【ゲームの話】「ヴァンパイアセイヴァー」はなぜ人気がないのか
■概要
・対戦格闘ゲーム「ヴァンパイアセイヴァー」の人気がなぜ伸び悩んだかを考察します。
・「ヴァンパイアセイヴァー」は対戦格闘ゲームの金字塔「ストリートファイターII」を作ったカプコンの、もう1つの柱となったシリーズ、その3作目(1997)です。流麗なドットアニメ、ケレン味のあるキャラクターが派手にぶつかり合うゲームでゲームファンにインパクトを与えました。
・その後2000年代。「スト4」で大復活を果たしたストリートファイターに続かんと、将来を見据えたキャンペーンが展開され、それに先駆けてか、PS3/XBox360で通信対戦つきのリバイバル作「ヴァンパイアリザレクション」がリリースされました。しかしながらそのセールスが不調に終わったため、キャンペーンが立ち消えてしまった、とされています。
・理由を4つ挙げます。
※Darkstalkers。ヴァンパイアのモンスターたちはそう呼ばれる。初代「ヴァンパイア」の海外タイトルでもある。
■理由:当時のセイヴァーの稼働期間が短すぎる
・「ヴァンパイアセイヴァー」は1997年5月末にゲームセンターで登場しました。「ヴァンパイア」シリーズは前作「ヴァンパイアハンター」が成功したので、各地のロケーションでの設置台数は多かったものと思います。
・しかしながら、その約3ヶ月後に「セイヴァー」のマイナーチェンジ版「ヴァンパイアセイヴァー2」「ヴァンパイアハンター2」がリリースされます。
なぜ「3ヶ月という短い期間でリリースされたのか」
なぜ「2作同時にリリースしたのか」
この2つについて公式のアナウンスは恐らく無いと思います(理由は本項では特に問題にしません)。
セールス上の問題であれば、「スーパーストII」→「スーパーストIIX」が思い浮かびますが、それでもスパンは半年ありました。中古市場で「セイヴァー」はかなり出回っているのでメーカーによる回収にも恐らくなっていません。「最初から、もしくは、開発途中から2を出す予定になっていた?」。
ゲームセンターによっては「前作を売却して新作購入の資金に充てる」ことをしていたかと思います。
ここに次の『「セイヴァー2」「ハンター2」は一般的に失敗作』という問題が発生します。売上の悪い基板は撤去される運命。
かくしてヴァンパイアセイヴァーの実質的な稼働期間は3~4ヶ月しかなく、当時からの思い入れを持ったプレイヤー自体が極端に少ない、という状況になります。人気がないというよりマニア以外は「知らない」のです。
■理由2:海外で人気がない
・ないらしい。
日本の格闘ゲームのブーム自体終息してしまったこともあり、海外での売上が見込めないと回収ができない。
・想像だが、日本人のファンタジーのセンスは日本だけで醸成されてしまった部分もあるようで、それが海外のセンスと乖離してしまったのではないでしょうか。「ストリートファイター」においては「味」だったものが、ヴァンパイアにおいては「違和感」になってしまったのかも。
※リリース当時から賛否両論あったセイヴァーの新キャラ。
■理由:前作と違いすぎる。ハードコアすぎる
・前作「ハンター」はあくまで「ストII」の延長線上にある「組立」と「受け」のゲームだったように思うが、いよいよ自分と相手がそれぞれマウント取って殴り合う「攻め」のゲームになったため、爽快感は増したものの、鉾と盾の関係にあるように、「攻めをさばけない者は即死する」高さの敷居になったのは事実のように思います。
※ガード方向が分からない。中段が見えない。
■理由:大量の「ライバル」タイトル
・「ヴァンパイアセイヴァー」がリリースされた1997年は格闘ゲームのリリースが非常に多く、先に述べた「席取りゲーム」の様相は厳しいものだったと思われます。当時の主なタイトルはこちら。
□1996
龍虎の拳外伝,、ストリートファイターZERO2、スターグラディエイター、KOF96、ストZERO2 ALPHA、バーチャファイター3、X-MEN VS. STREET FIGHTER、サムライスピリッツ天草降臨、ウォーザード、デッド・オア・アライブ、ストリートファイターEX
□1997
リアルバウト餓狼伝説SPECIAL、ストIII、鉄拳3、ストEXplus、ヴァンパイアセイヴァー、MARVEL SUPER HEROES VS. STREET FIGHTER、KOF97、ポケットファイター、セイヴァー2、ハンター2、バーチャファイター3tb、ストIII2nd、私立ジャスティス学園、月華の剣士
□1998
MARVEL VS. CAPCOM、エアガイツ、ファイティングバイパーズ2、ストリートファイターEX2、スターグラディエイター2、リアルバウト餓狼伝説2、サイキックフォース2012、ストZERO3、KOF98、ソウルキャリバー、超鋼戦紀キカイオー、デッド・オア・アライブ++、月華の剣士第二幕、ファイティングレイヤー、ジョジョの奇妙な冒険
1年に1本も対戦格闘ゲームが出るか分からない現代から考えると異常とも思えるリリース量。しかしゲームセンターにおいてその「席」は限られています。遊ぶ選択肢が多い=シェアを取れない基板は撤去されるのがルール。
それに加え、セイヴァーは「CPS2」というシステム基板を使っていて、ROMを差し替えて別のゲームにすることが容易だったこともあり、そのシステム基板を他のタイトルに取られてしまった可能性もあります。可能性があるのは当時でも売上が見込める「ストIIX」、前年リリースで安牌感ある「ストZERO2(ALPHA)」、翌年の新作「マブカプ」「ストZERO3」あたりにはセイヴァーでは勝てないでしょう。例えセイヴァーのROMを保持していても元の席に戻ることができなかったわけです。
※CPS2基板のROM。容易に交換できる。
■おわり
ネガティブな内容ですが、自分の中でまとめておきたかったこともあり、ここに書き記します。
ヴァンパイアセイヴァー自体は現代でもプレイヤーがイベントを実施するなどその火を絶やさぬよう努力されておられます。ゲームとしても、見ているものに感動を与える熱さを今も持ち続けており、キャラクターも他のゲームへのゲスト出演などを経て、今もなお生きています。
「Darkstalkers are NOT Dead」いつか果たされることを祈っています。
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