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生活

白い壁に白いシーリングライトが照射されても、位置や角度によって別の白になっている。いや、淡い黒とも言えるかもしれない。
それが意識の浅瀬で流れて、視線が上がったときに初めて、眼鏡の汚れを認識した。その時なぜかとても虚しくて泣いた。
出来事、些細な出来事が人の本性を露わにする。

生きる。生活する。答は簡単である。しかしその内容は簡単どころではない。
[・・・・・・]
その先きには生活があると思うのである。[・・・・・・]
現在は過去と未来との間に劃かくした一線である。この線の上に生活がなくては、生活はどこにもないのである。

森鴎外 【青年】

食料品売り場で見る老人。一人だろうか。

スーパーが用意した中から、最低限な選択をする。
そこには儚さ、寂しさがある。生活がある。
それを理解はしていても、感情はあまり動かない。
人の孤独を自分勝手に想像して共感することは気休めである。
それで良いじゃないか。

「『僕はそうは思わない』」

伊坂幸太郎 逆ソクラテス


食パンだけでも生きられる。そう分かった上でジャムを塗る。豊かさ、文化とはその為にある。

カプセルホテルや、巣にいる蜂の幼虫の気味悪さが世界にはある。目的や効率が重視され、整備された現代社会が豊かさを無駄に変えてしまった。
 それでいて、効率化した快楽はオート提供されるものに、コメント欄の内容が自分の意見にすり替わっている。豊かさを盾に唯一的な豊かさが搾取されている。
本当の豊かさは、生活は、自分の中にしかない。


メッセージ(原題: arrival )

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