Sammyが見た景色
私は映画ボヘミアンラプソディを通じてQueenを知った
映画館へ通い、音楽を聴き、彼らのインタビューに触れる過程で、特に惹かれたものがある。ジョンとフレディの関係だ
惹かれたからには少しでも知ろうと思い立ち、ジョンについて調べた。そこで私は看過できない事実を知った。彼は自分に楽器を贈ってくれた父親を、11歳で亡くした。学校の仲間とバンド活動を始めたのは、そのころだったそうだ
多感な時期に父親を失った彼の支えが音楽だったとしたら、プロの音楽家としてやっていけるか、ためらう彼の背中を押したのは、フレディだったのではないだろうか
歌わないジョンは、フレディに歌ってほしくて作詞作曲をした。自分の曲はフレディの声で完成する。ミュージシャンとしての自分を見いだしたのは、フレディだった
私が書くまでもない周知の事実だが、内気で繊細な彼が、生き馬の目を抜くショウビジネスの世界で長いあいだ戦えたのは、そんな確信があったからだろう
一方で、舞台では大胆に振る舞うフレディにも、複雑で繊細なもうひとつの顔があった(こちらも周知の事実)
Queenを語るうえで頻出する「化学反応」という言葉を借りれば、ジョンとフレディの場合は、互いに持っている繊細さで化学反応を起こし、楽曲を作っていたのかもしれない。そう考えれば、作詞作曲するうえで必要不可欠だったフレディを亡くしたジョンがその後に音楽活動から退いたのは、ごく自然な結果だったと言える。(あんなに早く、あのような形でフレディとお別れを迎えたのは、想定外だったとは思う)
・・・と言いつつ、言葉少なに退いた彼について、以前は私もいろいろ勘繰っていた。センセーショナルな仮説まで立ててしまった。でも今はこんなふうに考えている。ジョンにとっては自然な選択だったのだと
いま、私はSpread your wingsを聴いている
内気なSammyは葛藤した末に勇気を出し、小さな翼を力いっぱい広げた。夢に見た景色に出会えたものの、想像以上に高く飛んでしまって、見たくないものまで目にしてしまったかもしれない。思った以上に翼を傷めてしまったのかもしれない
フレディを亡くしたジョンは、広げた翼をそっと閉じた
たくさんの羽根を私たちに残して。
But life still goes on.
ジョンさんが今、翼を休めておだやかに過ごせていますように