短期市場変化:GARCH Model
金融市場の短期的な変化を捉えるために頻繁に使用される統計的手法であり、リターンの分散が一定ではなく、時間とともに変化することを前提に、ボラティリティ の時間変化をモデル化する。
リスク管理や、デリバティブ価格計算、金融危機分析、アルゴリズム取引におけるボラティリティ推定に使用される。
基本構造
GARCH(𝑝,𝑞) モデルは、過去のボラティリティ$${\sigma^2_t}$$と、市場ショックの影響の誤差項$${\epsilon_t}$$を用いて、リターンを予測するモデルである。
時刻$${t}$$のリターンを$${r_t}$$を、平均値$${\mu}$$と、平均ゼロ、分散$${\sigma_t^2}$$の標準分布に従う誤差項$${\epsilon_t}$$の和とし、以下のように表す。
$${r_t=\mu + \epsilon_t, \ \epsilon_t \sim \mathcal{N}(0,\sigma_t^2)}$$
分散$${\sigma_t^2}$$は、過去の条件付き分散と誤差項の和によって示され、過去の市場の状態がどのように影響するかを、時間ラグ$${p,q}$$、過去$${t-i}$$時の市場ショックの影響度の$${\alpha_i}$$、同様にボラティリティの影響度$${\beta_i}$$をパラメータとして用い、以下のように得られる。
$${\sigma_t^2=\alpha_0 + \Sigma^q_{i=1}\alpha_i\epsilon^2_{t-i} + \Sigma^p_{i=1}\beta_i\sigma^2_{t-i}}$$
ここで、$${\alpha_0}$$は基本のボラティリティのレベルで定数である。
最も広く用いられているものは、$${p=1,q=1}$$のGARCH(1,1)モデルで、直前の誤差の大きさと分散の大きさが、現在の分散を決めるシンプルな構造で、現時点での分散は以下のように与えられる。
$${\sigma^2_t=\alpha_0+\alpha_1\epsilon^2_{t-1} + \beta_1 \sigma^2_{t-1}}$$
$${\beta_1\sigma^2_{t-1}}$$は、前日のボラティリティが継続する慣性効果を示しており、値が大きい場合は、「ボラティリティの変動が持続する市場」であることを示唆する。
$${\alpha_1\epsilon^2_{t-1}}$$は、前日の市場ショックの影響で、値が大きいと、ショックの影響が大きく、ボラティリティが急激に変動する市場となる。
この2項により、市場でのボラティリティのクラスタリング現象がよくモデル化されることが特徴となっている。
Garchモデルは、ボラティリティの変動を分析するモデルで、市場変化を検出するZ検定、t検定、Cusum検定とは異なる手法である。
References
A Comparison of Volatility Models: Does Anything Beat a GARCH(1,1) Anders T. Andersen and Tim Bollerslev(1998)
Practical Issues in the Analysis of Univariate GARCH Models. Eric Zivot(2008)
An Introduction to the Use of ARCH/GARCH Models in Applied Econometrics Robert F. Engle(2001)