なぁ、主人よ……
【お題】
(貰ったお題)主人が先に逝った老猫の話
↓
(書いたもの)主人よりも先に逝ってしまった老猫の話
【イラスト】
緑川_桃 @Greeeeeenpeach
【10行プロット】
ある日、猫は幼い飼い主と猫じゃらしで遊んでいると、勢い余って大事にしていた玩具を壊してしまう。幼い飼い主はそれを見てショックを受け、大泣きをする。いつまでも泣く飼い主に対して、あんなところに置くのが悪いのだと言い訳をしながら自分を正当化しながら、申し訳なさそうな顔をしてうずくまる。そのうずくまった幼き頃の猫が、老猫になり同じ場所に横たわる。大きくなった飼い主は横たわる猫に何か訴えながら泣いている。何かまた自分は壊してしまったのか? と、猫は聞こうとするが体に力が入らない。猫はそこで自分の残された時間がわずかであることを悟る。と、同時に飼い主は自分が壊れてしまう。それを恐れているのではと推測する。幼いころと何も変わらない飼い主を見つめて、手に届くものはすべて壊れてしまう。だから僕は君の手の届かないところに行くよ。楽しかった、またねと言い残し息を引き取った。
【教訓】
形あるものはいつかなくなり、形のないものだけは残る。
【登場人物】
猫・主人(21)
【本文】
〇 ある家・主人の部屋
老猫がぐったりと横たわる。
涙を落とし、老猫に問いかける主人。
老猫「みっともない……あの時と同じだな」
〇 (回想)ある家・主人の部屋
棚にプラモデルが多く並ぶ部屋。
猫じゃらしで遊ぶ若かりし猫と主人。
猫が棚に飛び乗り、プラモデルを落とす。
プラモデルを抱きかかえ泣く主人。
主人を横目に見て、部屋から出て行く猫。
〇 (回想戻り)ある家・主人の部屋
老猫「私は……また、なにか壊したのか?」
動こうとする老猫。起き上がれない。
老猫を優しく抱き上げる主人。
老猫「……そうか。壊れるのか」
何か必死に発している主人。
じっと見つめる猫。
老猫「主人。お前はいつまでたっても変わら
ないな」
目を閉じる老猫。
以下、点描で回想。
〇 ある家・ダイニング
弟(3)に菓子を取られる、幼き主人(5)
弟の頭を撫でる主人。
餌を目の前にしてじっと主人を見つめる若か
りし猫。
老猫off「とろくて――」
〇 ある家・窓際
お昼寝をする主人(9)と猫。
猫が目を覚まし、主人の顔をなめる。
老猫off「寝坊助で――」
〇 ある家・主人の部屋
壊れたプラモデルを泣きながら治す
主人(13)。
猫が近くに寄り、鳴く。
笑顔でそっと猫を撫でる。
回想終了。
〇 ある家・主人の部屋
目を開け、主人に笑顔を見せる老猫。
老猫「実に、泣き虫だ。いいか、主人。形あ
るものは手に届くところにあると、壊れて
しまうのだよ。あの、プラモデルみたいな。
だから、私は――」
ゆっくりと目を閉じる猫。
猫をゆする主人。
老猫「またな、主人」
主人の泣き声が、部屋に響く。
(おわり)
【あとがき】
『突然失礼いたします。作者の小柳菜ノ花です。
今回のお題についてちょっとばかりお話しさせてください。
今回は、イラストを描いてもらっている緑川_桃にお題を貰いまして、自分なりにはお題に沿って書いたつもりだったのですが、なんと逝かせる方を主人でなく老猫にしてしまったという……なんともおバカな作者です。
「主人が先に逝った老猫の話」というお題。
この文を読み解くということ自体が私にとって鬼門だったようで、正解にたどり着くまでに2回間違えた解釈で書いています。
お題には添えていないのですが、どれも面白い作品にはなっていますので、全て掲載したいと思います。似たような作品が数日間続きますが、暖かい目でご覧ください。
お邪魔いたしました。今後とも、小柳菜ノ花をよろしくお願いいたします』