見出し画像

続続・映画「カラオケ行こ!」、計7回見に行く人間の感想

Twitterの下書きをためる感覚で感想を残しています。書きとめておきたいことが日々溢れるばかりです。
ネタバレしかありません。映画未視聴の方の参考になる部分は一切ありません。こんな文章は閉じて映画館に行ってください。
映画本編、原作(カラオケ行こ!単行本・ファミレス行こ。上巻)の情報を主に、少しシナリオブックにも触れています。ひとつひとつ丁寧に確認しているわけではないので記憶違いなどがあったら申し訳ないです。



・ヤクザ大集合カラオケのシーン、原作だとなんやと小僧のドタバタを経てから聡実くんから最後に何か言いたいことある?→次ページ即土下座 の流れのテンポが良すぎてあまりにも面白いギャグシーンなのに対して、映画だとコマ割りのテンポ感とはまた違うからこそ聡実くんの土下座や息遣いにじっくりと時間をかけていて違う雰囲気や意味合いを持たせているのが、表現の違いとして すげ〜〜……の気持ちになる。
 誘拐によるいちご狩り欠席とかいうトンデモ理不尽から始まり行き着く先はヤクザ大集合カラオケの評価とかいうさらなるトンデモ理不尽、帰りの車に切り替わって早々の「もう無理です」にそりゃそうだの納得感がすごい中、苺を貰うことで「狂児さんだけなら……」に繋がる原作。
 次の歌唱曲でソロパートを貰った、そして代役を用意される気遣いがあった、そんな複雑さを抱えたままの放課後の待ち合わせ先が事前情報無しのヤクザ大集合カラオケ、先生と持ち上げられながら怒鳴られたりもするどうしたって恐怖の拭えない空間、なんとか終わった後に食らう指、限界、痛々しい程聡実くんの心境が見える様なそんな映画版。
 「カスです」のテンポ感の再現度がすごい一方で、原作と映画でそれぞれ違う流れや文脈がある。映画という表現で怒声や動きなどでよりヤクザの男達の怖さが分かりやすく目に見えるぶん、この日が聡実くんにとってどれだけ怖かったかというのがぐっと際立って描かれていて、同じように心がぎゅっと痛む様な気持ちになる。結局全く減っていないオレンジジュース……。
 それでいて、映画でもちゃんとギャグとしてめちゃくちゃに面白さが光るシーンなのが本当に好き。ずっとちゃんと面白すぎる。このシーンに限らず、作中通してずっと原作の面白さや温度感を本当に大事にしているのが伝わって、それが嬉しい。

・なんやと小僧で怒鳴られて咄嗟に狂児の後ろに逃げる聡実くん、前から見えないくらい収まってしまうのが大人と子供の大きさの違いを感じてとても好き……。

・土下座した聡実くんがなお頭下げんなで 泣……になってしまう中で、自分も同じように座って、皆も同じように座って という空間を作った狂児……聡実くんへの気遣いというか この場の締めとして最後まで聡実くんを先生として立てる空気をきちんと作ってるこの感じ、そこに例えば本当に狂児が心から聡実くんを師として尊敬しているのかどうかって実は関係なくて、ただ 自分がそうであるというようにきっちり振る舞うことでその場をちゃんと収めていて、そういう部分の器用さなどが見えるのが 狂児………………。

・聡実くんの後日の「カラオケ行こ」が無かったら本当に会うのが最後になってたかもしれない日(いや、もしかしたら普通になんだかんだして機会を作っていたかもしれない、狂児なら)、別れの時に残した言葉が「聡実くんは聡い果実やからな、大丈夫や」なの、かっこよすぎる。
 狂児という名前を抱えてそれでも彼なりにちゃんと真面目に生きて、それでも結局狂った歯車が噛み合う世界に生きてしまった男から言われるその言葉って、あまりにも……あまりにもすぎる。ヤクザの男性と合唱部の中学生、そういう立場の話よりももっと深くある、二人の人間の人生の違い…………。
 原作だと「いつかどこかで歯車が狂うんじゃないかと思ってた」なのに対して、映画だと「俺の狂った歯車はここへ辿り着くんやな」なの、より…………諦めというか、この人が今まで生きてきた人生のことを、考えてしまう…………。名前って、あまりにも大きすぎる。
 それとはまた別の話として、「聡実(さとみ)」という名前の美しさにどうしたって震えてしまう(個人的な趣味の話だけど、響きに女性名の印象がありながら違和感なく収まる男性名というものがハチャメチャに好き)ので、狂児の名前のエピソードに加えて聡実くんの名前にも触れる時間なのがすごく……良かった。
 繰り返すけど、名前って本当に 本当に……人生において大きいものなので、きっと聡実くんにとってこの「大丈夫や」もいつか大きなものになる瞬間が来るんじゃないかと、そう思う。
 というかこの話をした二人の辿り着く先にあの右腕があるのって、ヤバすぎる。映画のシーンと原作のシーンをちぐはぐに繋いで話してしまうけど、「聡い果実やからな、大丈夫や」を経た上で「僕の名前好きなんですか」のことを考えてしまうと、さ〜…………。いや、これは本当に……都合よく好きなシーンを繋いで好きに話してるだけになるけれど、いや、でもさあ、成田狂児から見る岡聡実という名前って、眩しすぎる…………。

・今原作見返して思ったけど大集合カラオケで怖くないの説明のための「中学生相手に塾で講師」(中学生相手に呪具で絞死…?) ←ここ漫画でしか出来ないおもしろすぎる〜〜〜ッ

・恐怖の大集合カラオケから帰りの車での指発見を経て絞り出される「もう無理です」の拒絶然り、事故後の会場到着→本番前練習での「歌えません」然り、映画版でのこういう…聡実くんにとって 自分の気持ちに答えを出すような瞬間に対して、すごい長い時間を感じられる描き方が、好きだな……ということをしみじみ噛み締める。
 聡実くんの心情が聡実くんの言葉で語られる原作の表現とはまた違って、プロローグなどが無いからこそ 動きであったり表情であったり時間であったりそういった部分での見せ方できちんと聡実くんの心の内がこちらに自然と伝わってくるのが、すごくて……。原作も映画も、どちらもその媒体だからこそ出来る表現の強さを存分に活かしてる面白さがあって本当にすごい。
 でも、その長い時間での見せ方として原作でも重なるのが、最後の聡実くんの紅の前奏で……。決して映画版にしかない表現の話ではなくて、元々カラオケ行こ!という作品の中にちゃんとあるものなんだな……と思う。

・屋上で飲み物渡す時、ブラックと(おそらく)カフェオレを買ってきてどっちがいいか聞く狂児、カフェオレを手に取る聡実くん……。
 それまでのカラオケでのシーンで甘いジュースとか自分から飲んでるのもあって聡実くんなら聞くまでもなくカフェオレを選びそうな気がするけど、それでもなお選択肢として用意して選んで貰う。狂児の優しさや気遣いにも思えるし、どこか聡実くんに対しての「知らなさ」にも感じる……後者は正直、私の「そうだと嬉しい」という気持ちが入っているが。
 聡実くんがもしかしたらブラックコーヒーが好きかもしれない、そうじゃないかもしれない、そういうことを知らない。子供だから、よく甘いものを飲んでるから、でこっちでいいだろうと決めつけない狂児の大人としての頭の良さでもあり、このふたりが、ただ……カラオケに行くだけの関係性で……友達でもなくて……互いに知らないことがほんとうに沢山あって……ということを感じて、いや、さりげないシーンだけど、味がする……。勝手に味わってるだけかもしれないけど、味なんてすればする程いいから……。

・概念音楽を見つけるのが好きな人間なので色々聞いてうーむと思ったりしてるのだけど、全然もう普通に聡実くんセレクトの狂児さんセトリが全てすぎて何も敵わん、終わり。紅という曲が作中であまりにも特別に響くせいで逆に日常生活の中で聴けなくて、代わりに狂児さんセトリの曲を聴いている。
 マシマロ、作中で初めて聴いて「君のスカートの模様 部屋の壁紙にしよう」とか言っちゃう曲、好きですね……と思って現曲を聴いたのだけれど、良い曲すぎる…………………………。今のところそもそも曲として一番刺さってるし、これを綾野剛演じる成田狂児の歌声で聴けることが本当に嬉しい(「声質的にもこれが狂児さんに一番合ってると思います」←ありがとう)し、それに対して聡実くんが割と好感触を覚えるような顔をして聴いてるのがめちゃくちゃ好きだ。 ←え!?今シナリオブック見たんですけど、これどの曲に対しても「聡実、真顔で聞いている」なんですか!?え、え〜っ…。いや、嘘!(嘘て) このシーン、それぞれの曲に対しての感触なのか、はたまた紅ミルフィーユに対しての呆れなのか、曲ごとに(確かに全て真顔だけれど、それでも)表情の違う聡実くんが見られてすごい好きで……。マシマロの時の、少しノリながら聴いてる聡実くん(ポッキー食べててかわい〜……)とか…………。え〜……だとすると、齋藤潤さん………(涙)になってしまう……良すぎて……。
 シナリオブックようやく買って(ビジュアルブックも無事購入)まだこの文章を書く上での確認程度にしか見てないんですけど、これ凄いな。これ見てから映画を見ると「役者さん、凄〜〜ッ…………」の段階にいけるんだろうな。読み込んでから見に行く日、絶対に作りたい。

・ルビーの指環とかが入ってるあたり、聡実くんの中にまだ狂児に対して「触れてはいけない心の傷を抱えているんだわ……」がある気がして、笑顔になる。選曲はそもそも原作にあるもので、触れてはいけない…は映画オリジナルのシーンで、これもまた原作映画ちぐはぐ繋ぎかもしれたいけど、すごく自然というか……。
 そもそも……選曲のどれを聴いても、単に低い男性の歌声に似合いそうな曲・狂児の年代に合っていそうでかつ聡実くんにも聴く機会がありそうなポピュラーな曲、というだけじゃなくて、どこか……二人の概念を感じる気がして、本当に、淡々とシュールな原作に その温度感がブレないようにそっと、それでいて確かに込められた二人の関係性についての……熱を感じるようで、すごく好きだ……。


大体3~4000字あたりで一区切りをつけるので、すごい半端なところで〆になってしまった。
文章を書くのが好きで、自分の書く文章も好きなので、こうやって形にできるほどの熱と衝動で動ける程好きだと思うものがあるのがとても嬉しくて、楽しいです。

映画「カラオケ行こ!」に、大きな感謝を込めて。来週だけでもTOHOシネマズに3回行くのが確定したのでシネマイレージに入会しました。いつか趣味欄に映画鑑賞と書ける人間になれるかもしれない。なりたい。映画って、好きだ。


まだある