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#28 20241011「ゲーミフィケーション×死生観」(ゲスト:東京大学 大学院 情報学環 特任研究員 坂井裕紀さん)

2024年4月からスタートしている「渋谷でDeathラジオ」。放送の詳細やオンエアに載せきれなかったこぼれ話などをご紹介していきます。

#28 20241011「ゲーミフィケーション×死生観」(ゲスト:東京大学 大学院 情報学環 特任研究員 坂井裕紀さん)

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オープニング雑談 2人トーク

・今日はのぞみはお休み!オノリナと、助っ人としてわれらが「さかもっちゃん」でお届けします。

ゲストから自己紹介

・ゲーミフィケーションと死生観の研究者
・Deathフェスクロージングセッションに来ていただいたのがご縁。Deathラボキックオフにもご参加いただきました。


現在東大のLudix Labで「遊ぶように学ぶ、遊ぶように働く、遊ぶように生きる」をテーマに研究。キーワードとしては、Playful、gameful。

■前半|

ゲーミフィケーションと死生観

・そもそも「ゲーミフィケーション」とは何ですか?
ゲームにはどういうイメージがありますか?基本的には、楽しいものだという共通認識があるのでは。その「楽しい」というゲームの要素を、ゲームではないものにうまく取り入れることで、学ぶ、働く、生きるということをポジティブにしていくという風に使っている。ゲーミフィケーションとは、ゲームではないものにゲームの要素を取り入れることと思ってもらったらいいです。

ゲームの要素とは?


研究者によってコンテンツというゲーム要素と、ストラテジーというゲーム要素に分けられていたり、物語やビジュアライズなどの要素も。他によく知られているのは、ポイントやバッヂのようなものや、順位がわかるような競争の要素。でも、競争要素が嫌いな人には「あなたが嫌いな野菜を食べることで地球が救われるんです!」というような世界観を与えたり。
識者や専門家にはそんなざっくりしたものじゃないと突っ込みがくるのではないかとひやひやしながらしゃべっていますが、一般的にはそういうことととらえてもらって大丈夫です。

・坂井先生はあまりゲームしないと聞きましたが?
ゲームというものは嫌いではないしメジャーなタイトルは子どもたちとしたりもするけれど、ものすごく没頭されている方と比べるとそうではないということ。ゲームがいいなと思ったのは、勉強は嫌い、でもしないといけない。仕事がしたくない、でもやらないといけない。そんな時に強制的にさせるような方法もありますが、できれば本人が楽しい、やりたいというほうが、言う方も言われる方も幸せ。ゲームはむしろやめなさいって言っても、やりなさいって言わなくても、ほおっておいてもやってしまっている。このゲームの楽しさを、さっきのような勉強や仕事につかえたら、というのが元々。


・ゲーミフィケーションを学びや仕事以外にも役立てていることはありますか?
今は、適用範囲は色々あって、例えば社会課題の解決の領域も結構ある。例えば、鉄コン。マンホールの老朽化を調べるのは大変だけれど、いまみんなカメラを持っているので、カメラで撮ってもらって、それにポイントを付けている。市民の力を集めてインフラの安全を確保する。自分たちがやってほしいインフラの安全を自分たちでやるというプラットフォームをつくっている。インセンティブを楽しんでいる人がいらっしゃるということ。

TEKKON 鉄コン

死生観との出会い


2016年新幹線で火災があった事件の時、同じ1号車にのっていて、逃げまどい、その時に死を意識した。自分も子どもも無事だったけれど、気道熱傷で声が出なくなるということがあり、仕事もできないんじゃないかとか。
そのわたしの姿を見た妻が「この人死ぬかもしれない」と感じて行動や意識が変わったということが大きかった。

「自分が死ぬかもしれない」ということよりも、「妻が、”この人が死ぬかもしれない”と思ったことで大きく変わった」ということがとても大きなインパクトがあった。その体験によって行動や考え方がポジティブに変化をしたということが、潜在的に、死生観を研究してもいいなと思った原体験の一つ。

誰かが亡くなるかもしれないということが身内にポジティブなインパクトを与えたということが大きなインパクトだった。


■曲のリクエスト|「終わりなき旅」Mr.Children

<選曲理由>
・20代の頃、なかなかうまくいかないときにこの曲を聴いて、自分のことじゃないかと勝手に感じて、何度も何度も聴いた。
自分の中の自問自答だけど、やっぱりやっていこうと勇気づけられた曲で、当時だけでなく、今でも。

■後半

PTGとPTSD

・先ほどのお話の、パートナーの行動変容とは?
特に大きかったのは心的な変化。PTGという概念です。PTG(Post Traumatic Growth)とは、心的外傷後成長を意味する心理学用語で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と違い、Growth、つまり成長する。耐性が付く、前向きな態度になる。認知変容から行動変容につながる。「もっとお互いを大切にしよう」ということが家族に対して、社会に対して起きた。

・心の傷がトラウマになるタイプといい方向につながる人の割合は?
そもそもで言うと、遺伝や先天的な要因、性格の特性もあるけれど、私が注目しているのは教育。ストレスに対する考え方や物事に対するとらえ方について事前にある程度知っている方の方が、PTGをうまく活用できたり対処できるようになる。

・ライフイベントの中で一番つらいのは死別体験
死別体験に対して、「ライフイベント」で一番つらいことはパートナーの死という研究がある。死というものは我々人間にとって強烈なものであることは間違いない。日本の研究者のワタナベ先生やオカモト先生は、死別体験に積極的に関与することによって人格的発達につながる、教育に援用できるのではないかと考えている。

その時に必要なのは、この体験はどのように自分に意味があるのだろうかと内省する時間で、ここにとても意味がある。

目の前の人が死ぬことを想像してくださいということはあまり健全ではないし、 良くないとは思うんですが、ゲームであったら普段やっちゃいけないことも許されることって多々ありますね。いわゆる非現実的な空間であれば許されるとか。最近はそういったものをテーマに、ゲームを教育に援用することの効果を研究しています。

死生観教育とゲーム

・去年の論文は死や喪失をテーマにしたノベルゲームが学生の自己成長に及ぼす影響というものでした
この研究で使ったゲームは研究用に開発されたもの。自分の死、自分以外の死。ジャンケレヴィッチという研究者・思想家は、「自分の死」と「他人の死」の間に、「自分のもののような死」を「二人称の死」として、死を3つに分けています。自分の死と同じように感じられる大切な人の死を疑似体験することが、死生観に影響があるのかという研究をしたら、結論から言えば影響はあった。
でも、それは全員ではなくて、死に対して事前に学校の教育を受けている人のほうがより顕著に効果が表れ、そうじゃない人は、よい経験ではあったけれど、意味について深く考えるという所までは至っていなかった。

死生観教育というものは、色々な識者が色々な立場でやっているけれど、ここでは「死にゆくことを恐れるな」というものではなくて、死というものをちゃんと、身近にあるものだと考えて、意味を考える土壌や環境を作っていく。こういうことに役立てていけるのではないかという示唆はあると思っています。

死生観の空洞化

・死生観の空洞化というキーワードとして出てきていますが、ゲーミフィケーションを活用することで、より構えずに学べる、社会実装していく未来を感じました
ゲームをいい風にとらえる人、悪い人いると思いますが、「死生観の空洞化」ということは、広井先生が2001年くらいに、島園先生は、現在の死生観は漫画や映画の影響を受けているので、「正しい」といったら語弊があるけれど、概念として本来持っていなければいけない生と死というものに対して、ポジティブに使えるゲームとそうではないゲームというものを見たり、ゲーム要素として使うならば、どのあたりが倫理的に大丈夫なのか、ということを持ったうえでゲームの効果を研究しています。

なので、前回Deathフェスさんに参加させていただいたときに、そういう意味ではすごくネガティブな発言とか批判的な意見もあったような気もするけれど、それでも、Deathフェスさん自身はすごくポジティブに、ちゃんと慎重に、かつライトに、入り口を広く間口を取れるような仕組みをつくられているんじゃないかと思いました。その中の一つとして私をとらえていただくと、Deathフェスさんの入り口からもうちょっと深く入っていけるような。私もDeathフェスさんのの仕組みに、ぜひもっと深くかかわって行きたいなと思っています。

★応援とありがたいお言葉、嬉しいです!先生とお会いしたときに、そうか、ゲームという視点があったか!と思いました。死を身近に、よい疑似体験ができるのではないかと思っているので、ぜひご一緒させてください!

■お知らせ

・10月15日(火)は、東京都森下にある「終活スナックめめんともり」にて「Deathフェスナイト 1日ママ」やりますよー

みなさんのお酒代が、Deathフェスの応援になります!

・来週のゲストは、ペットの納棺師吉田さんをお迎えします


■番組へのお便り

こちらの記事をご参考にどうぞ。

https://note.com/deathfes/n/n930fe6d4a36d

★★すべてのアーカイブはこちら!

https://note.com/shiburadi/m/m458e51f0078b





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