デスボイスの定義について
0.「デスボイスの定義」を議題にする背景
何度したか覚えていないレベルの話ですが、やはり定義というのは大切なわけです。
大事なことですが、いわおが言う定義の話であって、各人それぞれのものではあります。
ただ、その大前提をもとに、その発信者の情報を読み解かなければいけないわけなのです。
非常に当たり前なのですが、意外にみんな出来ないものです、本当に。
貴方の言う「美味しい」と、いわおが言う「美味しい」くらい違うのです。
自分は納豆は生卵を荒く混ぜて食べるのが好きです、毎日食べています。
誰が正しいではなく、その人の論の中で提示されている正解、というイメージで差し支えないと思っています。
それを公的な場で発表して、同意を多くから得る=定義が引用されることで知識は深まっていくと思います。
1.「デスボイス」という語彙
また、そもそも和声英語やないかいというご意見もあるかと思います。
ラフに語る分には良いかなとも思いますし、まぁキャッチーなのでそう呼びがちなだけではあります。
実際、人に話す際は「所謂デスボイスと呼ばれる音声は~」とか、そういう面倒くさい人みたいな枕詞を置いています。
意外と共通認識自体は音声によって得やすかったりもするわけですが、もう名称を挙げれば挙げるだけじわじわとすれ違うわけでもあります。
ひとまず、突っ込みは待ったなしでしょうが「なにそれ」とならないラベリングではあると思っているので、このまま進める所存です。
2.「デスボイス」とは
さて、本題です。
デスボイスは、有響性に富んだ粗造性の強い音声である。
ってところでしょうか、今のところだとそんなものです。
厳密に行こうとすると、恐らく非周期性の理解と話声や通常歌声と比較した際に基本周波数に対する諸々の音響的な干渉でピッチの知覚が困難となるとか、その手の話が出るのかなと雑に予想します。
要は聞き取りにくいけどスッキリ響きがあるね、みたいな感じです。
デスボイスと知覚する要件は、それはそれで聴覚心理の観点から検討してみると面白い気はします。
粗造性と言うと病的嗄声を彷彿とさせるので、実際は適していないという説はあります。
音声の実験時にGRBASのG4R4と言われたことを思い出しました、医療ジョークです。
3.デスボイスの種類
また同じみの話ですが、どのような種類とするかです。
所説あるとは思いますが、そこそこシェアを得ている分類が以下になります。
①フォールスコードスクリーム:仮声帯を用いるデスボイス
仮声帯を用いる発声手法です、声帯の上の弁です。
別の粘膜振動を伴うことも予想されますが、呼気圧が高く積極的に仮声帯を含む複数の喉頭組織を振動させるタイプの音声を指しがちです。
②フライスクリーム:声帯のみで行うデスボイス
声帯だけでノイズを生じさせる手法です、ボーカルフライから派生させようなどとよく言われます。
厳密には仮声帯の接触もあり得るかなと思いますが、聴覚印象上は呼気圧が高過ぎず、粗造性の細やかなピッチが消えた音声パターンが指されがちな印象です。
概ねこれらで良いとは思うのですが、以下のように粗しか無いです。
・仮声帯の下の声帯はどのような動きか
・フライスクリームの振動周期の実現はどのように行われるのか(ボーカルフライは先行研究あり)
・仮声帯以外の振動する可能性のある部位と内喉頭筋群との関与
・仮声帯等の関与の有無による、デスボイス発声時の空気力学的な差異
・そもそものフライスクリームと通常話声の空気力学的な差異と筋緊張
・声帯以外の組織に振動周期およびそれに伴う共鳴腔の時間的変化とフォルマントの関係
・ハイスピードカメラでの撮像と音響特性とのマッチングをしている先行研究がまだ無い(?)ため、真に弁別が困難なはず
雑多に列挙しましたので妥当性はさて置きとなりますが、やはり曖昧さしか無い世界という所であります。
要は、デスボイス関連の語彙は不確定な概念を元に曖昧に語られている状態が多いという認識で差し支えない、という見解です。
4.エビデンスを待っていては話が進まない
引くほど曖昧なわけですが、ただ全てがハッキリするのを待っていては事は始まらないわけでもあります。
また、そんなにわかってなくても発声は出来ますし、表面的な指導も出来るものです。
ただ、学際シーンへの発展を試みようとすると、この曖昧さは望ましくないかと考えます。
このジレンマを抱えてまで語らなくてもと思う気持ちはあるかもしれませんが、今のボイトレはちゃんと科学を目指していると思っています。
多くの方には釈迦に説法かとも思いますが、情報は常に疑って、更新されるという意識は重要と思うわけです。
また、付け加えれば、何故その情報は信憑性が高いor低いのか、どのような前提でどのようなシーンで語られているのか、自身で解釈する力は必要と思います。
まぁ個人でその負担を追わずに代わりに引き受けるのが指導者にはなるとは思うんですけどね。
自分自身、先駆者を追い続けられるほどのバイタリティは無く、たまにダッシュ出来る時に近づいた気になるタイプなので、追っかけ続けているような先生を見ると敬意しかないです。
5.まとめ
そんなわけで、今の自身の見解としては
曖昧過ぎて語ろうにも語れる気が全くしない
という所でございました。
人に示すっていう意味では無理です、わからないので。
ただ、チラ裏レベルでなんやかんや言うのは、面白いわけですね。
今は何がわからないのか、それを調べる手技は何なのかを知っていく時期になっています。
前はとりあえずハイスピードカメラで撮像して肉眼チェック!でしたけど、博士に進んでいる出来過ぎた後輩にフーリエ解析等の話を聞くと、少しずつ先行研究で設定されている真の目的や、その目的の範囲と除外した背景が掴めていくかなぁと。
そこから、自分が知りたいことを調べる方法の選択肢、要は研究立案につなげたい所存です。
様々書いていますが、ことデスボイス関連の諸々は学術へのリテラシーが非常に乏しいシーンだと思っちゃっています。
他方、数多のメソッド等はしっかりかっちり科学していってるわけなんですよね。
かつての自分が蒔いた種のような、幾人か前向きに科学的に取り組もうとしている方もお話する機会がありました。
このようなブログで出来ることは極限られたことに違いないので、もっと大きく様々な優秀な人を巻き込んでいけるよう努めていければなと思います。
そうする方がスッキリしますし、面白いだろうと思うわけです。
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