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雪の日に想うこと

 今日もまた、たくさん降った──

 雪国ではそんな台詞が、どこか残念そうな声で呟かれる。
かく言う私もその一人だ。

 どっさり降れば、雪かきという肉体労働をしてから仕事に行かねばならず、家族の送り迎えも、雪道にヒヤヒヤしながら行かなければならない。
雪がたくさん降って嬉しいのは、正直子供の頃だけの話である。

 けれど逆に全く降らない冬があれば、何故か少し、寂しく思う。

 荒れ狂うような猛吹雪の時もあれば、しんしんと優しく包み込むように降る夜もある。寒くて凍えそうで苦手だと思う一方で、その美しさに目を奪われることも、数えきれないだけたくさんあるのだ。

 冬は寒いから嫌い──けれど雪はどちらかと言えば好き。そんな相反する感情をもたらすのが、私にとっての雪だ。

 どんなに冷たくて大変で、厄介な奴でも、完全に嫌いになることはできない。まるで腐れ縁の恋人のよう。

 ほら、今もまた、たくさん降って来た。

 明日の朝、お前のために早起きをしてやらねばならん。

 私にこれだけの時間と労力を使わせる、厄介な冬の恋人よ。

 どうか私に、優しく降ってください。


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