Restore Restaurant
「さて、この、六角ボルトのグリスオイル和えペペロンチーノ
を頂こうか?君は何がいい?」
「そうね、私は、真鍮のシンナーミックスフォンデュにするわ」
「君もなかなか面白い思索であるな」
「そうかしら?あなたは何だってそそられるんでしょ?」
「浮気のようなことは勘弁したいものだね」
二人は手元に並べられたマイナスドライバーと六角レンチ、ラジオペンチに目を向け、一枚のウェスをスッと膝にかける。
「浮気のようなこと?例えば私みたいにいろんなファッションをすることかしら?」
「いいや違う、作業着を汚さず使うようなものさ」
「私の戦闘服をバカにしてるのかしら?それともバーベキューでもはじめるの?」
「いくら僕でもカリカリのベーコンは勘弁しようじゃないか」
「あなたの発言ってアレよね、十得ナイフみたいよ」
「あいにくスイス生まれじゃあないよ」
「そんなのあなたの闘争心が物語ってるわ」
「君がどこで生まれか聞いたことはないが、ボヘミアあたりに居そうだね」
「あら、随分締まりのいい冗談ね」
「トルクが良かったかい?」
「ええ、ネジがバカになりかけたわ」
というのは、今、妻を目の前にしたこの無言の空間での勝手な妄想なんだけど…あっ…ネジが落ちている…妄想の痕跡だ。
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