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フルフロンタル写経 ※長文

セリフを文字に起こすという行為はインプットとアウトプットが同時に行えるので「気づき」が起こりやすいのでオススメの思考法。気になった所は太字にする。

『その光は大きく、そして、温かかった。宇宙要塞アクシズを包み込み地球への落下を防いだ光。人の意志の反応する金属。サイコフレームを媒介にしてあの戦場に居た人々、いや、全地球圏の人々の意志を集積した光。
まるでこの手に全ての人の体温が流れ込んで来るような、母に手を繋がれているような、溺れそうな安心感と充足。
あれからどれだけの時間が経ったのか。この手のひらに塗り込まれた温もりは失われて久しい。
光の届かない宇宙の深淵で冷え固まり、今では温もりを求めることさえしなくなった。
それもいい、あれ程の奇跡を目にしても人は変わらなかった。自らを人柱にして人類に贖罪を迫った男の声も露と消えた。状況は悪化し世界は停滞している。

 ニュータイプ、可能性はもう要らない。人は変わらないという現実に立ち返り、実際的な手段を持って世界と向き合うべきと来た。
変わらない、変わろうとしない者達にはそれにふさわしい閉塞した世界を、おかしなものだ。この生々しい、恨みがましいとさえ言える想念はしかし肉体から発せられたものではない。
あの豊かな光も宇宙の深淵の冷たさもこの身が知覚したという確かな実感はない。
 だが、感じる、思い出せる、器たる好みに注ぎ込まれた数々の恣意の中で一際強く凝った何者かの恣意、宿るべくして宿ったそれが周囲の人間の願望がシャアの再来の具現を促す。
そう、私が何者かは重要ではない。私をシャアの再来たらしめる歴史的な停滞と堕落が今の世界にはあるということだ。それを利用してみせようという欲も私にはない。
 器は何も望まずただ注がれた恣意の色に染まる。ラプラスの箱を手にして成すべきはなにか?決めるのは私ではなくこの地球圏に住まう100億あまりの人間達だ。

 愚民、愚かな民。シャア・アズナブルはかつて大衆をそのように規定した。そしてあの巨大な光に包まれた時自らもその愚民の一人でしかなかったことを悟って宇宙の深淵に消えていった。異論はない。
天才や決別は折々に現れ、ブッタやキリストのように世界の真理に触れるものも居よう。
だが、一人の天才が世界を変えた事例はない。一つの発明が世界を変えることはあるが
その発明を実現し普遍するためには、普通の人間達によって構成されるシステム。国家、企業の後押しが必要になる。その過程で発明の精神が捻じ曲げられることも少なくない。ブッタやキリストでさえ彼らが到達した心理を他者に伝える術は持たなかった。個人が到達した高みは個人のモノでしかない。人は自分の能力の範囲でしか物事を理解できない。

ニュータイプという思想、発見、或いは発明と言い換えてもいいが、それにしても国家に利用され言葉そのものが封殺されてきた過去を持つ。宇宙に進出した人類はその認識力を拡大させ誤解なく分かりあえるようになると唱えた思想があった。それこそ皮肉、人の限界を証明する恰好のケースだと言える。その皮肉に真正面から挑み自らも愚民であったと証明したシャアもまた然り。
有りもしない可能性を信じ世界に過分な期待をかけることがいかに虚しい行為であったことか。
 ならば、愚民には愚民の望む世界を与えればいい安定の代償に閉塞を感受するというならそのような未来を誘導するまでだ。それが器たる者の役目。

 だが、それだけではないと囁く声が聞こえるラプラスの箱の鍵。ユニコーンガンダムと見えて以来、器に注がれた恣意のざわめきが感じられる。「白い悪魔」とはよく言った。ガンダムは常に人を惑わせる。シャアにニュータイプの可能性を信じさせ虚しい戦いに引き込んだのはガンダムだった。
あの温かな光の媒介となった金属、サイコフレームで形作られたガンダム。そのパイロットの怒り、恐怖、嘆きが器をざわめかせる。
 ニュータイプの感応?否定はすまい。先の大戦の頃から”ニュータイプのほうが”と呼ぶべき存在は現れている。問題は彼らの能力は彼らのモノでしかなく、凡人には理解も知覚もできぬという事実だ。そして、それは年齢と共に色あせていく。若さが産む一過性の力、若気の至り、それが今現れているニュータイプだ。ジオン・ダイクンが提唱した真の”ニュータイプ”とは違う。幻でしかない可能性を示して人を惑わせる存在でしかないのに、何故こうも全身がざわめく。

アムロ、アルティシア、ララァ・スン。

遠い木霊のような声が器に凝った恣意を震わせる。震えているのは誰だ?シャア?人も世界も変わらぬと確かめた男が何故だ?
宇宙の深淵で冷え固まった手の平にまだあの光が残っているとでも?

まぁいい...
これも注がれた恣意の一つであるなら無視はできない。新しいガンダムのパイロット バナージ・リンクス。早く宙に帰って来たまえ、一度は繋いだ手だ。またこの手を差し出すのも吝かでない。或いは君を取り込むことで私は完成するのかもしれない。
遠い木霊のような声達を聞き続けるのは辛い。実感を伴わぬ記憶であっても失った痛みは思い出せるのだから。』


 気づいたこと、宇宙という部分をネットと置き換えてみようか

 次はサイド共栄圏に対するフロンタルの思想。
フルフロンタル サイド共栄圏構想
「私たちスペースノイドが欲しているのは、まず自治権の確立です。連邦は決してこれを認めません。認めた瞬間に、主従が逆転してしまうことを知っているからです。理由は明白です。現在の地球圏の生活はエネルギーも食料も、経済活動そのものも、7つのサイドと月があるからこそ回っている。地球という惑星単体では、もはや20億の口も賄えないのが実情です。対してスペースノイドは、地球を切り離しても充分に自活することができる。
ジオン・ダイクンは、この事実こそ武器にするべきでした。しかし彼は優れた思想家ではあっても政治家ではなかった。ジオンの理念をねじ曲げ、独立戦争に利用したザビ家にしても、二度にわたるネオ・ジオン戦争にしても同様です。
自分たちの存在を認めさせるという発想を捨てない限り、連邦との戦いに勝利は無い。月と7つのサイドの連携を強化し、中央を間引きした経済圏を確立する。すなわち、サイド共栄圏の建設。
各サイドが経済協定を結び、地球を排斥すれば、地球は経済的に何の価値もない、田舎になり果てる。連邦政府も立ち行かなくなるでしょう。
そのまとめ役たり得るのは、唯一、ジオン共和国だけです。連邦の傀儡とはいえ、あそこには曲がりなりにも認められた自治権がある。
問題は、その自治権返還期限が4年後に迫っているということです。共和国が元のサイド3に戻り、地方自治体以上の活動は許されぬとなったら、サイド共栄圏へ至る流れも生まれなくなる」

ミネバ 「そんな時に届いたのが、『ラプラスの箱』を譲渡するという、ビスト財団からの申し出だったというわけか」

フロンタル 「はい。カーディアス・ビストが我々の計画を知っていたとは思えませんが、時期的に見て、共和国の解体で連邦体制が硬直するのを嫌ってのことだったのでしょう。共和国解体に合わせて、連邦がジオン根絶を期しているのは、周知の事実です。ニュータイプ神話の破壊装置――ユニコーンガンダムが体現する通り」

ミネバ 「大佐が『箱』を使って手に入れようとしているのは"時間"……。連邦を脅し、共和国の解体を引き延ばした上で、サイド共栄圏とやらを作る暇を稼ごうというわけだ」

フロンタル 「おっしゃる通りです」

ミネバ 「……聞いてしまえば、つまらぬ話だ」
「連邦を蚊帳の外に置いたサイド共栄圏の構築。変わろうとしない者に変われと要求するより、無視してしまえばいいという、人類の革新を夢見たジオン・ダイクンの理想からは遠い。地球を人の住めない星にして、人類を残らず宇宙(そら)へ上げようとしたシャアの狂気、熱情からも程遠い……」
「お前は本当にそれでいいのか? お前の言うサイド共栄圏が実現した時、アースノイドは地球の再開発を加速させるだろう。自分たちだけで経済を賄うために。それは西暦の時代の再現だ。貧困の中で育つことになる新しい世代が、やがてスペースノイドへの仕返しを目論むことだってあるかも知れない。かつてジオンが一年戦争を引き起こしたように、調和も革新もなく、弱者と強者が立場を入れ替えながら続く未来。再び人の前に立つと決めた男が、そんなことで……」

フロンタル 「姫様の気持ちはお察しします。
いい悪いという問題ではありません。それが人の世だということです。
器は、考えることはしません。注がれた人の総意に従って行動するだけです。全人類を生かし続けるために」

バナージ 「……なんだか、他人事みたいだ。自分たちの今後を語っているのに、あなたの言葉には他人事みたいな冷たさを感じる。ユニコーンガンダムを包み込んだあの光。あれは、温かかった……。おれが知ってるみんなの思いが重なりあったような……。あんな可能性が、人にあるのなら……」

フロンタル 「同じ光を、私も見た。もっと大きな光をだ。サイコフレームを媒介に、おそらくは地球圏の全人類の無意識を集積・物理的パワーに転化したのであろう光。小惑星アクシズを押し返したサイコ・フィールド
だが、それほどの可能性が示されても、人は変わらなかった。現状を維持するためなら、可能性さえ葬る。それが人間だ。我々はその現実の中で、平和と安定を模索してゆくしかない。君が言う可能性というやつは、争いを引き起こす毒になることもあると自覚した方がいい。

 このサイド共栄圏構想は今現在東京一極集中となった日本の問題を解決できるかもしれない一つの知恵かもしれない。
「中央を間引きした経済圏を確立する。」 

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