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「色彩楽」をご紹介
前回の記事では「自分を活かす色、癒す色」という本を紹介しました。今回はそのつづきとして、「色彩楽」というワークブックを紹介したいと思います。
はじめに
この本のサブタイトルは「色と心のワークブック」となっていて、本には「ヒーリング塗り絵」というのが載っています。
その塗り絵に色を塗ることで、その時の自分の心を観察できるようになっているのが、この本の特徴です。
また読み物としての「色彩学」についても書かれており、こちらもなかなか興味深い内容となっています。
今回も少し長文の紹介となっておりますが、よかったら読んでみてください。
自分と出会う塗り絵
この章にある塗り絵では、どこに何を塗ったかによって、自分でも気づかなかった感情や能力が発見できるようになっています。そこで私が実際に塗ってみたページを、少し紹介したいと思います。
こちらは「今日の気分はなに色?」というページです。「今日、あなたはどんな色のオーラを発しているでしょう?自由にぬってみて下さい」と書かれています。
最近塗ったものですが、暑さが続いているためか、少し疲れ気味とも感じられる色使いです。
本の後ろには、自分が塗った色についての解説が載っています。
それによると、人間の体は「生体エネルギー(オーラ)」とでもいうようなものを発しているそうです。好きに塗った色(選んだ色)は、案外オーラの色に近いのかもしれないと説明されています。
ちなみにオーラの色を、赤や黄色などの「暖色系」で塗った場合は、心のエネルギーが外に向かって流れ出していてアクティブな状態。逆に青や濃い緑など「クールな色」の場合は、心のエネルギーが内側に向かっていて、守りの気持ちが働いているのだそうです。
次は「心のドアに色をぬってみませんか」というページの、「家に入るドアはなに色?」を塗ったものです。
この時(20年ほど前)は、ドアをただ青く塗っています。
解説によると、青などのクールな色使いの場合は、慎重さが支配的とのこと。家に入るドアなので、プライベートな暮らしを楽しむ余裕がないことを表すそうです。
この頃を思い出してみると、いろいろなことにあまり余裕がなかったように思います。
色はもうひとつの言葉 ー色彩心理の基礎知識ー
この章では、それぞれの色がもつ意味や心との関係について、様々な例を挙げながら紹介されています。まずは「ピンク」の紹介から。
・ピンク ~恋心、そして至福の色~
ピンク色の魔術師として、まずフランスの画家「マリー・ローランサン」のことが取り上げられています。私は、まったく知らない名前でした。検索して絵を見てみると、パステル調のピンクなどを使った、どこか少女漫画のようなタッチの絵でした。
「わたしの絵は恋心の告白」とローランサンは言ったそうで、彼女にとってピンクは愛のメッセージそのものだったとか。
彼女特有の夢見るような世界は、失われた恋の夢だったのかもしれません。
と説明されています。
ちなみに画家の「いわさきちひろ」さんは、ローランサンの影響を強く受けていたのだそうです。
また古今東西の宗教画における「天国の図」には、ピンク色が多く使われているとのこと。至福、つまり至上の幸福といえば、人生を終えたあと天国に迎えられることかもしれません、と述べられています。
ちなみに仏教などでは、神仏の座に「蓮の花」を描くことで、ピンクを多くあしらっているそうです。
・赤 ~生のエネルギーに満ちて~
赤は人々のエネルギーをかきたて、熱狂させる力をもつそうです。事実、赤には心臓の鼓動を早め、血圧を上昇させ、興奮を促すなどの生理作用があるのだとか。
普段の生活でもどこかに赤を身につけると、不思議とパワーが出ると説明されています。
私たちは太古の昔から、血の色であり火の色でもある赤に、生命力を感じずにはいられなかったようです。実際、儀式やお祭りなどでは、特別な色として赤がよく使われています。
個人的には、身の回りのもので赤色を選んだことは、あまりないように思います。興奮を促す作用があるそうなので、どこかで避けていたのかもしれません。
・黄色 ~幸福を追求する心~
黄色は光そのものを象徴し、また同時に人生の光ともいうべき、希望や知恵というものを映し出す色と説明されています。
黄色は特にアジア各地で、宗教的な「聖色」として重んじられているそうです。仏教の影響が強い地域では、僧侶の衣の色としても黄色が使われています。
また黄色に魅せられた画家として、「ひまわり」を描いたゴッホが挙げられています。ゴッホは弟にあてた手紙のなかで、社会的野心とは無縁の「野心」について、次のように語っていたそうです。
「・・・僕は誰かを感動させるデッサンをやりたいんだ。これが僕の野心だ。・・・この野心の底にあるのは怒りではなく、愛なんだ」
そして、
ゴッホにとっての愛の表現が、絵を通して人々に感動を与えることだったのだとすれば、彼がもっとも好んだ黄色こそは、愛の光であったのだろうと、僕は想像します。
と述べられています。
ゴッホの絵をカレンダーにしたものがあったので、この機会に見てみました。確かに、どの絵にも黄色がよく使われている印象です。色に着目して絵画を見るというのは、面白い視点だなと思いました。
・緑 ~永遠の命を生み出す色~
緑は心身の疲れを癒し、回復へと導いてくれるとても優しい色と表現されています。これは、多くの人が同じような印象を持つのではないでしょうか。
また人間だけでなく地球上に存在するすべての動植物にとっても、緑は生命の生みの親といえるそうです。
日頃ストレスがたまっているときは、グリーン系の洋服を着たり、室内に緑の観葉植物を置くことで、ずいぶんとリラックスできるはずとのこと。
私自身はつい世話のことを考えてしまい、観葉植物になかなか手を出せずにいます。
・青 ~内省から、ひとり立ちへ~
青は、内側へあるいは中心へと向かう、静かなエネルギーを感じさせる色と説明されています。興奮を鎮め、知的な活動を促そうとする性質から、スクールカラーに取り入れられることも多いそうです。
また
「青年」「青春」「青雲」という言葉からも感じられるように、青に込められているのは、孤高なまでに自分だけの世界を求めようとする心です。
とも述べられています。
そういった若い人々の孤独な気持ちに訴えるため、青を「歌」に取り入れて歌いこむことも少なくないのだとか。例として、ユーミンの「ひこうき雲」「空と海の輝きに向けて」という曲が挙げられています。
「ひこうき雲」の方は、ジブリ映画「風立ちぬ」の主題歌としても有名な曲です。いわれてみると、空の青が印象的に使われた歌だと感じます。
・紫 ~心と体を癒す優しい波長~
紫は、時の権力者に好まれた特別な色であり、心と体に優しいヒーリングカラーでもあるとのこと。紫にはミステリアスなイメージがあったので、癒しの色でもあるというのは少し驚きました。
体に優しいというのは、むかし紫の染料であった「貝紫」「紫根」に、強い殺菌効果があったからだそうです。
また紫のイメージに彩られた文学作品として、紫式部の「源氏物語」が挙げられています。
ペンネームもさることながら、登場人物の名前にも「紫」にちなんだ名前がつけられているとのこと。「桐壺更衣」「藤壺」「葵の上」「若紫」・・・など、紫がテーマカラーの小説といえるそうです。
暮らしを豊かにするカラーコーディネート
この章では色彩心理という視点から見た、「美術」「映画・小説」「ファッション」などについて述べられています。
その中に「洋服の色で知る、今日の自分」という項目がありました。その解説として、恋愛映画「恋におちて」のあるシーンが例として取り上げられています。
メリル・ストリープ扮する人妻が、心魅かれる男性と人目を忍んでデートするという時のこと。その際に、何を着ていったらいいかと鏡の前で洋服を取っかえ引っかえするというシーンです。
この映画の主人公のようになかなか服が決まらないときは、内面にいろいろな「感情=色」が混在しているとのこと。それが服の色選びに迷いに迷うという行動に現れている、と説明されています。
無意識に選んでいるように思える毎日のファッションは、案外そのときどきの心や体の状態を反映しているそうです。
例えば、疲れ気味のときはグリーン系のものをよく身に着けていたり、全身ピンクというときは思っている以上に相手のことが好きなのかもしれない、などと説明されています。
「ハウルの動く城」のラストシーン
上記の項目を読んでいて、ふとジブリ映画「ハウルの動く城」のラストシーンを思い出しました。
映画のラストは、ソフィーとハウルのキスシーンで終わるのですが、思い出したのは二人が着ていた服の色のことです。ソフィーがパステル調の黄色い服で、ハウルはピンクの服でした。
これまで二人が着ていたものとはガラッと印象が変わったためか、見ていてこちらが気恥ずかしいような気持ちになったことを思い出します。
ちなみにハウルは黒と白のモノトーンの服、ソフィーはダークトーンの青い服だったのが、
ラストでは、こんなに明るくなっています。
いずれも、ジブリさんが無料配布している画像を使わせて頂きました。
パステルカラーについては、こんな説明が載っています。
ウキウキした気分のときは、明度の明るいパステルトーンが美しくみえることでしょう。恋愛がうまくいっているときは、ビビットな色調やパステルトーンを平気で着ていられます。
しかし関係が冷え込んでくると、とても明るい色など着る気持ちになれないということになるかもしれません。
また前述したように、ピンクは「恋心、至福の色」であり、黄色は「幸福を追求する心」であることを考えると、あのラストシーンは二人の内面をとても短い時間で効果的に、また象徴的に表現していたのではと考えた次第です。
配色レッスン・実用編
この章では、実用的なカラーコーディネートについて紹介されています。
内容を紹介する前に、まずはカラーデザインの基本である「色相」「明度」「彩度」について、簡単に説明したいと思います。
色相
赤、黄、青といった色味のことを「色相」と呼びます。私たち人間に見えるのは、赤~紫の間の「可視光線」だけだそうです。ちなみに可視光線の外にある光は、「赤外線」「紫外線」と呼ばれます。
こちらは、太陽の光をプリズムに通したときに現れる、虹状の光の帯の図です。そして、この色相を円状に並べたものを「色相環」と呼びます。
隣り合う色は「類似色(同系色)」のため、色味が似ており統一感があります。また正反対の位置にある色は「補色(反対色)」と呼ばれ、色相の差が最も大きくコントラストが高くなっています。
ちなみに「補色」は、Webデザインでよく使われる配色です。例えば青がメインカラーの場合、目立たせたい文字を補色の黄色にすると、とても目を引きます。
明度と彩度
「明度」は、白から黒へのグラデーションで考えるとわかりやすいでしょうか。白に近づくほど明度が高く「明るい色」に、黒に近づくほど明度が低く「暗い色」になります。
「彩度」は、それぞれの色の鮮やかさの度合いです。彩度が高いほど鮮やかでビビットな色になり、彩度が低いと落ち着いた色、地味めの色になります。
ちなみに「白・黒・グレー」は、彩(いろどり)がない色なので「無彩色」と呼ばれます。無彩色には「明度」のみがあり、彩度と色相がない色です。そのため「色相環」にもありません。色相環にある色は「有彩色」と呼ばれます。
・・・こうして説明していても、特に「明度・彩度」の部分は難しいという印象です。私自身も正直なところ、きちんとは理解できておりません。そのため、参考程度に読んでおいて頂けたらと思います。
配色レッスン① 対比的な色を組み合わせる
赤と緑、青と黄色のように、補色関係にあるような色や、明度・彩度差が大きい色同士の配色です。鮮烈でダイナミックな印象を与え、「動」を感じさせる配色とのこと。スポーツのユニホームや、歌舞伎の舞台などによく見られるそうです。
配色レッスン② 類似色を組み合わせる
赤とオレンジ、緑と黄緑のように、色相が隣同士の色を使った配色です。統一感を持たせたコーディネートとして、美しい配色とのことです。
配色レッスン③ トーンで組み合わせる
ピンクとペパーミントグリーン、茶とオリーブグリーンなど、明度や彩度が近い色同士の配色も、よく使われるコーディネートとのこと。
ちなみに、明度や彩度などの色調のことを「トーン」と呼びます。ダークトーンは渋くて落ち着いた感じ、パステルトーンはソフトでスイートな感じになる、と説明されています。
「トーン」を揃えることで、色相が違う色を多く使っていても、調和のとれたコーディネートになるという配色です。
以上の3つが、カラーコーディネートの基本とのこと。
まず自分の好きな色、使いたい色を選んで、それをベースに「対比的な色」か「調和的な色」を加えていけばいいそうです。
「色彩楽」の紹介でした
「ヒーリング塗り絵」をはじめ、色彩のことについて書かれた本でしたがいかがだったでしょうか。
色彩に関する紹介の方が多くなってしまいましたが、実際は様々なパターンの塗り絵が用意されています。
実は塗っていないページが多くあるので、紹介をしたこの機会に塗ってみようかと思っている次第です。
今回も長文となってしまいましたが、ここまで読んで頂きありがとうございました!