『未知を拓く女の子』をプロデュースすること
『きらめろ』の大まかな印象
7月11日。およそ2週間前に発表された2人の新人にじさんじライバーが、この日初めての動画配信を迎えた。
Twitterアカウントの開設当初から賑やかな雰囲気の空星きらめと、マイペースながら明確に自分の成果物を提示していく金魚坂めいろ。新しい環境に慣れない彼女達は、時折拙さを見せながらどんよりとした梅雨模様の日々を明るく楽しいものに彩ってくれていた。そんな2人の初配信を見ての印象をまずは語っておきたい。
空星きらめ
Twitter上でも既に元気で賑やかしげだった彼女だが、やはり開幕から勢いのある映像を乗せてきた。
数年前のネットコンテンツの空気をどこかしら感じさせる素材の使い方と場面転換に、自信があると明かしていたラバーチキン※の鳴き声の真似をこれでもかというほどぶち込んだカオスな内容。なるほど芸人肌だ、と思わず納得してしまった。むしろ自己紹介を始めてからの方が「意外と性格は落ち着いているんだな」と思ったほどだ。
冒頭の動画は若さと無謀の結晶だったが、話し始めると逆に外連味が一切なくあっさりした印象に。気軽に配信を開いて親しみやすい、といった雰囲気のライバーである。初めての配信に緊張しているせいもあっただろうが、比較的大人しめだと感じる子だった。これからの配信活動で、動画やネタイラストのようなぶっ飛び具合と、普段のあっさり風味との塩梅をどのようにしていくかが楽しみだ。
まだ自宅に配信機材が揃っていないとのことで、しばらくはいちから社内スタジオを利用しての配信となり、配信頻度は少なくなるようだ。自宅環境での配信に慣れることも含めて考えると、しばらくはゆったりとした配信ペースとなるのだろう。映画やネット小説などの創作物に触れる機会が多いとのことで、そちら方面でのレビューには大いに期待したいところである。
※ラバーチキン:ニワトリを模したゴム製のおもちゃ。腹部分のふくらみを押し潰すことで空気が絞り出されて情けない鳴き声になる。
金魚坂めいろ
自ら絵を描いてアニメーションを作成し、また自虐交じりのネタイラストがバズったりするなど、配信前から何かと注目を集めがちだったのが彼女である。公開されるアニメの一部やイラストからは、彼女のスキルの高さを伺い知ることができた。一方、彼女の性格や声色についてはツィートによってそのイメージが二転三転しており、個人的には掴みどころのなさを感じていた。
初配信においては機材の扱いに慣れていなかったこともあり、マイク入力の状態に気づかず配信前のひとり言を全員に聞かせてしまうというトラブルに見舞われた。また、配信の最中にはYouTubeのエンコーディングが不調となり、音声や画像の途切れが頻発するなど、不憫な事態に陥っていた。
しかし、そのような状態にあっても力作の自主制作アニメーションを公開し、その独特な世界観をもって見事に視聴者の心を掴み取っていた。自己紹介においても、マイペースで不思議な調子を発揮しつつ、伝えたい感情や意志を一生懸命に語る姿はとても素敵なものだったと思う。
時に後ろ向きな感情を見せるものの、それが言い訳や逃げではなく自身の才を物にするためのきっかけ、原動力となっていることは素晴らしい。ゆったりふわふわとした口調とは裏腹に、芯の強さを感じさせるライバーだと言えるだろう。
彼女もにじさんじへの加入に際し、配信のための機材を揃えたようだ。少なくともYouTube環境での配信は未経験であるため、ソフトウェアの設定等でまだ戸惑うことは多いだろう。配信頻度は多いようなので、今後の活動で段々と慣れていってくれれば幸いだ。
未経験者のプロデュース体制
今回デビューしたライバーはどちらも配信未経験者である。空星きらめも金魚坂めいろも、これまでライブ配信に適した環境を持っておらず、デビューに際して初めて機材を購入している。
にじさんじもそうだが、現在のバーチャルYouTuber界隈は、既存のライブ配信者を前提に商業配信者として拾い上げる傾向が強まってきている。経験者の方がデビュー後の活躍やトラブルへの適切な対応を期待できる、というのはある種無難な判断である。活動実績があることで、採用の評定を行いやすいという面もある。
そんな中での未経験者デビューはかなり意外なものである。ライバー自身にとっても、配信環境を作るための初期投資が必要になるわけで、比較的ハードルの高いところから出てきたという印象は強い。
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