中でも特に紹介したいのが、プレミアムメイドのみづきんさんがとある楽曲中に洗濯物を干す場面だ。
このときのみづきんさんは『あっとほぉーむカフェ・理想のお嫁さんアワード2022優勝』という感じだった。毎朝起こしてほしい。そして適当に脱ぎ散らかした服を見てちょっと叱ってほしい。
ちなみに、そのシーンを見て以降は『好きになっちゃいそうだった』ので直視することができず、視界の端っこで捉え続けていた。本当に危なかった。
全編が萌えで溢れていて、いつの間にか笑顔になっている自分がいた。知らないうちにひび割れていた心が修復していく音がする。笑顔になるのもそうだが、笑顔の人を見るのも人間には必要なのかもしれない。
アキブロを超大雑把に表現するなら『超々豪華版お楽しみ会』だと思う。ただ、アキブロの本質を言葉で表現するのは難しい。
何かに例えるなら、温泉での湯治と似ているかもしれない。ゆっくりと時間をかけて人間らしさが戻っていく気がする。
内容の多くは語れない。これは事前情報ナシで観てほしいのと、内容の変化が今後観るたびにありそうな気がするからだ。
特に心が疲れている人に観てほしい。終わる頃には人間性を取り戻している自分に気付くはずだ。
果たして『萌え』とはなんだろうか。
愛でも恋でも好きでもカワイイでもない曖昧な感情だ。「白か黒か」みたいなハッキリさが強く言われるこの時代には合っていない感情なのかもしれない。
しかし、その白と黒の間には無限のグラデーションがある。そして、その無限のグラデーションのどこかにみんなが存在している。
萌えという曖昧な感情は、人が人らしく生きていく上でとても大切なモノかもしれない。
AKIBA BROADWAY、ぜひ一度足を運んでみてはいかがだろうか。