「小学一年生」広告(朝日広告賞受賞作品)の考察
小学生向け雑誌「小学一年生」の広告。
1. なぜアイデアとして優れているか?
漢字の単語と崩れ方を掛け合わせた、「なぞかけ」の体裁となっているところに面白さがある。
まず、小学校でよくある「漢字テストの赤ペン」という題材が、雑誌のターゲットである小学生との親和性が高い。
年金や首相などの「単語が示すもの」とかけて、「文字の形状ミス」と解く、その心が赤ペンに繋がっていくという造りとなっている。
通常は単語との掛け合わせによって生み出されるが、単語と漢字の形をかけるというところに新しさがある。
2. ビジュアル表現のよさは何か
アイデアが優れている表現なので、余計なものを入れず、シンプルに「漢字テスト」のみに焦点をあてているビジュアル。
本来漢字テストで入れる名前や、点数など、入れる項目はたくさんあったと思うが、漢字テストを想起させるアイコンとして、
「読み仮名」「漢字の記入枠」があるだけで漢字テストという認識ができるので、最小限の表現に押さえている点が良い。
3.構図の妙は?
赤ペンを持つ手や、テスト用紙を俯瞰するような構図も考えられるが、余計なものを入れないという潔さがある、シンプルにテスト用紙を見る視点でできた構図。
4. 批判的視点
「小学一年生」のロゴが赤いので、あえて赤ペンで描いたようなテクスチャを入れることで、よりロゴが馴染んでよかったかもと思う。
広告賞の作品のため、ロゴに制約があって加工が難しい可能性が高いが、ロゴをなじませることで世界観が統一できるため、案件であれば、提案としてパターンがあってもいいと思った。
5. 個人的な感想
漢字の意味と漢字自体を「なぞかけ」で繋ぐというアイデアの面白さに加え、漢字テストの体裁でそれを見せるという、アイデアと表現が秀逸な例だと思う。
単語と単語をなぞかけするのではなく、ビジュアル表現とかけ合わせるというところは今までの考察の中にはない表現だったので、自分の中にストックしたいと思う。