【毎日広告賞 最高賞】地球の歩き方の考察
2024年、毎日広告賞で最高賞を受賞した広告。
「地球の歩き方」は、日本や海外の観光地情報を掲載するガイドブックである。
何を言い得ているのか
写真や映像での画一化された美しさより、「実際に自分の目で見る生感」が旅の趣きであり、魅力であることを気づかせてくれる。
私達は、「ここに行きたい」という動機を持つとき、SNSや雑誌、youtubeなどのメディアを通して、美しい景観の写真や映像をみることが多い。
そんな時流の中で、写真や映像を通して見る海外と、実際に足を運んでみる現地の様子が違うというギャップは、多くの人が感じたことがある「共通認識」である。
あまり海外に行かない人にとっては、写真のイメージで現地に赴くので、写真の美しい、晴れ晴れとした空に佇む自由の女神などを想像していくと、「せっかく来たのに」というネガティブな気持ちになるものである。
しかし、このビジュアルは、「旅は、生きもの」というコピーと、私達のイメージしている旅先の風景を邪魔するようなモチーフのあるビジュアルによって、ビジュアル自体のインパクトと、写真や映像にはないリアリティを伝えている。
「写真や映像」は、あくまでもその瞬間の1コマに過ぎないものであり、旅の醍醐味は、現地に行ったときの「その日その場所にいる時の風景」という生感である、ということを明示している。
現代の写真加工技術は凄まじく、だれでもキレイな風景を作り出すことができる時代である。水色の海、青い空、美しい景観、そんな画一化された美しさよりも、実際に自分で見た景色やにおい、温度が旅の魅力で、最高の思い出になるのではないか。そんな時代への問いかけのように感じられる。
評価されているポイントは?
キレイな写真や映像をスマホ1つで簡単にキレイな写真が撮れる時代に、あえてその土地に赴き、自分の目で見るという生感に面白さや魅力があることを端的に表現している。
実際の観光地の写真ではなく、イラストを使い、見る側それぞれの想像の余白を残すことで、「1人1人が想うイメージ」を壊さない表現の仕方で、伝えたいことに一貫性がある。
どういったロジックでこの表現に至ったのか?
※あくまでも想像です。
まず、観光情報誌の広告ということで、「現代人はどうやって旅先を決めるか?」と考え、
決めていく過程で、「写真や映像」を検索したり雑誌で見ることがほとんどであるということにたどり着いたものと考えられる。
そこから、「現地に行ったら写真のような景色が見れなかった」という、ネガティブかつ共感性の高そうなエピソードから、その状況をポジティブに変換するビジュアルとは何か?を突き詰めていったのではないか。