アセットマネージャーのためのファイナンス機械学習:ポートフォリオ構築 条件数

ポートフォリオ最適解を導く共分散行列の構造によっては、最適解が不安定になることがある。この現象を理解するために、共分散行列の条件数の概念を導入する。
 証券を二つに限定すると、この証券間の相関行列は、
$${{\bf C}=\begin{pmatrix}1 & \rho \\ \rho & 1 \\ \end{pmatrix}}$$で与えられる。
 これを$${{\bf C W=W\Lambda}}$$で固有値分解する。ケーリーハミルトンの式から、この固有値は、
$${t^2-2t-(1-\rho^2)=(t-(1-\rho))(t-(1+\rho))}$$より、$${1-\rho, 1+\rho}$$で、$${\displaystyle{{\bf \Lambda}=\begin{pmatrix}1+\rho & 0 \\0 & 1-\rho \\ \end{pmatrix}}}$$と与えられる。固有ベクトルは、
$${\begin{pmatrix}1 & \rho \\ \rho & 1 \\\end{pmatrix} \begin{pmatrix}x_1 \\ y_1 \\ \end{pmatrix} = (1+\rho)\begin{pmatrix}x_1 \\ y_1 \\ \end{pmatrix} }$$
$${\begin{pmatrix}1 & \rho \\ \rho & 1 \\\end{pmatrix} \begin{pmatrix}x_2 \\ y_2 \\ \end{pmatrix} = (1-\rho)\begin{pmatrix}x_2 \\ y_2 \\ \end{pmatrix} }$$
より、$${x_1=y_1, x_2=-y_2}$$、よって正則化して、
$${{\bf W}=\begin{pmatrix}1/\sqrt{2} & 1/\sqrt{2} \\ 1/\sqrt{2} & -1/\sqrt{2} \\ \end{pmatrix}}$$
となる。
 最適化で必要なのは、$${{\bf C}^{-1}=\frac{1}{1-\rho^2}\begin{pmatrix}1 & -\rho \\ -\rho & 1 \\ \end{pmatrix}}$$である。この逆行列の$${\displaystyle{\frac{1}{1-\rho^2}}}$$が、$${\rho\to \pm 1}$$で発散し、最適解の不安定性さの原因となる。
 この不安定性は、最大固有値と最小固有値の絶対値の比の条件数として、表現される。
 上記の例で言えば、
$${\displaystyle{\lim_{\rho \to 1^{-}}\frac{1+\rho}{1-\rho}=+\infty}}$$
$${\displaystyle{\lim_{\rho \to -1^{+}}\frac{1-\rho}{1+\rho}=+\infty}}$$


いいなと思ったら応援しよう!