ヘンな同僚 #1
はじめに
お役所に限らず、民間の会社や町内のコミュニティでも、他人との関わりというものからは避けて通れないものです。
それでも、私の経験からなのか偏見なのかは分かりませんが、お役所というところは特に世間一般からは変わった人間が多くて…。
(もちろんいい意味で変わった人もたくさんいました。)
ここでは、良くも悪くも「ヘンな」同僚について書いてみたいと思います。
#1 工事担当者Aくん
私は用地交渉業務の担当が長く、兼務を含めると15年以上公共用地の取得交渉をしてきました。いわゆる「土地買い屋さん」です。
一番多かったのは道路用地の交渉。土地の境界確認を必要とするため、隣地所有者の立会なども求めないといけません。必要な土地の所有者が死亡している場合はすべての相続人と話すこともあり、なんやかんやで年間200人以上の方と交渉する必要がありました。
小さな役場では掛け持ちで行うところもありますが、うちの役場では一応「用地担当」「工事担当(技師)」が係で分かれており、道路の完成形や技術的なことは工事担当に説明させるのが主でした。
今回の「ヘンな同僚」は、この工事担当、Aくんです。
とにかくルーズ
とにかくルーズ。ダメなものをダメと言えない。問題を放置したまま大きなトラブルに発展させる。息をするように嘘をつく。
Aくんを表現するとこんな感じです。
でも、技術的な知識は持っているから交渉先に連れて行かないと話ができない。
交渉先で、できもしない約束をする。
私も隣で聞いているのですが、工法的なことや工事の段取りなどの内容なので、その場では「…?、それ、おかしいな?」と気づけないのです。
しかも前述のとおり係が分かれているのでそれぞれに係長がおり、本件を総括して管理している人間がいません。これも大きな問題なのですが。
数回の交渉を重ねて無事に土地を購入し、工事が始まる頃になると、当然ながら相手からそのときの「できもしない約束」の履行を求められます。
普通なら対応するのですが、Aくんは「はあ…、まあ…」とノラリクラリで交わし、さらに何か月も放置するのです。
やがて業を煮やした相手方から首長や課長、ときには人事課に抗議が行き、そこではじめて問題が公に発覚する。
こんなことが何回かありました。1回で反省できないのもAくんの悪いところです。
当然、部長課長連中に呼び出しを受け、事情聴取です。
その場には私が用地担当で同席していましたので、当然に巻き込まれます。
部長に「〇〇さんに、△△できます、と言ったのか!?」と聞かれても、
Aくんは「あの…言ったような…なんとも…」とノラリクラリ。
私の方は、言葉の意味は分からなくとも議事録を残しているので
「確かに○○さんに言っています。隣で聞いていました」
すると
「そんな約束ができるはずがないだろうが!!」と一緒に叱られる。
こっちはそんな知識ないよ…。
しかも工事の話なんだから、自分の係の係長と相談しておけよ…と言いたいところなのですが。
後始末は周りの人間が…
できない約束とはいえ、約束は約束です。現場の工事も始まっています。
したがって丁寧な説明となんらかの方法での処置が必要となります。
場合によっては結構ヤバい橋を渡らないといけなくなることもあります
(もちろん、法令は犯してはいけません…)
その後始末は、いつも周りの人間です。
あるときは法務局へ一度提出した登記申請を訂正するため土地の境界確認からやり直す必要が生じたため、土地所有者の皆さんをもう一度現地に呼んで事情を説明しました。当然怒られますわなぁ。
用地を確定するためには隣地、すなわち買収対象とならない方も仕事を休んできてもらわないといけないし、当然立会手当なんてものもありません。
Aくんを連れていくと新たな約束などしかねないので、そういうときにはいつも私一人で対応し、ひたすら頭を下げまくる…。
土地所有者を怒らせ、工事業者を怒らせ、同僚を困らせ、上司を怒らせる。
そして私や他の係員が後始末する。
当然、本人へは人事からの懲戒処分もでるのですが、全然こたえないのか、同じようなことを繰り返す。
他の部署に異動となった時期もありましたが、そこでもトラブルを起こし処分。結局気がつけばまた工事担当課に配属されている。
本人も本人ですが、人事も人事ですよね。
仕事以外でも…
ルーズなのは仕事だけではありません。
当時、職場にはよく勧誘電話がかかってきました。
「行政書士の資格を取りませんか」「〇〇問題についての書籍を買ってもらえませんか」「マンションの経営権を買い取りませんか」…などなど。
まんざら無下に対応もできず、ときにはデリケートな話題について意見を求められ、うかつな返事をしてしまうと激しく突っ込まれて職場にしょっちゅう電話がかかってくる。
そのころは組織で対応してもらえず、個人で対処するしかなかった時代ですから、これに悩まされた職員は結構いたと思います。
そこでAくんの話。
断れないAくんは、個人的にかかってきた勧誘電話にも毅然と対応できない。ひどいときには30分以上無言で受話器を握りしめていたとか。
見かねた上司が「居留守を使わせるよう」周りに指示するものだから、周りの職員も迷惑。
30分おきに勧誘業者から「Aさんはまだ戻りませんか?」との電話がかかってくるから仕事にならないし、気分も落ち着かない。
そんな日々を重ねて…年度末。
人事異動でAくんは支所に異動となりました。
新しく赴任してくる人の為にロッカーを開けるよう指示があったのですが、指定日までにロッカーを片付けません。次に来る人も困っている。
みかねた同僚がコッソリとロッカーを開けたところ…
通信販売で購入したと思われる教材がビッシリ詰まっていたのです。
結局Aくんは勧誘の電話を断れず、奥さんにも内緒で教材を購入していました。
こういう業者さんって裏で繋がっていることが多いらしく、いわゆる「カモリスト」に挙げられているのでしょう。
複数の業者から多数の教材を購入していたようでした。
ここまでくると少し気の毒なような気もします…
そんなAさん。まだ現役でがんばっておられます。
仕事ぶりの評判を聞くことはもうありませんが、今後はいろんな人たちに迷惑を掛けないよう、一生懸命に働いてほしいものです。