6/19放送分「音訳ボランティア」について
「朗読の日」ですが「音訳」の話を聞いてください!
今日6月19日は「朗読の日」です。朗読を性別や年齢を問わず多くの人に支持される芸術文化として普及させることを目的に、NPO日本朗読文化協会が2001年に制定しました。6と19で「ろうどく」と読む語呂合わせから今日に決まりました。
ということで朗読の話題を紹介するべきところなんですが、「音訳ボランティア」について聞いてほしい!知ってほしいので紹介させてください!!
1年半ほど、南丹市八木町の音訳ボランティア「やまびこの会」で活動していて、おもに「広報南丹」読んでいます。ただ読むだけやんと思いきやなかなか難しい。特に人名や地名は難解だし(変な読み方いっぱいある!)、円グラフや表とか、どう言語化したらいいかわからなくて頭を抱えることも多いです。
でもきちんと読めたらうれしいし、リスナーさんからわかりやすかったとかありがとうとか言われると、やっててよかったと思います。
メンバーの皆さんと交流できるのも楽しいので、良い活動だと思っています。去年創立40周年だったんですが、長らく皆さん頑張っておられて頭が上がりません。
音訳ボランティアを始めたいきさつ↓
音訳音源がYouTubeにアップされています↓
音に訳す「音訳」
「音訳」は音に訳すと書きますが、何らかの障害によって「視覚」からの情報を得ることが困難な方々のために文字などを「音声」に換えて提供する活動のことです。
例えば書籍や広報誌を読んで録音図書や資料を作ったり,対面朗読の場合は、図書館の対面朗読室で、利用者さん(リスナーさんともいいます)が持ち込んだ資料などを読むことを、音訳と呼んでいます。
※以前音訳ボランティアは「朗読ボランティア」と呼ばれていましたが、音訳と朗読とでは似て異なるので、区別するために今は音訳と呼ばれています。
「音訳ボランティア」とは、上記音訳活動をボランティアでしている人たち。音訳ボランティアグループはだいたい市町村や自治体ごとにあり、行政
発行の広報誌を読むことが多いです。
やまびこの会は、2ヶ月に1回「広報南丹」を音訳しています。広報南丹は毎月発行されますが、園部のかわせみの会さんと交互に録音するので、回ってくるのは1ヶ月おき。ですが例会は毎月あり、月に1回は皆さんと顔を合わせて情報共有しています。
FMおとくにエリアだと、向日市に音訳サークル「愛フレンド」というグループがあり、広報誌「広報MUKO」や「市議会だより」を音読、録音、CD作成をされています。活動は、例会、勉強会、録音のための作業日など月に4~5日、主にボランティアルームでされているとのこと。
朗読と音訳は似て異なる
音訳と同じような活動に朗読がありますが、両者は目的が違います。「朗読」は、読み手の解釈で感情を込めて読んだり内容を読み変えたりして、作品として仕上がったものを聞き手が鑑賞します。
「音訳」は、聞き手である視覚障害者が情報を得るために利用するものなので、内容が正しく伝わるように、書いてあることを書いてある通りに読まなければなりません。そのため、音訳ボランティアは視覚に障害のある方の「目の代わり」となって、情報を声で伝えることが大切になります。
誤読が許されないのはもちろん、音訳者の勝手な解釈で原本を読み替えたり余分なことを付け加えたりすることはできません。
ただし、文章に付随している図や写真やイラスト、グラフや表などは言葉に置き換えて読みます。この場合は言語化されていないので、聞き手にわかりやすく文章化する必要があります。
※「下記の通り」→「次の通り」や、「上記の通り」→「先に読み上げた通り」などに変換することもあります。
朗読が「自己表現の手段」であり「主として文学を」「感情豊かに読む」ことに対して、音訳は「音訳者の主観を入れることなく」「書いてあることをできるだけ忠実に音声化する」ことが原則です。
読み手が感情を入れて読むと、聞き手の感情をコントロールしかねません。音訳を聞いてどんな感情を持つかは聞き手の自由ですし、それを読み手が操作してはいけないのです。
では淡々と読むのかというとそうではありません。棒読みでは意味が通じないことが多いからです。小学生のころ「、」 や 「。」など句読点で忠実に切り大きな声で読みなさいと教わりましたが,音訳の場合はそれではダメなことが多いです。句読点にとらわれて読むと、文章が切れているような印象になります。意味のひとかたまり、意味のひとくくりとしてとらえて読み、耳で聞いて分かる文章にする必要があります。
また、音訳の作業は読むだけではありません。録音が終われば間違いがないか校正し、音声データを編集し仕上げます。仕上がったデータをCDに焼き込み、利用者に発送するまでを担うことが多く、さまざまな作業があるのです。
点字の識字率は1割ほどと低い
視覚障害者の言語として点字がありますが、点字と並行して音訳が必要なのは、点字の普及率に理由があります。実は視覚障害者の中で点字を理解しているのは1割ほどだといいます。
先天的に視覚障害だと子供の頃から盲学校などで学ぶので理解しやすいですが、大人になって、特に中高年で視覚障害になった方は点字を覚えにくい体そうです。
点字は、指先で点字の膨らみを感じとり読みます。慣れるまで結構大変で、特に高齢だと感じづらいそう。そんな事情もあって、点字の識字率は低い傾向にあります。視覚障害者の方も、私たち健常者と同じように情報を得る権利がありますので、音訳は情報獲得のための大事なツールなんですね。
今はAIの読み上げ機能が進んでいるので、人間が読まなくてもと思われるかもしれません。しかし日本語は同じ言葉で違う意味の単語が多くて、AIが認識しきれれず変なイントネーションで読み上げることがまだまだ多いそう。区切りやイントネーションが変だと、違和感が先に立ち内容が頭に入ってこなくなります。A Iの精度が上がり、人間による音訳は不要になるかもしれませんが、当分は必要と言われています。
難しいけどやりがいのある音訳ボランティア
さてこの音訳ボランティア、基本やる気があればだれにでもできますが、「時間」「根気」「技術」が必要になってきます。
一冊の本を音訳するには、下調べから始まり仕上げるまでに何ヶ月もかかることがあるので「時間」がかかる。
「自分が読みたい本を読む」のではなく「利用者が読みたい本を読む」ので、自分にとって面白いものとは限らず「根気」が必要になる。
耳で聞いただけで理解できるように読むためには「技術」が必要。
音訳をやってみたいとなったら、ぜひ講習を受けてください。自治体や社会福祉協議会などが主催する「音訳者養成講座」や地域のボランティアグループが開く「入門講座」、NHK全国巡回朗読セミナー、カルチャーセンターの「音訳講座」などで受講できます。
自分に住んでいる地域以外でも講座を受けたり活動できますので、ネットで検索するのもひとつの手です。京都市内では「NPO法人ロバの会」という民間団体が常時募集していますし、会の中で指導もしてくださるようです。
音訳活動には厳密には年齢制限はありません。私は50歳から始めましたが若手の部類なので、多少年齢が高くても大丈夫です。しかし長時間声を使い技術を要するので、声の老化などを考えると、高齢になってからのスタートでは習得が難しいかもしれません。なので1歳でも若く始めた方がいいです。もし興味を持たれたら、ぜひ音訳の世界へ足を踏み入れてください!
根気や技術が必要となると、音訳って大変ー!むずかしー!て思われそうですが、活動することで新たな知識を得たり知見が広がります。いろんなことに関心が高まりますし、音訳することで感謝もしてもらえます。
またグループ内で交流も生まれ新たな出会いもあって楽しいですし、声に出して読むことで生活に張り合いが生まれるというか、老化が遅らせられるのでは、と個人的には思っています。なので音訳ボランティア、めっちゃおすすめです!
あとどの音訳グループにも共通してるんですが、高齢の人が多くて、若いなり手が増えないのが課題なんです。仕事やなんやらで忙しくてボランティアに時間を注げないのが大きいと思いますが、音訳そのものの認知度が低いのも、なり手が増えない原因かと。なので皆さんに知ってほしいですし、ぜひ興味を持っていただきたいです。
昨年京都新聞に掲載されたので、読める方読んでみてください↓
余談・ラジオ原稿づくりも音訳作業に似ている
「モーニングおとくに」でも、天気やインフォメーション、ニュースも文字原稿そのままに読むと、聞いた時にわかりにくい表現が結構あります。耳で聞いて理解しやすいように、放送前に変換作業をしています(米五輪選手…アメリカオリンピック選手、適時打…タイムリーヒット、厚労省…厚生労働省など。特に新聞記事は略されることが多いので調べる必要あり)。
それに声の出し方、マイクとの距離、滑舌、イントネーション。間の取り方なんかも、音訳での経験が生きています。
一見音訳と関係なさそうな分野でも、音訳で培った技術が活かせるので、ぜひ仲間になってほしいと思います!