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普通かどうかではなく相性の話【たゆたうアンノウン】

とりあえず、カメラワークがなんだか新鮮。そして、最新の『こぽぽ水中』を現地で見たこともあり、セットや舞台の規模がかなりこの後3年ほどで大規模になっていったのだなあと、かなり感慨深かった。

2024/5/8(水)18:00〜
【再配信】ロングコートダディ単独ライブ「たゆたうアンノウン」

再配信で観た。元の単独ライブは2020年に開催されたみたい。当時は延期された上に、時間短縮までされてしまったライブだったらしい。チケット当たっていたら暴れ散らかしていたし、当たっていなくとも短縮にモヤモヤしていただろうな。ご時世だなあ。そんな時代もあったねと。

そのあと、堂前さんのnoteを購入して読んだ。ロングコートダディの単独を観るなら、そのあとの堂前さんのnoteも必須だ。

わたしは、何かの作品を観た時、そうでなくても何かの反応であったり言動があった時に、どういう原理が働いてそうなったのかが気になる。それが好きなロングコートダディの作品となれば尚更だ。

堂前さんがつくる世界観は、やさしくて壮大だ。お笑い、にとどまらないものだと思う。だから余計に知りたくなる。どうしたらこんなにすごいものを生み出せるの?どういう想いがあったの?

すべては語られていないけれど、でもその一部を窺い知れるこのnoteはとても価値のあるものだと思う。

ロングコートダディのコントを観ると、二重の気持ちがわいてくる。ひとつ目は、共感。自分の状況と重なるな、そういう時ある、というかまさにそうなの!という感情。ふたつ目は、堂前さんこんな思いしてきたのかな、もしそうだったらつらいな、しんどいな、という感情。

それぞれのコントや合間のVTRについて触れていく。


密葬

夫(兎)の葬儀で妻(堂前)が喪主として話す内容。夫は生前『密』が好きだと言っていたという。コロナ禍ならではの時事?コント。

・兎さんは四角い銀縁メガネが似合う
・堂前さんの女装はなぜだか色気がある
・好きなフレーズ
  …『蜜がすきなんだ』
  …『大密』
  …『密が見てえな 密がしてえな』
・密に関連して『ぶどう』や『海外の電車の写真』の大喜利をしていたのが好き
・神輿で60分、60分間のお付き合いをお願いします、でオトし単独が始まるのがとてもおしゃれ

ロングコートダディの単独では必ず『死』に関連したネタがあるなと思う。わたしはそれに最初衝撃を受けた。初めて見たのが『じごくトニック』。表題コントでは登場人物が自殺する。

本格的にお笑いを好きになって、ネタまで追うようになったのがロングコートダディが初めて。それまでコントを見る機会といったらネタ番組くらい。テレビでやるくらいだから、ポップで分かりやすいものが多い。そして有名どころしか見ていなかったし、どのネタが好きとかもなかった。

だから、あぁお笑いってコントってこういうのもありなんだ、と思った。衝撃を受けた。堂前さんの感性についてもっと知りたくなった。ロングコートダディにより興味が湧いた。

それと同時に、『死』というものをコントとしてお笑いとして扱ってもらえているのがうれしかった。死にたい気持ちは基本的に誰にも話せない。重すぎるし、心配されたいわけでも同情されたいわけでもないから。けど、確実に心の中にあって、そしてずっしりと鎮座している。

そんな気持ちを、重々しくもなく、でも確実に扱ってもらっていて、うれしかった。なんだか信用できる気がすると思った。普段思っていなくても、何かのとっかかりがないとそういうネタは書けないと思う。だから、すこし近しいものを感じたのかな。

OPV

揺らしているたまごの模様は『たゆたう』を意識しているのかな。
毎度、ポスターの絵が天才的すぎる。毎回まったく異なるテイストの絵柄なのもすごいなと思う。どういうところからインスピレーションを受けているのだろう。

相性の話

店に寿司を食べにいくと思っている誕生日の男1(堂前)と、魚を自分で釣って寿司にすると思っていてサプライズでプレゼントを用意していた男2(兎)のすれ違いを描くコント。

表題コントの次に好き。すれ違いすぎて泣き出してしまう男2(兎)がいう、『何考えてるか分からん時あるな』は堂前さんが実際言われたことある言葉か?と思った。

あきらかに男2(兎)の発想が狂っているのだが、男1(堂前)は、ごめんねというだけで全然否定しない。その優しさになんだか泣きそうになる。男2のおかしさや、兎さんのコミカルな動きや表情はおもしろすぎる。なのに、なんだか切なくもなる。もっと怒っていいよ。

でも、男2にも悪気がないからタチ悪いんだよね。よかれと思っているから。普段の2人の関係性にもかなり近いなと思うし、堂前さんは普段から否定しないなと思う。堂前さんの柔らかい雰囲気はそういうところに起因する気がする。

宣材写真V

ロングコートダディの遠近感ある宣材写真、好きだ。
今もたまに使われるけど、公式は変わってる。

肩をくっつけているから横にいるはずなのに、遠近感がすごい。さすがに堂前さんの顔が小さすぎる。毎回のように驚くほどのスタイルのよさ。ジュースごくごく倶楽部のときは、ハットをかぶってサングラスをしているからか、余計に小さく見える。

堂前さんの画像加工Vは『こぽぽ水中』でもあった。変な加工をして当たり前のように出す堂前さんと、なんだか白々しい兎さんの音声がいい。

お家でまったり

美容室でカット中に、エプロンをかけたまま家に帰ってしまった客(兎)を美容師(堂前)が迎えに来るというコント。

これは最初、お酒を飲みながらだらだら見ていたせいか、どういう設定なのかよく分からなかった。そのままスピーディーに終わってしまった。2回目以降観たらおもしろすぎる。兎さんならワンチャンありそうなのがさらにツボ。

業績発表

業績発表をするのだが、その名前の読み上げを独特のあだ名でしていく。あだ名は業績発表を読み上げる上司(堂前)がつけたもの。部下(兎)はそれを聞いている。

はなからあだ名をつけてしまえば、陰で変なあだ名で呼ばれることもないだろうという理屈。やり方やそのあだ名は変かもしれないけど、でもなんだか愉快で考えている上司。もしかしたら、たゆたうアンノウンの不憫で人を信じられなくなってしまった大家の息子への伏線みたいなところもあるのかな?影で何か言われてるかも、と思わなくて済むような環境があったらいいなという。

他の社員のあだ名案はすぐに出てくるのに、部下(兎)の案だけなかなか出てこない。出てきたのが『仕事でき男』『エピソードなし男』ストレートすぎて逆におもしろい。兎さんが発した『まあ仕事できますけど』で笑いが起こったのが気持ちよかった。

最終的に決定したあだ名は『うんこマン』。嫌がるそぶりも見せず受け入れているのがおもしろい。たゆたうアンノウンでも『うんこ漏らしたんだよな』とうんこが出てくる。うんこが出てくるて。ややこしい。これを作った時の堂前さんの頭にはうんこがこびりついていたのか。結局シンプルがいちばんおもしろい説がある。

マユリカV

マユリカの顔面が画面上を縦横無尽に動き、2人の顔が近づいた時に漫才音声が流れる。漫才はロコモコ(?)

ロングコートダディのVにはお馴染みになっているマユリカ。なぜか顔だけで笑ってしまう。マユリカが何かをさせられていたり、使われているのが異様におもしろい。特に堂前さんはマユリカの名プロデューサーだ。

たゆたうアンノウン

大家の息子(堂前)が滞納されている家賃をソウマ(兎)の家まで徴収しに行く。すんなり払わず家に招き入れ、そこで2人は話をする。人間不信となり会社を辞めニートをしている息子は、楽しい想像をするのが得意なソウマに心を開いていく。

なるほどと思った。今まで公演を観ておらず、分からなかったタイトルの意味がようやく分かった。これはよくある、というか日常だ。日々、アンノウンな感情がたゆたっている。たゆたっていないときがあろうか、いやなかろう。という反語のお手本のようなもの。

なんだかほんとうに、日常の絶妙な感情の揺れを描くのがとてつもなく上手だなと思う。

大家のお母さんは、ソウマさんが空想したアンちゃんもお金見えている。ということは、お母さんは割と楽観的な方なのかな?と思った。

兎(ソウマ)さんのまっすぐな『うんこ漏らしたんだよな』が思わず笑ってしまう。本公演2うんこ目。

『わたしは家賃を払うのが嫌いです』『わたしは家賃を払いたくありません』あえて棒読みの目の焦点があっていないようなセリフ。清々しいほどの純粋さはおもしろくて笑ってしまう。

わたしだって払いたくないし嫌いだよ。ソウマさんみたいに『おれもお小遣いほしいよ〜』ってだだこねたい。兎さんのだだこねかわいすぎる。まるまる太った大の大人のだだ。日頃みんな思ってはいるけど大人だから言わないことを、言ってくれる気持ちよさがある。

『30になって仕事もしてないの?』これはなんか30という区切りで何かどうまえさん的に思うことがあったのかな?とか思った。他にも大学は行っておいた方がいいとかのセリフもあった。周りからの見え方ってどうにも気にせざるをえないよね。言ってくる人もいるし。

ソウマさんが描いたとされる絵が出てくる。それが、キャンバスの端に丸い何かがふたつ並んでいるというもの。ここでも2連という言葉が出てくる。宣材Vでは兎さんのほくろが2連だという話をしていた。2連の絵はほくろからきてる?

自分のせいじゃないミスが自分のせいにされた。みんなとの間に見えない溝みたいなものができた。もしかしたらずっと嫌われていたのかもしれない。周りの人全員悪者みたいに見えて、それ以来人と関わるのが嫌で。

わかる、、わかりすぎる、、。そしてニートをしている息子。わたしもまさにそんなような経験を学生時代にしたし、仕事辞めたいのはずっとだし。

ソウマさんは楽観的で、そのミスがあったからこそプロジェクトが成功したんだからいいじゃんというようなことをいう。悪い方もいい方も、どちらも想像なんだから好きな方にすればいいじゃん、と。

いや、問題から提案まで、まさにわたしの課題なんだよなと思った。もしかしたらこうかもと思ったら悪い想像が止まらなくて、人と関わるのが怖い。で、どんどん悪い方にばかり考えて、何も信じられなくなる。

ふと少し冷静になると、起きてもいないことも不安視している。悪くなる方のことは強く信じているのに、いい方のことは考えられていないことに気づく。なぜなんだろうね。もう思考の癖としか言いようがないんだけどな。

でも、ロングコートダディのいいところは、そうやって言われていても嫌な気持ちにならないところ。ポジティブな意見を言われると、反発する気持ちが出る。でもこの2人が演じるコントの中で言われていると、不思議とスッと心に入ってくるんだよな。堂前さんが当事者意識があるからだろうか。

兎さんが歌う『ねんどテクノ』よかったなあ。最近『サイバーネオアーム』というコントを見た時にも、兎さんオリジナルソングが流れていた。そして大ウケしていた。兎さんの声質とマンキンの歌いっぷりがおもしろい。

ただ言葉で勇気づけるだけじゃなくて、ねんどやろうと行動でも寄り添ってくれて、そうか、だから心に染みるんだな。なんかもうねんど誘ってくれるだけで泣けるよ。純粋な優しさが。

ソウマさんの想像ドッグアンちゃんがずっと見えなかったのに、ソウマさん家を出る時には見えるようになっている。『なんでここにいるってわかったんだろう』という相馬さんのセリフで泣いた。

エンディングでは、2人で鍋囲んですき焼きをする。アンちゃんが見えたのもそうだけど、すき焼きはかなりの高度な空想ではないか?

もう、悪い方ばかりじゃなく楽しい空想ができるようになったんだね。そう思ったらボロボロ泣いた。うじうじせず、すぐに切り替えて就職までした息子、偉すぎるよ。

EDV

スペシャルサンクスの『マユリカ』の文字が異様にでかすぎた。かわいがられるマユリカかわいい。



おれの中の嵐が『こんな好きな人に 出逢う季節二度とない』って歌ってる。本当にそうだし、好きどころか生かされてるなあと思う日々。

↑酔っ払って初見のときに書いてた。言い方がキモいけど、でも本当にそう。ロングコートダディに出会っていなかったら今頃どうなっていたかわからないというほどに救われている。

もっと早く出会えていたらな、と思う。でも、それだけしんどい時期だったから出会えたのだと思う。最初に出会ったのが『じごくトニック』。まさにじごくの中にいた。

でも逆に言えば、そこまで生きたから出会えたのだ。諦めてしんでいたらこんな素晴らしい人たちに出会うことも、たゆたうアンノウンを観ることもできなかった。そう考えれば少しはナイスを自分に出せる。

ロングコートダディのコント、堂前さんが書くネタの大好きな理由のひとつ、感情に名前がつけられるということ。これからアンノウンただよってんな〜と頭をよぎることがあると思う。

もやっとして、じめじめして、自分だけなのでは?と思っていた感情を作品化してもらえるのは嬉しい。

励まされたくも、啓発されたくも、同情されたくもない。そういう捻くれた気持ちがわたしにはある。それを満たしつつも前を向かせてくれるのがロングコートダディの単独だ。

音楽も含めて、ロングコートダディの世界観を見ている時だけは心に愛が溢れる。心があったかくなる。まだ自分にもそういう感情があるんだと安心もする。登場人物みーんな愛おしい。

どうしたらこんなに素晴らしいものが描けるのか。元々の素質なのか、育ってきた環境なのか。何を見て何を感じているのか。常々気になって仕方ない。いつか少しでも手の内を明かしてくれることがあったらいいな。

今回の再配信期間で唯一観たことがない講演だったので、本当に再配信してもらえてありがたかった。素材があるのなら、全て詰め込んだ円盤をいつの日か出してもらえることを期待したい。できたらそれ以前のものも観られる機会があったらいいのにな。

単独、永遠なれ。そこはソウマさんを見習っていい想像をしておく。

『目が見えなくとも 姿形色が分かる
ようなことを探し求め』


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うに
まさかそんな高尚なことが行われるわけがないと思い込ませていただきながら活動をしています。