もしもプラズマキャノンがあったなら
もしもプラズマキャノンがあったなら、なんだって壊せるだろう。
もしもプラズマキャノンがあったなら、世界はどんなに色づいて見えるだろう。
ある雨上がりの日、田舎道を軽トラで走っていると、道端にプラズマキャノンが落ちていた。
プラズマキャノンと言っても、然程大げさなものでもない。惑星航行艦の迎撃火器や、新式戦車に使う、変哲も無い単装式収束プラズマキャノンである。
だからと言って、田舎道に転がっていてよいものではない。不法投棄だろうか?
キャパシターを確認し、スイッチを入れると、電子音を立ててランプが明滅し始めた。電源が入る。
プラズマキャノンと言えば、レールカノンのように大出力ジェネレータ直結で使うものだという印象があるだろうが、このタイプは旧型兵器にもポン付けできるようユニット化されているため、単体でも3発分くらいは撃てる筈だ。
もう少し前世の行いがよければ、こうして拾うのは魔法のランプか、現実的に行くなら文化女中器なんかだったのかもしれないなぁ、などと思いながらプラズマキャノンを担いで持っていこうとしたが、簡単に持ち上がるものではない。
そうこうしていると、近所のお爺さんが農業ドローンと一緒に通りかかった。
「なんじゃろなぁ」とか「市役所の人かい?」などと言われながら、気が付くとプラズマキャノンは軽トラに乗っていたし、最近トラクターで轢いたというイノシシの肉を貰っていた。
さて、持ち帰ったはいいが、家の部屋に入り切るだろうか?
分解するとなると手に負えないぞ、と思っていたが、ケーブルを外すだけで案外何とかなることがわかった。
問題なのは貰った肉の方だ。田舎ゆえに広いだけの1DK、いや、今は1PDKなのかもしれないが、独り者の家にまともな調理器具がある筈もなく。どうするべきか思い悩んだが……確か、アーク放電で調理する、という論文があった筈だ。
ひとまず、プラズマキャノンで撃ってみようとなった。