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中小企業診断士試験にストレート合格!私が実践した学習戦略
1. はじめに 〜ストレート合格の希少性〜
中小企業診断士は、企業の経営課題を診断し、的確なアドバイスを行う専門家として知られています。しかしながら、その試験は難関として有名でもあります。
実際、私が合格した年を例にとると、一次試験の合格率がおよそ20%、さらに二次試験の合格率も20%ほど。その両方を一発でクリアし、「ストレート合格」する割合は、2次試験の合格者全体の中でもさらに3割程度しかおらず、最終的には1%前後にもなる狭き門です。
そんな試験を、私は約1年半の学習計画で突破しました。本記事では、その具体的な学習戦略や当日の心構えをお伝えし、これから中小企業診断士を目指す方のお役に立てればと思います。
2. 合格に至るまでの全体的な戦略
2-1. なぜ中小企業診断士を目指したのか
当時の私は製造業の技術系の業務に携わっていました。日本企業の製造現場では、経営戦略の不透明さや、従業員としての経営視点の欠如など、多くの課題を感じていたのです。さらに、日本の製造業が弱体化してきている現実を肌で感じ、「自分がリーダーシップを発揮するときには、経営をしっかり理解できる状態でいたい」という思いが高まりました。
そうしたモチベーションから、経営を体系的に学べる中小企業診断士試験に挑戦することを決意。経営知識を身につけることで強い製造業をつくり、日本企業を盛り上げる一助になれればと考えたのです。
2-2. 学習期間は1年半
「ストレート合格」とはいえ、私は1年半ほどの時間をかけて準備しました。一次試験と二次試験の内容をあらかじめ分析し、
二次試験で鍵を握る科目(特に財務・会計)
一次試験で基礎を積み上げるための学習順序
を考慮しながら計画を組みました。財務や会計が二次の合否を左右すると聞いていたため、まずは日商簿記3級・2級から勉強をスタートし、徐々に他科目へと広げていったのです。
3. 一次試験対策 〜教材と勉強法〜
3-1. 全科目の概要を把握してから着手
一次試験は、企業経営理論、経済学・経済政策、財務・会計、運営管理、経営法務、中小企業経営・政策など、多岐にわたる科目を学ぶ必要があります。最初に取り組むべきは、「自分の得意・苦手を見極めること」と同時に、「二次試験でも使う重要科目を把握すること」です。
私はまず財務会計(簿記)の学習に力を入れました。簿記をしっかり理解しておくと、一次試験だけでなく、二次試験でも大きなアドバンテージとなるからです(2次試験で最も差がつくのが事例IVの財務会計の試験の気がしています)。簿記の仕分け自体は中小企業診断士試験では出てきませんが、財務諸表を見ての分析は求められますので、簿記2級をとっておくとベースができあがります。
・・・最もらしいことを書いてみましたが、実は1次試験の範囲の広範さに途方にくれて、まずは以前から興味のあった簿記からやったという経緯もあります!自分の興味ある分野から1科目ずつ進めていくのも学習を続けられるコツかなと思います。
3-2. 資格学校と教材の使い方
私の場合は、メインを大手予備校の単科講座(全講座受講する金銭的余裕がなかったのもあります)に絞りつつ、経済学など一部の科目では他社教材も取り入れました。細かなポイントは色々あるのですが、それは別の記事にするとして、
問題集系の教材で反復演習。
経営法務など暗記色が強い科目は暗記アプリを使って毎日隙間時間に知識を刷り込む
ポイントは「いかに効率的にアウトプット演習をこなすか」。テキストを読むだけでなく、問題演習で定着を図ることが重要です。時間が足りない場合でも、最低限の講義を聴き、演習→復習のサイクルを維持するようにしました。
4. 二次試験対策 〜合否を分ける決定打〜
4-1. 早期から二次を意識した学習
多くの方は一次試験合格後に二次の勉強を始めると思いますが、私は一次試験合格前から二次対策にも着手していました。特に企業経営理論と財務・会計の知識は一次と二次をつなぐ橋渡しになるので、1次試験の準備をしながら2次の論述形式にも慣れておくことは非常に効果的でした。
4-2. 専門の予備校&参考書をフル活用
二次試験は記述式であり、事例企業の課題を分析し、論理的かつ説得力のある解答を書く必要があります。最初は「どう答えれば点を取れるのか」すら分からない状態でしたが、私は二次専門の講座に通うことで、答案の書き方や事例分析の勘所を学びました。専門の講座を取らない場合でも、
ふぞろいな合格答案などの解答事例を活用し、自分の答案を客観的にチェック。
1次の知識を事例企業へ落とし込み、マーケティングや組織論、戦略論などを繋げる練習を繰り返す。
独学でも合格は可能と言われますが、私は「講師から直接フィードバックが得られる」メリットを重視し、効率的に力を伸ばしていきました。
この他にもコツがありますので、別の記事でもご紹介できればと思います。
5. スケジュール管理とモチベーション維持
5-1. 「時間を捻出する」覚悟
中小企業診断士試験に合格するためには、およそ1,000時間の勉強が必要と言われています。私は受験生当時は20代で体力に余裕があったとはいえ、平日の仕事後や休日の大部分を勉強に割くことは相応に大変でした。
平日は1〜2時間を目標に、会社から帰宅後に必ず机に向かう。
土日は5〜6時間を勉強時間として確保し、問題演習や模擬試験形式のアウトプットに集中する。
自習室を契約し、そこに行く習慣をつくる(※地味ですが、極めて重要)
大事なのは、学習することを習慣化する仕組みを作ることです。学習時間を習慣化することで、モチベーションの波があっても最低限の勉強はこなせるようになります。
5-2. 毎日のルーティン化
私は以下のようなルーティンを作り、モチベーションを保ちました。
帰宅後の2時間: タックの講義→問題演習→復習をセット化。
休日: 事例問題の演習や模試形式のアウトプットを行い、自己分析。
休日の学習終了後は映画館にいくなどしっかり息抜き
スランプや飽きが来そうなときでも、合格後の自分の姿をイメージして踏ん張る。スモールステップで着実に前進することで、最終的に大きな成果に繋がると実感しました。
6. 試験当日の心構え 〜前日からの過ごし方〜
6-1. 試験前日はリラックスと暗記確認
私は試験前日や当日は、むしろゆっくり過ごすようにしていました。最後の追い込みで実力が劇的に伸びるわけでもないので、ビールを一杯飲んでリラックスするなど、自分なりに「平常心」を保つ工夫をしたのです。
ただし、暗記系科目の最終確認はしっかり実施しました。一次試験では経営法務など苦手科目に力を入れて、足切り(40点未満)を回避するための見直しを行っています。
6-2. 試験本番での戦略
一次試験はマーク式のため、「解ける問題から着実に落とさない」という基本戦略が重要です。分からない問題に時間を費やすより、得点可能な問題を確実に拾うことで合格点を確保できます。
二次試験では、事例文を読んだときに「出題者が意図したストーリー」をできるだけ早く掴む意識が大切です。環境分析(強み・弱み、機会・脅威)をしっかり押さえ、王道の道筋を踏み外さないことが鍵。仮説を立てながら、各設問への回答を論理的に繋げていくことで、大崩れを防ぎました。
7. 結び 〜合格後に広がる世界〜
合格後は、診断士同士のネットワークが一気に広がり、多様な業種・経歴の人々と交流する機会が増えました。これは私にとって大きな財産となり、企業の経営やマネジメントを学ぶうえでも、実践的な視点を得る良いきっかけになっています。
また、会社員でありながら「将来は自分の事業を持つかもしれない」と思えるようになったのも、経営に対する知識が深まったおかげです。自分の選択肢が増えることで、これまでとは違うキャリアパスやビジネスの可能性を想像することができるようになりました。
7-1. 受験生へのメッセージ
これから中小企業診断士を目指す方は、明るく朗らかに、かつ着実に勉強を進めてみてください。学習スケジュールを立て、モチベーションの波があっても投げ出さずに、日々コツコツ継続する。これこそが合格を引き寄せる最大のポイントだと感じます。
さらに、既に合格された診断士の方と直接会い、話を聞く機会を持つことも非常に有効です。彼らのリアルな体験談や、試験後のキャリアなどを知ることで、自分自身のビジョンがより明確になっていくはずです。
合格までの道のりは決して平坦ではありませんが、それを乗り越えた先には、視野が広がり、人脈が増え、自分自身の可能性も大きく広がる世界が待っています。中小企業診断士を目指す皆さんの健闘を心から応援しています!