マイクロ法人を設立して解散したお話

(全文無料)マイクロ法人を設立して10期程運用し先日諸般の事情により解散させました。医師や高所得リーマンの間でちょっと流行りの法人設立ですが、実際トクするの?面倒じゃないの?ランニングコストは?など疑問も多く踏み出せない方も多いようです。わたくし自身の実体験を基にその実際を語ります。

1. 設立

会社にしたら色々経費で落とせるらしいよ、まことしやかにサラリーマンの間に流布しているこの噂。節税という甘美な響きに誘われて会社を作ってみるひとが最近増えているようです。確かに我々のような勤務医やいわゆるエリサーはノーガードで徴税されており、何とかならないものかと頭を悩ませているかたも多いことでしょう。偶然が重なって事業所得の見込みが立った10年ほど前のことです、個人事業主でも結局総合課税で税金は高いし経費の公私按分も面倒くさいし折角だから会社を作ってみることにしたのでした。

会社を作ると言っても右も左も分かりません。ググる(死語)と司法書士や行政書士に頼めばいいらしいことが分かりますが、結構高い。当時で20万+法定費用だったかと思います。もちろん長期を見据えてやりたい人はプロに依頼してきちんと機関設計する必要がありますが、私の場合は半分遊びですから経験がてら自分でやってみることにしました。実は少しの事務処理能力と平日日中の時間が作れれば全然難しくありません。この程度で高い料金とるうえに司法書士のあの偉そうな態度は何なんやと今でも思います。小職とか得意げですけど弁護士の下位互換やん(暴言)

2. 銀行口座開設

非常に重要かつ一番のハードルにもなり得る関門です。実はマネロン規制厳格化に伴って、法人口座開設は年を追うごとに難しくなっています。資本金の多寡、事業内容(定款の目的)、実質的支配者、事業のエビデンスなど細かくチェックされ疑わしいと大体はねられます。一方で口座がなければ売上の入金先が作れないわけでおおいに困ったことになります。うっかり定款に資産運用などと書こうものなら極小資本金のマイクロ法人が口座開設することは無理でしょう。設立時に作戦を考えておく必要があります。弊社の場合はほぼネットバンクひとつで押し切りましたが、通常はネットバンク1つ、近隣の信金などリアル店舗1つを併用することが多いと思います。メガも格好はつきますが維持費もかかるしあとで考えればというところですね

3. 顧問税理士

会社を無事設立、口座も開設できたら維持運用ですが、何はともあれ会計事務所と顧問契約しないといけません。個人事業主であれば素人が少し頑張って確定申告することは可能ですし実際やっている方も多くいます。しかし法人申告になると、素人が適正にやるのは実質不可能だと思います。かかる時間を考えても税理士一任が普通かと思います。さて今回のようなマイクロ法人の場合、売上はせいぜい数百万から多くても数千万レベルですからランニングコストには拘りたいところです。またマイクロ法人レベルでは法人口座=社長の財布がその実態ですから、経費性については大目にみてくれる、ワカッテル税理士と組まないと会社のメリットを生かせません。言うまでもありませんが、もちろん自己責任で。

4. 維持

売上目処があって、固定費(会計顧問料)が安ければあと残りは好きにしてください。テッパンは家族役員給与、社宅、社有車、携帯、保険料、中小企業共済、セーフティ共済、交際費出張費etc.でしょうか。余裕があれば法人口座で投資してもいいかもしれません。とにかく右と左(個人と法人)の二つの財布があるんですから有効利用したらよいと思います。これ以上オープンなネットに詳しく書くことは難しい話題でありますw

5. 解散

10期ほど経った頃に家族が別事業を法人化することにしたので、2つも回すのは効率も悪いし統合しようということで元々のわたくしの法人を解散することに決めました。実は解散させるほうが面倒くさいというか、意外と時間を要します。登記変更、官報公告、解散申告、精算、精算登記etc.が必要で設立時と同様に司法/行政書士に丸投げしても良かったですが、同じくせっかくの経験なので登記部分は自力で行いました。やっぱり簡単でしたし、もしエラーがあっても法務局のひとが丁寧に教えてくれます。というかこれで安くない費用を請求してくる小職とは。

6. 結局のところ

結論から言うと、もしあなたが給与所得と事業所得のハイブリッドな労働者かつ、最終的な所得税率が高いならばメリットが大いにあります。しかし事業所得が充分育ってないのに会社作っちゃうのはコストと手間に見合わないでしょう。時々医者でいますが売上もないのに(あるいは極小なのに)社長ごっこするのはお勧めできません。お金と時間のムダです。

会社を維持するのにかかる費用
1) 税務顧問料
2) 法人税、住民税
3) 消費税
4)オフィス使用料

最低限上記のランニングコストが発生します。2)3)4)は状況により限りなくゼロに持っていくこともできますが、1)税務顧問料だけは固定費+αです。会計事務所によりますが年間30-50万は最低必要でしょう。これらを支払ってなおメリットを享受するには当然それなりの売上が立たないと意味がありませんし、その損益分岐をどこに置くかを各自で考える必要があります。

逆に前提の上記条件を満たした場合は維持費用の他は税引き前所得で手元にお金が残りますし、これを上手く活用することでお得なことを実感できるでしょう。個人事業主のままで大差ない部分もあるのですが、経費性の判断に常に公私按分の考え方がついて回るのと、家族への給与支払について若干考慮しなければいけないのが面倒だと個人的には考えています。

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