生活
白い壁に白いシーリングライトが照射されても、位置や角度によって別の白になっている。いや、淡い黒とも言えるかもしれない。
それが意識の浅瀬で流れて、視線が上がったときに初めて、眼鏡の汚れを認識した。その時なぜかとても虚しくて泣いた。
出来事、些細な出来事が人の本性を露わにする。
食料品売り場で見る老人。一人だろうか。
スーパーが用意した中から、最低限な選択をする。
そこには儚さ、寂しさがある。生活がある。
それを理解はしていても、感情はあまり動かない。
人の孤独を自分勝手に想像して共感することは気休めである。
それで良いじゃないか。
食パンだけでも生きられる。そう分かった上でジャムを塗る。豊かさ、文化とはその為にある。
カプセルホテルや、巣にいる蜂の幼虫の気味悪さが世界にはある。目的や効率が重視され、整備された現代社会が豊かさを無駄に変えてしまった。
それでいて、効率化した快楽はオート提供されるものに、コメント欄の内容が自分の意見にすり替わっている。豊かさを盾に唯一的な豊かさが搾取されている。
本当の豊かさは、生活は、自分の中にしかない。
メッセージ(原題: arrival )