「浦島太郎」にならないように ー 日経新聞を読んで感じたこと・考えたこと(2022/4/21~)
本投稿でお伝えしたいこと
本投稿は4月21日以降に日経新聞に記載された記事を読んで、私が感じたこと、考えたことをまとめています。
今週も「化」の字が付いている記事が多く目につきました。
キャリア形成の変化
職場環境や評価制度の変化
指導方法の変化
技術の進化・・・
国の予算の使い方は変わっていないようですが(苦笑)
「変化」や「進化」に取り残されて「浦島太郎」にならないように、学び続け・考え続けていきたいですね。
全体で約8000文字、13〜14分で読めます。
大見出しごとに異なる記事について書いています。上から順番ではなくても、興味のあるタイトルからお読みいただけます。
みなさんの考えるヒントになれば嬉しいです。
よろしければ、お付き合いください。
芦屋みちお
「浦島太郎」にならないように
記事のポイント
ゲーム制作・企画会社カヤックが4月1日に入社式を開いた。同社では2019年度から新入社員全員が入社時に退職届を書いている。どんな仕事をしてどう成長していきたいのか。退職というゴールを意識させ、そこから逆算してキャリアの積み方を考えさせる。
成長意欲が高い人材が集まり散じることで会社が活性化し、成長すると考えている。
健康機器大手のタニタも昨年から、新入社員に終身雇用以外の道もあると積極的に伝えている。だが専門スキルが身に付くように新入社員教育は手を抜かない。
日立製作所は入社式という呼称をやめた。4月1日は日立製作所社員としての初日ではなく、社会人としてキャリアを歩み始める初日という位置づけだ。
リクルートマネジメントソリューションズの2021年新入社員意識調査によれば「現在の会社で勤め続けることにこだわらない」が「定年まで勤めたい」を上回った。Z世代が若手は仕事の質を重視し、終身雇用は最優先事項ではなくなりつつある。
三井住友海上火災保険は今後、出向・副業の経験を課長昇進の条件に加える。1つの組織の中だけで働くだけでは仕事に必要な多角的な視点が身に付きにくいと考えた。
自分のキャリアを会社任せにしてはいけない。転職はしなくても、社内外で自分を磨く意識を持つことがこれからの若手社員には求められる。
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入社式に退職届を書く。面白い取り組みですね。
人間は「永遠に続く」と思えば漫然と時間を過ごしてしまいがちですが、学校でも仕事でも、そして人生でも「終わり」が明確になると、残りの限られた時間の中で思い残すことがないように一生懸命やろうと思いますよね。みなさんも経験がありませんか?
企業においても、終わりを見据えて目の前の仕事に取り組む人が多い会社の方が、個人も企業も成長が早いように感じます。
私は10年ほど前コンサルティング会社で働いていました。
現在は状況が変わっているかもしれませんが、当時のコンサル会社には定年まで勤めたいと考えている人はほとんどいなかったように思います。
そのため将来の目標に向かって、今の仕事で得られるスキルや経験を貪欲に吸収しようと考える人が多く、結果として個人としても組織全体としても高いパフォーマンスを発揮できていたように思います。
記事では「社内外で自分を磨く意識を持つことがこれからの若手社員には求められる」とありますが、私の知る限り、若手社員には会社に入る前からそういった意識を持っている人が多いように思います。むしろ問題なのは「若手じゃない社員」じゃないでしょうか。
新入社員の頃に抱いてた社会人としての高い志をすっかり忘れて、「永遠に続く時間」を漫然と過ごしていると、竜宮城で楽しく過ごして、気がついたら世の中がすっかり変わってしまっていた「浦島太郎」になりかねませんね。
「自分のお金」と「他人のお金」
記事のポイント
政府が新型コロナウイルス対応へ用意した「コロナ予備費」と呼ばれる予算の使い方の不透明感がぬぐえない。
国会に使い道を報告した12兆円余りを日本経済新聞が分析すると、最終的な用途を正確に特定できたのは6.5%の8千億円強にとどまった。9割以上は具体的にどう使われたか追いきれない。
12兆円のうち医療・検疫体制確保向けの4兆円に続いて多いのが地方に配られた3.8兆円。同交付金をめぐってはコロナ問題とこじつけて公用車や遊具を購入するなど、疑問視される事例もある。自治体が予備費を何に使ったかまで特定するのは難しい。
通常予算の例外が予備費。金額だけあらかじめ計上しておき、使い道は政府の閣議だけで決められる。
コロナが広がった20年春以降の3年で総額20兆円弱に達した。そのうち12兆3077億円は実際に執行し、国会に使い道を報告した。
予備費の最終的な使い道がつかみにくいのは、当初予算や補正予算などすでにあるお金と予備費を混ぜて管理するケースが多いからだ。
危機に際し、柔軟で機動的に使える予備費にも意義はある。ただ国内総生産の数%に相当する巨大な予算を国会審議を経ずに執行できる仕組みは透明性に懸念が残る。
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コロナ予備費12兆円余りのうち、9割以上の使い道が追いきれないという衝撃的な記事です。
決してカッコつけて言っているわけではないのですが、個人的には他人のお金を使うのが大キライなので、なんで平気で関係ないものに使えるのか理解できないです。
「自分のお金」なら何に使おうが自由です。
他人から奇異な目で見られるような使い方であったとしても、気にする必要はありません。
しかし「他人のお金」となると話は違います。
記事にあるように外部からのチェック体制も必要ですが、まずは使う側に目的に沿っているか、何に使ったかを説明する責任があるのではないでしょうか。
(自分にその予算を使う権限があったとしても)
英語で説明責任はアカウンタビリティ(accountability)。その単語のもとになっているaccount は「収支報告」、accountingは経理・会計を意味します。
説明すること=ちゃんと勘定すること
ではないでしょうかね。
追伸
先週末(4/23-24)に東京に行きました。そのとき港区の図書館を利用したのですが、その充実ぶりにびっくりしました。
建物は最新で蔵書も豊富、閲覧スペースもゆったりしていて、まるで有料のラウンジのようでした。
住民税納税額ランキングトップ、日本でいちばん裕福な方が多く住んでいるエリアにこの施設を作ることがいちばん良いお金の使いかたなのか、元港区民として複雑な気持ちでした。
ニュースバリューがなくなる日
記事のポイント
LIXILは管理職を役職で評価する仕組みを導入した。
従来は勤続年数の長さを重視してきたが、今後は役職ごとに必要な能力を満たすかで判断する。
これまで管理職は、役職とは別に定めた7つの等級を使って評価し、等級を上げる際は個人の勤続年数を反映していた。年功序列型の色彩が濃く、若手社員を要職に抜擢しづらかった。
今後は等級を3つに集約し、役職と職務内容による評価を重視する。
実力のある社員の抜擢で会社全体の競争力を高めるほか、世界での事業展開を支える人材の獲得にもつなげる。
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最初この記事のタイトルを見たときに、意味が理解できませんでした。
管理職、役職で評価?。他に何で評価するの???
記事の本文を読んで内容は理解できましたが、昭和、平成が過ぎ、令和も4年目を迎える時代になっても、この内容が記事になる、ニュースバリューがあることに驚きました。
日本で「成果主義」が注目され始めたのがバブル崩壊後の1990年以降と言われていますので、それからすでに30年以上経過していますが、まだまだニュースになるような珍しいことなんですね。
「親ガチャ」という言葉があります。
家庭環境によって人生を左右されることを、ゲームの「ガチャ」にたとえた言葉で、2021年の流行語大賞にノミネートされました。
「年齢」も「親」と同じで、本人の意志や努力ではどうすることもできない「ガチャ」です。
例えばAさんが1980年生まれ、Bさんが1990年生まれだとすると、何があろうともAさんはBさんより年上ですし、BさんはAさんの年下であり続けます。
それは、どんなに本人たちが努力しようが・しまいが変わることはありません。
もし私が「年齢ガチャ」の会社で働いていたら、リスクをとってチャレンジするよりも、若いうちはマイナス点をつけないようにつつがなく過ごして、歳を取ってからは働いているフリだけすると思います。
そんな会社人生楽しいですかね?
「年齢ガチャ」がないという世界的には当然のことが、ニュースバリューを持たなくなる日が早くくるといいですね。
置かれた場所で枯れるより
記事のポイント
近畿日本ツーリストを傘下に持つKNT-CTホールディングスは、シニア人材の派遣事業に参入する。
60歳以上で再雇用を希望する社員をグループ内の派遣会社で再雇用し、ホテルや観光施設などに派遣する。
新型コロナウイルス禍で旅行業や観光業は打撃を受けたが、感染収束後は需要が回復すると判断。シニア人材のノウハウを生かした派遣ビジネスに商機を見いだす。
賃金は派遣先に応じて変動する時給制となる。派遣先が見つからない場合は、派遣会社内で事務作業などに従事する。
65歳から70歳までは派遣先が見つかれば就業機会を確保できる仕組みにする。シニア人材の希望者全員を派遣に活用する取り組みは珍しいという。
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新型コロナ禍で大きな打撃を受けた旅行業界の中で、旅行消費の回復に向けて新たな取り組みを始められた事例です。
同社のHPを探してみましたが、関連のニュースリリースが見当りませんでした。この記事より詳しい内容は不明ですが、人材の有効活用という観点から面白い取り組みですね。
この記事を読んで、私はこんな感想を持ちました。
社内にニーズはなくても、社外で必要とされるスキルや経験、ノウハウはたくさんある。
記事によれば、グループ内の人材派遣会社で再雇用されるとのことなので、社内ではニーズがなかったということですよね。一方で22年度に約200名を派遣する予定とのことなので、社外ではかなりの需要が見込まれるわけです。
旅行関連に限らず、そういったノウハウは他の仕事でもたくさんあるように思いますね。
社外に派遣されるとしても、これまでの会社に所属していたい。
社内では活躍の場がなく、社外で必要とされているところがあるのに、今の組織を離れて相手の会社に飛び込むことはしないんですね。
所属は同じグループでも、職場環境の変化への対応が必要。
社内で年下の同僚に囲まれて正社員として働くのと、よその会社に行って派遣社員として働くのとでは、一緒に働く方の接し方はが違うと思います。
添乗員などで顧客対応に慣れている方ではなく、内勤ばかりやってきた方だと環境変化への対応に苦慮する方も出てくるかもしれませんね。働く側にも覚悟が必要です。
職場環境の変化への対応は必要になりますが、必要とされていないこれまでと同じ場所で働くより、よほど有意義な人生になるように思います。
活躍してほしいですね。
「相手のメリット」より「自分の都合」
記事のポイント
データ革命の波は学生スポーツにも押し寄せている。
慶應義塾大学日吉キャンパスにほど近い民家の一室に、最新鋭の計測器が揃う”秘密基地”がある。
運営する会社の代表は、スーパーラグビーのコーチを務めた後、他競技や高校生以下の部活動に軸足を移した。
しかし、練習内容は指導者の経験則に基づくものばかりで、栄養や休養の取り方も不十分。「一生懸命トレーニングを頑張っているのに、(その効果を示す)データを取り扱う土壌が整っていない。評価軸を作って自分の体を知ってもらうことが大事だと思った」
日本でも、ラグビー日本代表のデータ分析などを支え脚光を浴びた体調管理アプリは、今や全国の中学や高校、大学の1000以上の部活が利用する。
一方、アナリストのような人材は限られており、正しい活用法の周知が進んでいない。
自身のパフォーマンスが可視化されることで、選手の目の色も変わり始めた。「言葉でアドバイスされるより、数値で示されるほうがわかりやすい」
「我々がフィードバックしたものと指導者が言っている内容が違っては選手も混乱する。これまでの指導論にとらわれずに学校側も勉強する必要があるし、どこまでサポートするかも考えないといけない」
部活動を舞台にしたスポーツDXは大きな可能性を秘めている。
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学生スポーツの世界にも、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の波が押し寄せていることを紹介した記事です。
昭和の時代に学生スポーツといえば、「練習中に水を飲んではいけない」とか、「うさぎ飛びでグラウンド1周」とか、まさに「根性」「努力」の象徴という印象がありました。
そんな世界でデジタル化が進んでいるなんて、隔世の感がありますね。
一方で「体育会」の対極にあり、データをもとに物事をもっとも合理的に判断しているはずの「ビジネス」の世界にいる日本企業で、DXが普及していかないのは謎です。
私はDXをはじめとした「変革」を阻む最大の原因のひとつは、「相手のメリット」より「自分の都合」を優先していることにあると考えています。
スポーツの世界でいえば、データにより自身の状態が可視化されることで、選手のモチベーションやパフォーマンスアップに多大なメリットがあるにもかかわらず、指導者が慣れ親しんだやり方を変えたくないので、(効果の少ない)経験則に基づいた指導法を続ける。
ビジネスの世界であれば、デジタル化することで顧客の利便性は高まり、負担が減る。さらにコスト削減にも繋がることは明確なのに、自分たちの業務のやり方を変えたくないので、顧客にいままで通り紙での提出を求める。
日本では「顧客第一主義」とか「お客様は神様」なんて言葉をよく聞きます。
私は顧客と企業の関係は対等だと考えているので、神様扱いしてほしいとはまったく思いませんが、
せめて「自分の都合」だけでなく、双方合わせていちばんメリットの大きい方法を選んでもらえると嬉しいです。
“イヤな日本”の象徴
記事のポイント
春の大会に向け、1試合でも多く実践をこなしたい時期に、慶応高は知的障害のある高校生も甲子園を目指せるようにしようという「甲子園夢プロジェクト」との合同練習を行った。
慶応高は、神奈川の強豪である一方、勝つことのみにとらわれない高校野球の価値を模索してきた。
近隣の小・中学生向けの野球教室を開催する高校も現れ始めている。社会の一員として広い視野を養うための策だ。勝利至上主義の見直しの機運ともいえる。
同じ流れで「脱トーナメント」の動きも注目される。負けたら終わりのトーナメントではエースやレギュラー陣に起用が偏るが、リーグ戦なら選手起用の自由度が増す。
ベンチによる統制色が強い野球への疑問から、ノーサイン野球を取り入れたのが、弘前学院聖愛高だ。「社会で通用する人材になってもらうためにも、自分で考える野球をしよう、と」
犠牲を強いる組織偏重から、選手個人の成長と幸福の最大化を図る軌道修正。この競技が続いていくための野球盤SDGsの動きととらえていい。
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肥満児だったこともあって、子どもの頃からスポーツをするのは苦手でした。
一方で見るのは大好きだったのですが、唯一の例外がありました。今回の記事で取り上げられている高校野球です。
高校野球だけは、中学生ぐらいから見なくなりました。というより、避けていたという方が近いかもしれません。
私にとって高校野球(高野連)は、素敵な日本のなかの“イヤな日本”の象徴でした。
イヤな理由
坊主頭:硬いボールやバットを使うのに、頭を守るためにある髪の毛を切らせる。
団体責任:同じ組織にいるだけで罪のない人にも責任を負わせる。
真夏に連日のデーゲーム:競技日程優先で選手の体のことは考えてない。
高校野球連盟(高野連)のHPにある「日本学生野球憲章」によれば、学生野球は学校教育の一環!?なのだそうです。
どんな教育を目指されているのか、理解できませんでした。(苦笑)
この記事によれば、そんな高校野球にも学校単位、草の根レベルからの変革が起こっているようですね。
高校野球を楽しめるようになる日も、近いかもしれません。
切り替えスイッチ
記事のポイント
パジャマ姿でノーメイクなのに、ビデオ会議の画面越しに見えるのは服装を着替え、バッチリ化粧した「仕事モード」の自分。
エンボディーミーはビデオ会議で外見をAIで置き換えるアプリの提供を始めた。基本使用は無料。
アプリをパソコンにダウンロードし、自分のスーツ姿の写真などを用意すれば、ビデオ会議のカメラの設定から簡単に「変身」が可能だ。
開発した技術は話し手の顔を5万点に及ぶポイントで3次元的にとらえ、表情の変化を詳細に追跡する。深層学習を用いた「ニューラルレンダリング」と呼ぶ手法を組み合わせ、ビデオ会議の画面上であたかも本人が話しているような自然な映像を生成する。
エンボディーミーの技術は「映像生成をすべてリアルタイムで処理していることに強みがある」。タイムラグがあると使い勝手が悪くなるが、市販のパソコンでも0.01秒で高度な処理を実行でき、競合他社に比べ50倍以上の速さという。
AIなどの進化でビデオ会議の出席の仕方も多様化しそうだ。
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記事にはこの技術を使った「使用前・使用後」の写真が掲載されていますが、服装だけでなく、髪型や化粧もばっちり「仕事モード」になっています。
興味深かったので、エンボディーミー社のHPにアクセスしてみました。
「xpression camera」という製品が動画で紹介がされていますが、本人だけでなく有名人や動物にも置き換えができるようです。
この技術も「すごい」と思いましたが、私にとってはこの技術を使ってパジャマで会議に臨める人のほうがさらに「すごい」ですね。
私はできるだけ仕事はしたくないタイプなので、パジャマのままでは「仕事をしよう!」という気持ちにはなれません。
そのため在宅勤務のときでも、部屋着から外出できる洋服に着替えて、香水もつけて「仕事モード」にスイッチを切り替えています。そこまでしてやっと、仕事をしよう、会議に臨もうという気持ちになれます。
外見とセットで、気持ちも「仕事モード」にしてくれる製品があるといいのに(笑)。
みなさんは「仕事モード」への切り替えスイッチ、ありますか?
美味しいものを食べて、次回の投稿に向けて英気を養います(笑)。