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ROOTS OF "D" 第6回 ROUAGE 『SOUP』(1998)

かなり更新が滞りましたが、今回は中1~2年2学期までの自分にとって第2回で取り上げたPENICILLINと双璧をなし現行で特別視していたROUAGEの1998年リリースのメジャー4枚目のアルバム『SOUP』について語りたいと思います。

ROUAGEの存在はおそらく96年小6の頃に氷室京介情報を求めて購読した『CDでーた』や『What's in』でメジャーデビューアルバム『BIBLE』のディスクレビューを眼にして認識したのが初めてだと記憶しているが、もちろん小6の時分は氷室京介&BOØWY一筋だったため、特に気に止めることなく半年が過ぎ、小学校卒業のタイミングでPENICILLINを初めビジュアルロックに傾向していく過程で読んだ『GiGS』や『SHOXX』『バンドやろうぜ』などの雑誌への露出で更にその印象や興味は膨れ上がっていくこととなる。

初めて動き喋るROUAGEを眼にしたのはPENICILLINの『夜をぶっとばせ』MVの初オンエア目当てでリアルタイム視聴&録画したTVKの『音楽予約Di:GA』だった。
番組では当時の最新シングル『月の素顔』のMVをバックにVocal.KAZUSHIがツアー追加公演となるNHKホールの告知とともにインタビューを受ける映像が流されたのだが、ボソボソと口数少なく、苦笑い気味に喋るKAZUSHIの姿は、当時心酔していたPENICILLINのややバラエティーノリに特化したトークと比較して、完全にROUAGEのシリアスな音楽や世界観を崩さんとする強い意志が感じられ妙に印象に残り、録画を何度も再生し、バックで流れている『月の素顔』もソラで歌えるようになってから、満を持して厚木市川入にある今は亡き『ヨシダ電機』にて8cmシングルを購入。

このシングルはシングルバージョンに歌詞を変更&リアレンジされた表題曲はもちろん、アルバム未収録のカップリング曲『蜃気楼』もシングルA面級の名曲で、ROUAGEの魅力を堪能し、ハマるには充分な内容だった。

時を前後して兄の幽閉が購入したその時点での最新アルバム『MIND』も聴きメジャーながら翳りを帯びたドープな世界観に度肝を抜かれ、その後も本厚木のタハラやコピオ愛川の久美堂でインディーズ時代のシングル『SILK』『理想郷』やアルバム『ROUAGE』、メジャーデビュー後の『BIBLE』などを揃え、97年8月末にシングル『ever blue』がリリースされ、山田兄弟はそれまでシングル『白い闇』で記録したオリジナルコンフィデンス第10位をこの曲で塗り替えROUAGEが大ブレイクすると確信した、、、が、結果としては学校で話題になるPENICILLINや97年デビュー組のビジュアル四天王(SHAZNA/MALICE MIZER/La'cryma Christi/FANATIC◆CRISIS)に比較して、いま一歩知る人ぞ知る感は拭える事はなかった。

このシングルを購入して以後、自分自身もブームに乗り市民権を得る現行のメジャーバンドよりも、音源を中古で安く手に入れる事のできる過去のバンドや、現行でもSoleilやMatinaレーベルのデモテープレベルの活動をしているオブスキュアなバンドに傾向して行き、ROUAGEに関しても雑誌などでシングルやアルバムのリリース、VELLFIRE TOKYOでのライブetc...動向を気にする程度に留まっていく。

そして今回とりあげる98年10月リリースの『SOUP』も実はリアルタイムで聴いたものではなく、当時は先行シングルとなった『深空』の8cmシングルを買うに留まった。

そもそも当時の自分が何故『深空』のシングルを購入したのかも記憶や動機があいまいなのだが、『深空』とカップリングの『昇るブタ』ともに過去の楽曲やパターンを踏襲することなく進化したROUAGEを見せつけられた感を受けしばらく愛聴していたが、何故か直後のアルバム『SOUP』は購入するに至らず、この名盤をリアルタイムで体感出来なかった事が悔やまれるが、先日の自身のワンマンライブへ向かう車内で同アルバムを改めて聴き直し、『SOUP』が思い入れや、時代を越えた名盤であることを強く確信し、こうして記すに至った。

メジャー4作目となりブックレットのメンバーのビジュアルもデビュー当時の長髪+黒服+濃いメイクのステレオタイプから、髪を切りシンプルなスーツ姿になっているが、その流れも急にではなく作品を出すごとに徐々にだったため、安易な脱ビジュアル感は皆無に感じられる。

アルバムはシングル『深空』のカップリング『昇るブタ』の更にデジタル色と不穏さを増したアルバムバージョンから始まり、そのまま曲間無しに深夜アニメ『BASARA』の主題歌にもなったシングル曲『endless loop』のアルバムバージョンへとなだれ込む。

シングルバージョンではビジュアル系らしいリバービーなミックスにストリングスをフューチャーしていた『endless loop』だが、こちらでは分離されたドライなミックスに、ストリングスの代わりにテルミンの不協和音がフューチャーされていて、個人的にはアルバムミックスが好みだ。この1~2曲目に移る流れは何度聴いても鳥肌立つ。

3曲目はやや大味なブラスシンセをフューチャーしたダンサンブルな演奏に、リリックは当時物議を醸していたクローン羊をテーマにした『ハッピーピープル』
本作ではアートワークにもクローン羊が登場しており、ジャケットも人間の赤血球ということから人間のテクノロジーが生命を操作する危うさというものがコンセプトにあったのかも知れない。

そこからネオアコを彷彿とさせるROUAGE随一のポップなシングル曲『angel fishの涙』と壮大さを感じさせながらもコンパクトに仕上っている名曲『深空』で前半を締めくくり、後半は王道のビートナンバー『black box』に始まり、USグランジからの影響も垣間みえるグルービーな『sink tank』、またしてもクローン羊の事かとうかがえるリリックと長く難解なタイトルとは裏腹な王道ビジュアルナンバーの『プロトタイプな凍えた雨と、痂だらけの羊達』を挟み、全てを包み込むような優しさと一抹の寂しさも感じさせる三拍子のバラード『Home Sick』で大団円を迎え、最後はギタリストRIKAのDJスクラッチをフューチャーした『ゆめはまたゆめ』で幕を閉じる。

楽曲単体やアルバムの流れを全てを含めて、実験的なアプローチとビジュアルロックの王道の絶妙なバランスでミックスされている楽曲と安定感があり、クセの少ないKAZUSHIの歌声ともにビジュアルロックを普段聴かない方にも推薦したい仕上がりになっている。

バンドはこのアルバムから短いインターバルでベストアルバム『カルチャー』をリリースし自身初となる日本武道館公演を決行するわけだが、当時強く印象に残っているのは雑誌『FOOLS MATE』に掲載されたこの『SOUP』レコ発ツアー東京NHKホール公演のレポートだ。

ツアーはアルバム『SOUP』を中心に日替わりセットリストで開催されており、その内容は過去のシングル曲や王道ナンバーやお約束の演出を一切排除したものであり、武道館前最後のライブとなったNHKホールでもその姿勢は貫かれたそうで、やや反応の堅い客席に対して、遂にメンバーは途中で演奏を止め『嫌なら座っても帰ってもらっても構わない。自分で選べ』と言い放った。

そもそも自分達のワンマンで皆お金を払ってROUAGEを観に来てるに、何もそんないきり立つことは無いのではないかと突っ込みを入れたくなるが、武道館に向かうにあたり自分達だけでなくファンも今現在のROUAGEのモードに仕上がっていなければという思いもあったのかもしれないし、ファンの皆さんにしてもせっかく来たのにお約束のナンバーや演出が無いことを残念に思ってたのかもしれないし、レポートを読んだだけで事情はわからないが、その後ファン達のあらんかぎりの絶叫を受けライブは再開し、『よく選んだな!しっかり着いてこいよ!いいか!』とKAZUSHIは言い放ったそうだ。

果たしてライヴアルバム&VHS『プロトカルチャー』にもなっている日本武道館公演はアルバム『SOUP』の楽曲をメインに据えたセットリストとなっており、是非はあると思うがこういった当時のROUAGEの姿勢には今でも僕は痺れるのだ。

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