石油と太陽光についての話
エヴァの与太話とかブッシャリオンとか、書きたいもの溜まってますが、ちょっと気になったので忘備録的な真面目な記事。
・発端のツイート
気付いたらRT数がエラいことになっていた。
・なんで石油の埋蔵量と太陽光パネル比べてるのさ
至極尤もな疑問です。石油は資源の一カテゴリ、太陽光パネルは一設備。どういう比較なのさ。ということですが、理由は単純で、そもそも
伊藤ヒロ先生のこのツイートに対する反応だったので、こんなことになりました。
先生は『魔法少女禁止法』やアダルトゲーム『夢幻廻廊』等、エグめの描写とコメディに力を発揮される方です。
姫騎士を約束の地ジャスコに放り込んだりもされています。
※作品チョイスは完全に自分の趣味です。
というわけで、以下、ツイート内容の補足や解説。
・石油の可採年数について
一般的に石油の可採年数は50年程度と言われていて、それをもとに嘗ては「半世紀で石油がなくなる!」と騒がれたりもしました。しかし、この可採年数の計算式は、
「可採年数」=「可採埋蔵量」/「年間生産量」
で成り立っています。そして「可採埋蔵量」というのは、実は単に「今人類が把握している埋蔵量」ではなく、「掘り出して採算の取れる埋蔵量」の数値です。
なので、新たな油田が見つかっても可採年数は増えるし、何もしなくても原油価格が上がれば可採埋蔵量は増えます。「今までは採算が取れなかった油田」が可採埋蔵量に含まれるようになるからです。
そして一方、石油消費量が増えて生産量が増加すれば、可採年数は減ります。
ここしばらくの間、可採年数は50年前後で推移しているので、もしかすると50年後も「あと50年」と言っている可能性もあります。一方、途上国の近代化で消費量が激増するなどすれば、可採年数が減ることはあり得なくはない。
というわけで、多分大丈夫だと思うけど、一応「わからない」ということになります。
ちなみに石油の起源については、昔は無機起源説とかも(主に東側で)流行っていたようですが、現代ではだいたい生物由来と考えて良いと思います。
・「太陽光がゴミになる」の定義について
多分、論争になった点。というより、恐らく「ゴミ」の定義が人によって違うのだと思います。
わかりやすく、パソコンで喩えましょう。「壊れたパソコン」は、わかりやすくゴミです(パーツ取りには使えるかもしれませんが)。でも、例えば「Windows XP時代の動くパソコン」は、大半に人にとっては不要だけど、「使える」という人は居るかもしれません。しかし「ゴミ」とも言えます。これがWindows7なら、もっと割れるでしょう。このように、「ゴミ」の定義は割とまちまちです。
太陽光発電の場合、「パネル本体の寿命」以外に、「付帯設備を含めたシステムの寿命」があり、更に「経済的な寿命」があります。
ツイート中に挙げた「20年」というのは、主に経済的な寿命。現在では、太陽光発電等の固定価格買取制度は20年がリミットとなっており、そこを過ぎると売電価格が下がります。環境にもよりますが、一般的な太陽電池の寿命もそのくらい、と言われることもあります。
また、荒野のど真ん中ならともかく、日本の自然あふれる環境で太陽光パネルを運用するには、地味に手間暇がかかります。具体的には、草刈りやパネルの掃除等。しかし、固定価格買取終了後の電力価格は2割程度にまで低下する、と言われています(しつこいようですが環境によります)。
ペイできるかは環境によると思いますが、「維持するために手間がかかるばかりで、利益を生み出さなくなった構造物」も、先程のパソコンのように「広義のゴミ」と言えるのではないでしょうか。
誤解のないように書いておくと、今の太陽光パネルは、種類にもよりますがパネルそのものは非常に優秀です。大半のパネルは20年経過しても、効率は多少低下するものの、普通に電力を出し続けます。先程出てきた「20年」というのは過去の太陽電池を目安に算出された数値であり、今現在、トップクラスの太陽電池を設置すれば、パネルそのものは30年くらいは普通に使えると思われます。加速試験等のデータはありますが、今の太陽電池が「何年もつか」はまだ断言はできません。
ただ、先程述べた日常的メンテに加え、設置架台や付帯設備、特にインバーター(パワコン)などはメンテナンスや交換が必要になるとは思いますが、それでも本来は長く付き合うことのできる電源です。
しかし、今の日本の現状としては、固定価格買取を見込んで無計画、あるいは粗悪なパネルを用いて設置された太陽光発電が多く存在し、結果として「太陽光は20年でゴミになる」という風潮が生じているところはあります。また、天災の多い日本では、台風等の被害も無視できません。
太陽光は天候に左右されやすく、いわゆるベース電源ではありませんが、他のエネルギー源にはない長所も数多く持っています。其々の長所を活かし、安定・安価かつ環境負荷の低い電気が届けられる社会であることを切に願います。
・捨てればゴミ、分ければ資源
最後に、蛇足ですが太陽光パネルの行先について。
太陽光パネル本体の寿命は付帯設備に比べて長いので、「再利用(リユース)」されるパターンも実はそれなりにあります(国外に輸出され、追跡が困難になるケースもあるのが困りものです)。
しかし、そうでない場合は処分・リサイクルされることになります。太陽光パネル本体は、アルミとガラスが大半を占めています。綺麗に分解するにせよ、丸ごと破砕するにせよ、リサイクルは不可能ではありませんが、現在の技術では結構な手間がかかります。それでも、世界的には太陽光パネル廃棄物の大量発生やリサイクル市場の拡大が見込まれており、今後の技術の発展が期待されます。
参考:
環境省『使用済太陽光パネルのリユース、リサイクルについて』https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/taiyoko_haikihiyo_wg/pdf/002_02_00.pdf