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「自分を活かす色、癒す色」をご紹介
この記事では「色のもつ意味」や「色と心の関わり」などについて書かれた、「自分を活かす色、癒す色」という本を紹介したいと思います。
はじめに
現在noteでは、自分で描いた「水彩スケッチ」を載せています。絵を載せるにあたりスケッチブックを見ていると、色鉛筆やクレヨンでただ色を塗っただけのページを見つけました。
それを見て、だいぶ前に読んだ本のことをふと思い出したのです。それが「自分を活かす色、癒す色」「色彩楽」という本です。
この本には、実際に色を使ってみる「色彩レッスン」のページがあります。これを試したものが、スケッチブックに残っていたようです。そして「昔こんなことをやってみたなー」と、懐かしく思い出しました。
このレッスンが印象に残っていたので、こちらで紹介してみようと考えた次第です。
今回は「自分を活かす色、癒す色」の色彩レッスン(第5章)を紹介するのが主な目的ですが、せっかくなので第1~4章の内容も紹介しております。
そのため少し長文となりましたが、よかったら読んでみてください。
著者をご紹介
本の著者は、末永蒼生(すえなが・たみお)さんという方です。1944年の生まれで、色彩心理研究家として幅広い活動を展開されているようです。
現在は「ハート&カラー」の代表や、アートセラピーを学べる「色彩学校」の主宰などを行っています。
オフィシャルサイトを見つけましので、載せておきます。
「自分を活かす色、癒す色」の一部をご紹介
「はじめに」の内容から
話は、イギリスの元首相である「ウィンストン・チャーチル」の紹介から始まります。
チャーチルは80歳にいたるまで長年首相を務め、その激務のなかでも油絵を描き続けたそうです。また外国首脳との会談や戦場にすら画材を携えて出かけたようで、「絵を描くのは息抜きとしては完璧だ」とも語ったのだとか。
日本でも、第一線で活躍する政財界のトップたちのなかには、「財界画伯」として知られる人が少なくないそうです。そして彼らが絵を描く動機はいずれも、気分転換やストレス解消のためと説明されています。
絵を描く人、言い換えるなら「色彩を楽しむ人」ほど、健康で長寿という傾向があるようです。こういったことから、色彩にはリラックス効果やメンタル効果などがあると考えられるとのこと。
以上のような色彩の効果を、一般の方にも気軽に取り入れてもらいたいと考え、末永さんは本書を書かれたそうです。
第1章 色を楽しむ人は健康で長生きする!?
この章では、画家は長寿だが文学者はどうか、子供がお絵かきに夢中になる理由、色を使う生活はボケを予防する、などの話が述べられていきます。
その中に「色はどうして見えるのか?」を、説明したページがありました。
例えばリンゴの赤はリンゴそのものについているのではなく、リンゴに当たった光の中から「赤色光」だけが反射して、人の目には赤く見えるとのことです。つまり赤以外の色は、リンゴに吸収されていることになります。
木々の葉についても同様で、緑の葉はそれ以外の光の色を吸収しているから、緑に見えるとのこと。植物にとっては反射する光(目に見える色)の方ではなく、「吸収される光の色」こそが大事だそうです。
そうすると紅葉する木々は、季節によって吸収する光線を変えていかなければ、生命を維持できないシステムになっていることがわかる、とも説明されていました。
話が「二重構造」のようになっていて少しわかりにくいですが、よく考えてみるとおもしろいなと感じました。
また「光線療法」という治療法があるそうです。内臓になぜ色がついているのか(ピンク、赤橙色など)との疑問から、光線を患部にあてる治療法が考えられたとのこと。
例えば肝臓の「えんじ色」は、皮膚を通過した太陽光線のうち、それ以外の光の波長をすべて吸収していることになります。つまり吸収された光の波長は、その臓器が健康に働くために必要なエネルギーということです。
そうした観点から、各臓器を元気にする色光を出す装置が開発され、「光線療法」ができたそうです。こういった治療法があるのは、知りませんでした。
また「目」から光(色)を取り入れる効果についても、書かれています。
アメリカの刑務所の独房では、「ピンク色」が広く採用されているそうです。独房は、凶暴で手がつけられない囚人を隔離するための部屋として使われるとのこと。
ある時、実験的にその室内をすべてピンク色に塗り替えてみたのだとか。すると、今まで沈静剤で沈めるしかなかった暴力行為や攻撃的な行為の発生が、みるみる減少していったそうです。
ピンク色には人の筋肉の働きを弱め、いらだった神経を数分で沈める効果があることがわかっている。
と説明されています。
このピンク色の独房は、今では世界中の刑務所で採用されているそうです。
第2章 色は時代とともに
この章の「カラーウオッチングのすすめ」という箇所で、京都のマクドナルドのことが取り上げられていました。
マクドナルドといえば「赤に黄色のM」の看板が有名ですが、京都の看板は目立たない仕様(茶色や黒っぽい下地にMのマーク)になっているそうです。
京都市には、建築物と不調和な色彩を規制する条例があるとのこと。そのためマクドナルドをはじめとするフランチャイズチェーンの多くが、看板の色を落ち着いたトーンの色に変更しているようです。
大手チェーンであっても、色彩に配慮した街づくりに協力してくれるのがいいなと思いました。
またこの章の最後には、「21世紀は何色?」と題して香港のことにも触れられています。
1997年の7月、香港が返還されたのを記念して、香港で記念切手が作られました。全部で13種類があり、それらを順番につなげると香港島のパノラマ写真が現れ、さらに「虹色」が華やかに浮かび上がる凝ったものだったそうです。
そこには「どうか自由が失われることがありませんように」「違いを乗り越えて共存していけますように」という、香港の人たちの万感の思いが感じられたと末永さんは書いています。
また
私の希望的観測を述べれば、21世紀はこの切手のように「虹色の時代」であってほしいと思う。・・・共存・共生のための道を模索していくべきこれからの時代に、最もふさわしい色ではないだろうか。
とも述べられていました。
第3章 歴史にみる色彩の演出者たち
この章では、義経や武田信玄、上杉謙信などの武将が、どんな色を使ってきたかが書かれています。
その中に「徳川家康」が用いた色であり、江戸幕府を象徴する「青の時代」について書かれたページがありました。
ちなみに青は「冷静」「沈静」「理性」など、内省的な心のありようを表すことが多い、と説明されています。
江戸時代には「奢侈禁止令」というのが発令され、これにより庶民が使う色を厳しく規制したそうです。そのため庶民が自由に身につけられる色は、藍の青と鼠色、茶色の3系統だけだったとのこと。
そして実はこの3色が、現代社会(約20年前)のビジネススーツの定番カラーに、ピタリと一致すると書かれていました。
そして
現代の男性たちは、もしかすると今だに、「心理的な奢侈禁止令」の呪縛から逃れられずにいるのかもしれない。
とも述べられています。
当時、灰色や黒っぽいスーツを着て、黙々と歩くサラリーマンの集団がどこか不気味だと、少し話題になった覚えがあります。
第4章 色が導く多彩な能力
こちらの章では、色に関するあるデータを紹介していました。
「サンプル数が少なく、現状を語るには不充分であると承知したうえで・・・」と述べながら、サラリーマン男性に行ったアンケート調査(20年ほど前)のデータが載っていました。
サラリーマン男性に「色彩への関心度」について聞いたところ、予想に反して半数以上の人が「色に興味がある」と答えたそうです。その当時の男性は色に無関心なのではと考えていたそうですが、実際はそうではなかったとのこと。
この調査により、男性たちが自由に色を表現するのは制約などで難しいが、心の中には実はいろいろな色が息づいていたのだと感じ、励まされたと書いてあります。
現在はユニークな企業がいろいろあるので、色や服装に対する考え方も、昔とは違っているかもしれません。
第5章 色彩の達人になる8つのステップ
最後の章では、誰でも気軽に試みることができる「色彩レッスン」が紹介されています。その中のいくつかを、取り上げてみたいと思います。
◎「言葉から色へ」というレッスン
文字通り「ある言葉から自分はどんな色をイメージするか」を考えてみるレッスンです。
例えば「リフレッシュ」という言葉の場合、若葉のような柔らかい緑をイメージする人もいれば、ふんわりとやさしいピンクを連想する人もいるだろう、と書かれています。
そして「リフレッシュ」に自分がイメージした色を、日常で使ってみると良いとのこと。
例えば仕事で疲れてストレスを感じているときに、身の回りにその色のものを置いたり、身に着けたりすることで、リフレッシュ感が得られストレスが軽減されることもあるとか。
大事なのは、自分にとってぴったりくる「リフレッシュ」の色、ということのようです。
◎「音楽を色で聴く」というレッスン
自分の好きな音楽などを聴いているときに、そのメロディーのイメージを色に置き換えるというレッスンです。
イメージが湧いたら、マーカーや色鉛筆などで、紙にその色を彩色してみます。できれば単色ではなく、2~3色を使って配色するのがいいようです。
サンプルとして、ドビュッシーの「月の光」を色で表すとしたら、どんな配色になるでしょうかと書いてありました。
ちなみに「月の光」はこんな曲です。
とても有名な曲だと思います。
そして音楽を聴きながら、自分で色を塗ってみた(当時)のがこちらです。
青と水色が基本で、そこに黄色や紫などが少し入っているという色のイメージでした。黄色は「月の光」という曲名に、少し影響された感じもします。
今回、改めて曲を聴いてみましたが、静かな雰囲気の中に光がさしている感じは伝わってきました。
そして「この音楽からなぜその色を配色したのか」を、言葉にして考えてみるといいそうです。ちなみに私が音楽からイメージした言葉は、「悲しさ」「さびしさ」「せつなさ」「孤独」といったものでした。
こうして「音楽」→「色」→「言葉」とたどりついたとき、自分にとって「悲しさ」「さびしさ」などのイメージは青なのだな(私の場合)と、気づくことができるというものです。
これは最初の「言葉から色へ」のレッスンにも、つながると思います。
次にモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」もサンプルに挙げられていたので、試してみました。
こちらも有名な曲です。
そして当時、色を塗ってみたのがこちら。
デジカメの性能のせいか特に黄色が濃く見えますが、この曲の色は淡い「パステルカラー」というイメージでした。この曲を聴きながら、暗い色や重たい色を塗る気持ちにはならなかったことを思い出します。
※ 塗ったページをよく見ると、「月の光」の方はベートーヴェンの「月光」、「アイネ~」の方は第1楽章ではなく「第2楽章」と書いてありました。もしかしたら、違う曲を聴いて色を塗ったのかもしれません・・・。
一応、ベートーヴェンの「月光」と「第2楽章」を聴いてみましたが、色のイメージにそれほど違いはありませんでした。そのため色塗りのサンプルになればと思い、ページはこのまま載せておきます。
◎「マイナスの気分を色で吐き出す」というレッスン
クレヨンでも水彩でもマーカーでも何でもよいので、自分の好きな画材と画用紙を用意します。そしてマイナスの感情を吐き出すつもりで、画材を使って画用紙にただ思いきり色を塗るというレッスンです。
特に疲れが溜まっているときや、イライラしているときなどに行うと、気分がスッキリするとのこと。
その際、何かを上手に描こうと考えず、ただ思いきり色を塗るだけ、落書きするだけで良いそうです。こうして色で感情を吐き出すのは、カラーセラピー(色彩による癒し)の基本だとか。
私が当時、実際にやってみたものがこちらです。
マイナスの感情を吐き出すので、どうしても暗い色が多くなります。しかし他人に見せるためのものではないので、自分が塗りたい色を使えばよいのだと思います。
「自分を活かす色、癒す色」の紹介でした
「色彩」という視点から様々なことが紹介されている本でしたが、いかがだったでしょうか。
1冊目の紹介が、とても長くなってしまいました。もう1冊の方は、次回の記事で紹介したいと思います。
それではここまで読んで頂き、ありがとうございました!