見出し画像

2025年のにじさんじを予想する

大きな節目となった2024年

 年の瀬を迎え、いよいよ2025年に入る。
 今年はにじさんじ、ひいてはAnyColorにとって大きな変化の年だった。1つの上場企業として、良くも悪くもこれまで以上の注目を集める中で難しい立ち回りを求められる場面は少なくなかっただろうと思う。また、ライバーそれぞれにとっても活動の節目や転機となるような出来事が多かった。

 ファンやリスナーの立場からとりわけ注目していたこととしては、黎明期からにじさんじを支えてきた一期生のライバー数名が卒業を迎えたことだろう。
 これまで統合後のライバーなどが、自身の道や活動方針を尊重し卒業することはあったが、一期生は何だかんだで残るだろうという感触があった。受け取り手の側から見れば一種の安心感があったと言える。が、それは捉え方を変えれば、彼ら自身の意思に関係なく卒業しづらい空気が醸成されていたということでもあるだろう。
 今年に入って卒業を決意するに至ったということは、そういったしがらみの部分が薄まり、自分らしい活動や社会生活を選択する余地ができてきたと見ることができる。勿論、彼らがにじさんじのライバーでなくなることは寂しいことではあるし、にじさんじという箱そのものの変化を肌に感じる出来事ではある。だが、最初期のデビューだからという理由で縛り付けられてしまう体質ではない方が、事務所や組織としては健全なあり方だ。そういう点では、にじさんじ自体にそれなりの余裕が生まれてきたのだろう。

 もう一つの変化としては、にじさんじの収益戦略がこれまでの配信に依存した形からグッズやイベントに比重を大きく取る形になったことだろう。ライバーそれぞれの単独イベントやユニットでのライブ、特定のコンセプトを定めてデザインされたグッズの展開、複数のライバーを巻き込んだオリジナル楽曲のリリースなど、配信プラットフォームに収益を依存しない方法で経営を成り立たせる形へとシフトしつつある。

 また、収録環境の一新によって、これまで以上に事前収録型のコンテンツを発信しやすくしている点も、注目に値する部分だろう。3Dのキャプチャーについては、新スタジオへの移行が行われたことでより大人数や広いエリアでの収録が可能になった。定例のお披露目配信だけでなく、配信型のライブパフォーマンスやバラエティ番組のような収録も行いやすくなったことは、にじさんじが事業を展開していく上でも大きな意味を持つ。独自に番組を作り、インターネットやマスメディアを通してコンテンツを出していく能力を持つことは、ライバーが配信業という一つの形態で行き詰まらず、自身の魅力なり成果なりを自由な形で表に出していく可能性を広げることにも役立つだろう。

 こういった変化があった2024年を踏まえて、来年以降のにじさんじがどのような展開を迎えていくのか、個人的に予想していこう。

新たなライバーの投入

 まず最初に考えていきたいのは、おそらく年明けの早い段階で行われると思われる新ライバーの発表だ。

 にじさんじのライバーは、かつてオーディション形式で新規人材を獲得していたが、現在はVTAという教習段階を一つ挟む形にシフトしている。そのうち、未経験者枠として採用されたVTA生は以前なら一般公開の形でライブ配信を経験していた。また、当初はRanunculusVOLTACTIONのように、VTAで活動していた時と同じ名義を基本的に継承していた。2024年に入ってからのデビューにおいては、こういった部分のこだわりはなくなっており、非公開の形式でカリキュラムが行われているようだ。
 VTAのカリキュラムの一部を公開形式としていた部分については、利点よりも問題やリスクの方が大きかったと言えるが、VTAを通して見知った人物がデビューするという流れに感慨を得る層がいたことを考えると、少し勿体ないようにも思う。難しいとは思うが、今後も何らかの形でVTAの活動をリスナーが知る機会を作ってほしいものである。
 そういうわけで、2024年までは公開方式のカリキュラムを経験したライバーがいたが、今後は非公開の新カリキュラムを経験した候補生達がライバーとしてデビューしてくる。早ければ、2025年の第一期からの登場となるだろう。

 また、ライバーの需要として求められているものを考えると、デビューの時点でそれなりに通用する一芸を身につけている可能性はある。ライバーとしての特徴を覚えてもらうという意味で、自身の特技や趣味を初配信で披露するという流れは以前からあるが、今後はにじさんじのコンテンツ展開の広がりを活かしたプロデュースが積極的に行われると予想される。
 たとえば、ハンドメイドが特技のライバーがデビューした場合は、早い段階から作品のファングッズ化を意識したプロデュースが行われるだろうし、歌や演奏に魅力のあるライバーであれば、オリジナル楽曲のリリースやイベントへの参加に向けて積極的な働きかけが行われることが考えられる。
 さらに言えば、デビューするグループ自体にも明確な色を乗せてくるのではないかと思う。2023年、2024年とコンセプトを明確にした同期グループをデビューさせ成果を上げていることを踏まえれば、来年もこの路線は継続していくことになるだろう。そこにライバーの得意分野を重ねていくことで、リスナーに対して、
「このライバーはこういうことができる人なんだ」
というわかりやすいイメージを定着させるように図るのではないかと見ている。

 デビューの前段階から新人を育てていく方法を採ったことによって、にじさんじのプロデュース戦略はライバーの基礎能力を踏まえたものになってきている。自身のチャンネルを伸ばしたり視聴者を獲得していくところは個人に委ねられているものの、スタートアップについてはそれなりに指導やサポートが入っていると見ていい。2025年は、この傾向がより具体的な方向をもって強化されていくことになるだろう。

ライバーを主役にした大型イベントの展開

 既存ライバーを中心にしたプロデュース戦略としては、やはり通常配信外への案件展開が重点的になっていくだろうと考えられる。

 配信という場所を基本に活動しているライバーではあるが、各々のやりたいことや実現したいことに対して、自宅や作業場からの配信という形式に大きな制約が生じていることは否定できない。また、3Dモデルを使った配信についても、スタジオでの収録でないとトラッキングの精細さや行動範囲の確保が難しいため、そこまで盛んではないというのが実態となっている。
 ただ、スタジオの機材を利用するということは、それ自体に相応のコストがかかってくる上、多数いるライバー同士でスケジュールを取り合うことになるため、個人の都合通りの利用というのは難しい。そうなると、他の企業とのタイアップ案件であったり、にじさんじが公式で展開するイベントや番組であったりといった機会を通して、ライバー自身の要望を叶えていくというのが多くなってくるだろう。
 今年の後半にスタジオが新しくなり、より広く行動範囲を取れるようになったことで、事務所としてもイベントやゲームやトーク以外の企画を立てやすい環境が整いつつある。そのため、ライバーからの要望を汲み取ったりもしながら、 運動やダンスなどの要素を含んだ番組・イベントが今後幾つか展開されていくことになるのではないかと見ている。

 ライバー個人を主役に据えたライブイベントについても、これまで以上に多くなってくることが予想される。
 3Dモデルを受け取っているライバーが、自身のオリジナル曲やアルバムを引っ提げてライブを行うこと自体は既に行われているが、ここまで数が増えてくると単独のもの以外も開催しやすくなってくるだろう。同期グループという括りだけでなく、例えば季節や色彩といったライブテーマを定めて、そこに似合う何人かのライバーが参加する形でイベントを行うことも視野に入ってくるのではないかと思う。この場合、にじさんじには今まで以上の企画センスやイベントの運営能力が問われることとなるだろう。
 また、歌や踊りといったものだけでなく、他ジャンルでのライブイベントが企画されていくことも考えられる。例えば演劇や朗読劇であったり、クイズ番組であったり、あるいは恒例となっているゲームの大会であったり。そういった企画が、今後は現実世界の会場を借りたイベントとして開催される可能性もある。今の時点では様々な課題があるだろうが、ライバーがそういった方面でもイベントをやりたいとなれば、十分に実現しうるものだ。

大人数のゲームプレイ企画の開催

 今年に引き続いて行われそうな企画としては、ARKやRUST、GTAなどのように、大勢が参加して自由に遊べるようなサーバー制のゲーム企画がある。

 過去に一度以上行われているものについては、当然ライバー自身にもそれなりの意欲がある筈なので、再び開催される可能性は高いだろう。また、にじさんじ以外が運営している企画にライバーが参加する機会も少なからずあるので、そういったところからゲームの面白さが伝わり、にじさんじ内でもやりたいという声が上がってくる場合も考えられる。
 サンドボックス要素を大きく含むゲームについては、現状海外のタイトルがほとんどということもあって、ライバー個人でどうこうしようというのは難しい場合が多い。勿論、当初のMinecraftサーバーを管理していたドーラや、ARKのサーバーを立ち上げて企画を行った本間ひまわりのような例はあるが、参加者が100人単位となってくると自腹で工面しようというのはなかなかに困難な話だろう。事務所側が運営側となって対応するということであれば、おそらくは年2~3回ほどが限度となってくると思われる。その他、有志の数人を集めてのサーバー企画は幾らかあるだろうが、デビュー時期もジャンルも関係なく参加するような企画については、2025年も数回程度の頻度で開催されるのではないかと見ている。リスナーにとっては睡眠時間すら惜しい、嬉しくも大変な時間がまた訪れることになるだろう。

 また、流行りのゲームタイトルが出現した場合には、ライバー達がこぞって興味を持ちプレイし出す可能性がある。多人数のマルチプレイが可能なものであれば、有志の呼びかけでにじさんじサーバーが設置されたり、大会が開かれることもあるだろう。来年、爆発的に流行りそうな気配のあるタイトルについては、とりあえず気にかけておいて損はない。

良き一年にならんことを

 ここまでつらつらと書き連ねてきたが、『2024年の路線を一層拡大していく可能性が高い』というのが僕個人の見解だ。
 ここには取り上げなかったものの、必ずしも良い部分ばかりが表に出ていたわけではないし、新型コロナなどの影響でライバーが体調を崩す状況が少なからず発生していたりと、心配になる場面があったことは否定できない。それもまたにじさんじの実態ではあるし、蔑ろにしてほしくはないと考えている。ただ、あくまでそれは組織自身が状況を分析し、反省を持って次の行動を決めるべき話であって、こちらがああだこうだと触れることではないだろう。
 そうしたややこしい部分はさておいた上で考えると、2024年のにじさんじが取り組んできたこと自体は全体としてプラスに働いていたと思う。ライブイベントにせよ、新人の投入にせよ、おおよそ安定的なものであったと言える。ゆえに、ここでまた方向を転じる必要はないだろうし、傾向の強め方をどうするかはともかく、来年以降も継続してやっていくであろうことは間違いない。

 VTuberというジャンルが現れ、一般の衆目にも留まる存在となってきた一方で、配信業そのものについては若干の不安材料がちらつき出している。表現の自由やコンプライアンスだけでなく、収益面においてもプラットフォームの胸先三寸という点は依然として変わらない。世の中の風向きが変わってくるにつれて、今後はVTuberに限らず配信界隈で身構えるべき事態が何度か起こり得ることだろう。
 そういった情勢の中で、にじさんじという巨大な事務所の舵取りは一層難しいものとなっていく。現状を安定として捉えることなく、ライバー達と共に新しい技術や表現の開拓へと取り組んでいってほしいものである。

 これをもって、今年最後の記事とさせていただきたい。皆様良いお年を。

いいなと思ったら応援しよう!

deagletworks
記事を読んでご興味を持たれた方は、サポートいただけると幸いです。deagletworksの執筆・調査活動の資金に充てさせていただきます。