住まいのない方が発熱またはコロナ感染した場合の対応について、東京都に要望を提出し意見交換を行ないました
今夏到来したコロナウイルス感染症のいわゆる「第5波」により、東京では入院や療養施設への入所ができない方が多数生じました。そんな中、困窮者支援の現場では、療養できる自宅がない方が発熱や感染に至るケースが見られました。住まいや所持金、保険証などがない方が発熱した場合、検査へのアクセスにおける課題や、検査結果を待つ期間及び病院・療養ホテルに入るまでの期間に滞在する場所の確保について課題があります。感染状況に落ち着きが見られる今でも、入院や療養場所の確保まで数日のタイムラグが生じる場合が想定され、また今後再びの感染拡大の可能性もある中、療養できる環境にない方への対応については体制を整える必要があると考えます。
そこで、都内の支援団体らと東京都への要望を提出した上で、9月27日(月)に関係部局と意見交換を行ないました。今後の体制整備を考える上で、本要望についても参考にするということでした。
ここで、住まいのない方が発熱した場合の対応について、現状取りうる対応を示します。まず基本的な理解として、コロナウイルス感染が確認された場合、住まいがなく自宅療養ができない方に関しては療養ホテルまたは入院となります。問題はそこに至るまでの経路ですが、住まいや所持金、保険証がない場合には、まずお近くの福祉事務所に電話で連絡し、生活保護申請の意思を示すのが良いでしょう(生活保護の医療扶助を利用するため。保険証がない状態で発熱相談センター等に相談した場合、結局福祉事務所を案内されることになる)。その上で福祉事務所に発熱等の症状を伝え、検査や医療にアクセスできるよう保健所等と連携を図ってもらうよう促すことになります。ここがスムーズにいかない場合には支援団体に相談してください。支援団体の方は、このようなフローが確実に実行され、医療につながることを目指すことになります。なお、支援団体の相談会などは、福祉事務所が開設していない休日や夜間に行なわれることも多いです。休日や夜間に発熱された方の相談があった場合には、まず発熱相談センターに連絡し、場合によっては福祉事務所の夜間休日対応の連絡先に電話すること、救急搬送などから医療につなげることが想定されます。その場合、後日福祉事務所で生活保護申請をすることを前提に、医療費の支払いを一時的に待ってもらうという対応になるでしょう。
ひとまずは上記のような対応になると思いますが、適切なフローを辿ったとしてもやはり宿泊場所が確保できない1日〜2日が生じる可能性があります。また、そもそも感染が再拡大し、療養ホテルや病院の「ハコがそもそもない」という状況に至った場合にもやはり、空白期間が生じます。現状では、この期間を過ごすことができる公的な施設はありません。これについては、引き続き働きかけをしていきたいと考えます。
(以下、要望書の内容を転載します。過去の要望やアドボカシー活動についてはこちらから)
2021年9月16日
東京都知事 小池百合子 殿
東京都 福祉保健局長 殿
住居喪失者が発熱及び新型コロナウイルスに感染した場合の対応に関する要望
今夏の新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、東京都内の住居喪失者への支援団体にも発熱した方からの相談が見られます。現在都内では、感染が確認されても自宅療養が原則とされていますが、路上やネットカフェ等で生活している住居喪失者が発熱及び感染した場合、適切な療養場所の確保が難しい状況にあります。これまで、支援団体のシェルター等に一時滞在をしていただく場合もありましたが、シェルターの量やマンパワー、感染の可能性のある方への対応方法等について、民間支援団体だけではでき得る支援に限界があります。
こうした状況から、その対応について先日東京都に相談し、「福祉事務所へお問合せ、ご相談いただく」ようにとの回答を得ました。その後、都内複数の福祉事務所に問い合わせたところ、発熱した方が相談にきた場合の対応について、(1)検査結果を待つまでの間、(2)陽性が確認され療養施設等へ入所するまでの間、(3)陰性が確認されたが発熱している際について、適切な案内先が定まっておらず、対応に苦慮しているとのことでした。各自治体の住居喪失者への相談窓口において、感染の可能性がある方への対応を十分に想定することは非常に難しいものと推測されます。
以上を踏まえ、以下の項目について要望いたします。
(1)検査結果を待つまでの対応について
住居喪失者が発熱した場合、ご本人の健康や防疫上の観点から、路上やネットカフェでの生活を続けざるを得ないという状況を避ける必要があります。発熱等、新型コロナウイルス感染の可能性がある方が、住まいがなく所持金も少ない状態にあるということが、ご本人の福祉事務所への相談や支援団体からの情報提供等により判明した際には、福祉事務所が率先して保健所等と連携すると同時に、速やかに現在地保護に則り、生活保護受理対応を行なうという運用を徹底していただきたい。
また、保険証や所持金がなくても速やかにPCR検査や抗原検査を受けることができるよう、検診命令を適用するなど、検査や医療へつながるフローを確保・明示していただきたい。また、検査結果を待つまでの間に過ごせる場所を確保していただきたい。
(2)検査結果が陽性となり新型コロナウイルス感染が確認された場合の対応について
通常であれば住居喪失者の検査結果が陽性の場合は療養施設等に入所させていただけるものと理解しますが、現状では入所まで数日を要する場合があります。そのため、上記(1)の検査結果を待つ場合と併せ、一時利用住宅の転用なども含め、療養施設に入所できるまでの間に過ごせる場所を確保していただきたい。
(3)検査結果が陰性となった場合の対応について
現状では、PCR検査や抗原検査で陰性が確認された場合でも、発熱などの症状がある場合には東京都協議済みホテルや一時的な宿泊場所(ビジネスホテル)を利用することが難しい状況であると思われます。検査を行ない陰性が確認された場合には、上述のホテルへの宿泊が可能となるよう調整いただきたい。
以上について、医療保健等の関係部局と協議の上連携を図り、区市の福祉事務所や保健所等に対して対応方法を提示し、適切な運用が可能になるよう図っていただけますようお願い申し上げます。
要望団体:反貧困ネットワーク、新型コロナ災害緊急アクション、認定NPO法人ビッグイシュー基金、有限会社ビッグイシュー日本、一般社団法人つくろい東京ファンド、四ツ谷おにぎり仲間、社会慈業委員会ひとさじの会、認定NPO法人世界の医療団、特定非営利活動法人TENOHASI、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人会/呼びかけ:北畠拓也
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