実際に切り抜き動画を投稿してわかった抜粋系コンテンツの特徴
僕はこのところYouTubeでの活動が活発になっている。といっても、noteコラムのような独自のコンテンツではなく、他のYouTube配信者を題材にした二次創作的な活動なのだが。
5月の半ばから2週間ほどの期間をかけて、にじさんじ所属のライバーが配信した内容から、惹き込まれた部分を切り抜き動画にしてアップロードしている。今のところ、公開した動画へのアクセス数はまちまちであり、わざわざ探さない限りは目に触れないレベルでしか浮上してこない。100以上の切り抜き動画を上げているようなチャンネルとはかなり視点の異なる立場である。
しかしながら、この短期間の零細な活動でも当事者として様々なことが見えてくるようになった。そこで今回は、動画を上げる立場から切り抜き動画について論じていこうと思う。当然のことだが、これは一個人の言葉に過ぎないし、また活動に捧げる熱量も異なるので、全体論としては捉えないで欲しい。
1.ライバーに対する印象の持ち方と動画スタンス
切り抜き動画をアップロードするには、ライバーの配信内容から動画を製作する必要がある。勿論、動画屋として素人の僕が全然知らないライバーの配信から見どころを取り出すなんてことはできない。そこで、初めて投稿する動画では、作業がてら視聴することの多い天宮こころの配信から、僕自身が面白いと思った最近の一幕を選ぶことにした。
ちーちゃんこと勇気ちひろとのコラボでAPEXをプレイする天宮こころ。息の合った動きで終盤の攻勢を仕掛け見事にチャンピオンを勝ち取る姿は、シーンを選ぶ前から印象に強く残っていた。また、FPSが強い勇気ちひろというイメージにも違和感がないため、注釈なくすっきりと伝わる内容になるという自信があった。公開後の反響から見ても、その意図はある程度実を結んだのではないかと思う。
この一連の流れを作ったのは、日頃から抱いているライバーへの印象から生じる『イメージ通りの姿』である。配信を見て雰囲気を掴んでいた天宮こころに対しては、
「こういった内容にすると魅力が伝わるのではないか」
「こういう一面を動画にして伝えたい」
といったことがすぐに湧いてきたし、逆に避けたい内容もすぐに思い浮かべられた。しかし、以降の切り抜き動画では視聴頻度が少なく雰囲気や傾向を掴み損ねているライバーを題材としたことで、求められる内容としても伝えたい内容としても中途半端に終わってしまった。課題として直していきたい部分ではあるが、一方で限界があるとも思う。
今回の体験を踏まえると、切り抜き動画の内容というのは投稿者視点のライバー観を少なからず反映したものであるということが言えるだろう。肯定的なものだけでなく、問題発言を切り取ったり悪意を前面に立てるような内容のものも、基本的には『ライバーはこういうもの』という価値観のもとでき上がっている。
良質で魅力あるものを作ろうとすれば、それだけ自分の中に確固たるイメージを築かなければ難しい。また、投稿者のイメージが視聴者とかけ離れてしまっても反感や無関心に繋がってしまい、『ライバーの魅力を伝える』という切り抜きの意図を満たすものではなくなってしまう。情熱をもって切り抜きを投稿する上では、そういった匙加減も考えていくことが重要である。
2.人間は長尺のコンテンツを黙って見られない
動画の尺を色々と変えながら投稿した中でわかったのは、1つの内容を取り上げる動画において、維持率を高く保てるのは2分から3分程度ということである。動画の編集の質にかかわらず、僕の活動の中で数分台の壁を超えることはできなかった。
このことからわかるのは、同じテーマで長尺を引っ張るよりも、簡潔かつ短い尺で1つの話題を提供する方が、視聴者にとって都合が良いということである。様々なネタを摘まんだまとめ動画なら別かもしれないが、基本的には数分で事態が呑み込める内容であってほしい。そうした要求が視聴者の維持状況にもよく現れている。
これはある意味、「ライバーの生配信なら何時間と見ていられるのに、アーカイブを後で見るとなると飛ばし気味になる」という現象とも似ているかもしれない。
実際に視聴してみるとわかるだろうが、生放送のアーカイブは思っている以上に冗長的なものである。たとえライバーがスピード感のあるゲームをプレイしていても、そこに挟まれる会話の間や無言のタイミングがとてももどかしく感じられる。
また、企画の内容や配信者の気の持ちようによっては、配信自体が6時間超にも及ぶこともざらである。そのため、追っているライバーの傾向によっては、アーカイブを通しで見ること自体が困難になっている場合もある。
とはいえ、ファンとして好きなライバーの話題や情報を拾おうとする以上、配信の視聴を避けるわけにもいかない。倍速機能やシークバー、コメントの時間指定を頼りにしながら、自分で見どころをピックアップしていく再生方法となるのは必然と言えるだろう。それでもなお相当の時間を費やさなければならないわけで、このやり方でファンを続けるのはなかなかに厳しいものがある。
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