遭遇!タイガーオーガ事件
ご機嫌いかがでしょうか。お笑いコンビドンデコルテの総帥、渡辺です。夜中にnoteを書くのが習慣化してきているかもしれません。果たしてこのままいけるでしょうか。どうぞお見守りください。
こないだ幼少時代の恐怖体験を書いたからか、最近怖い思いをした記憶が連鎖的に蘇ってきています。
今日は怖い体験の中でも、私が当事者ではなく傍観者として登場するお話をさせていただきます。当事者じゃなくても怖いもんは怖いんですよ。貞子がテレビから出てきて被害者を襲うとこ見ちゃったら怖いでしょう?
目撃者もいろいろ感情が動きます。ちょっと聞いてってくださいましな。
中2の終わり頃のお話です。
その日私は当番だったのか何なのか、プリントの束を職員室にとりに行きました。何事もなくプリントを受け取り、のんきにトコトコ教室に引き返していたところ、職員室前ホール(広めの吹き抜けの空間)に怒号が響き渡りました。
「タイガァァアァァア!!!!」
ミ、ミヤさんだ!!!
背後からの大音声に私は凍り付きました。
我が校にはミヤさんと呼ばれる、それはそれは恐ろしい先生がおりました。
当時40前くらいの女性の先生で上下ジャージに身を包む、学生時代には陸上で全国大会にも出たと噂の肉体派。手さえ上げないものの体育会系教師の例に漏れず怒鳴る怒鳴る。極妻のごとくま〜怒鳴る。女声ながらも太字で怒鳴る。
そして何より顔が怖い。もちろん常にスッピン、眉毛はなく、刺すような三白眼。人工か天然かはわかりませんがパーマのかかった外に広がる髪の毛はカチューシャで後ろにまとめ、落ち武者もかくやあらんといった具合。総合すると、まごうことなき般若でした。そう、当記事の見出し画像は実在する先生の復元図なのです。ただ怖すぎてミヤさんいないとこですら般若に似てるとは言えませんでしたけど。
決め台詞も持っていました。怒鳴って怒鳴って反省し切った生徒に近距離で放つ「違うんか?違うんか?」これです。下の毛も生えたての青二才がこんな先生に詰められた日にゃあ立っているのもやっとという状態ですよ。
そんなミヤさんの怒号が続いています。
「ゴラァァァ!!!タイガァァ!!!タイガーー!!!タイガァァアァァア!!!!」
静かなホールに反響しちゃって大勢のミヤさんに怒鳴られているかのようです。
しかし問題は何に怒っているかがわからないこと。自分のことではなさそうだが…タイガーって何?虎呼んでんの?だったらもう10頭は召喚してますよ?あ、虎も震え上がって出て来れないのかもしれない…。
こんな現実逃避をいつまでもしているわけにいきません。怒るミヤさんの前に現実逃避など災害に対処しないのに同じです。怒れる大自然を侮ったら命取りです。一刻も早く原因の究明をしなければ。
振り返って巻き添えを食うのを避けるため慎重に周りを見回すと、少し先を歩く同級生がいました。しかも上履きのかかとを踏んでいます。ミヤさんはどうやらこのことに怒鳴っている!
ここで私はピンと来ました。普段から割とだらしないその同級生の名前は「大賀」。読みはというと…「おおが」。
これかぁぁぁ!!!
熱い性格のミヤさんは怖い反面、担任でなくとも生徒の名前を把握している誠実さを持ち合わせていました。ただし…字面で…。
ミヤさんは「タイガ」と咆哮していたのです。
そりゃ大賀も気付きませんって。だっておおがなんだから。
窮地に立たされたのは私です。今この場面で真実を知っているのは私だけなのです。いまだ全力で虎を召喚し続けているミヤさんに、このことを教えるか教えないか選ばなければなりません。手に余る真実。同級生の名前なんか知っているに決まっているのに教えなければ後々大事になり、教えれば一番避けたかった巻き添えです。
詰んだ…。ミヤさんとミヤさんの怒りの対象の直線上に立ってしまった自分を呪いました。
私が選んだのは後者でした。後々気付いたミヤさんに黙っていたことで目をつけられるのは避けねばならなかったんです。言うしかない…。勇気を出して振り返りました。
「タイガァァァァアァアア!!!!」
呼んでも呼んでも気付かない大賀にしびれを切らし大股で迫り来るミヤさん。迫力と音圧で尻もちつきそうになるのをなんとかこらえ私は言いました。
「アイツ…おおがです……」
聴力検査で出してもいいくらい小さい声だったことでしょう。それを聞いたミヤさん。
今考えると自分が間違えているのだから、照れ笑いとかアチャーみたいなリアクションをとってもよさそうなものなのに。
こちらに振り向き、
「はよ言わんかぁぁぁあ!!!!!!」
はい巻き添え。あれだけ考えたのに。巻き添え。舛添。垣添(おすもうさん)
この時のミヤさんの顔といったら。『クワッ』という効果音の挿し絵にふさわしいものでした。
ミヤさんは勢いそのまま大賀の背中に向き直ると
「ォオーーーーガアァアア!!!!!ゴラァァァアァ!!!」
ついに西洋に伝わる大鬼【オーガ】まで召喚しました。こりゃ大軍に違いない。校庭に魔法陣が浮かび上がらなかったのが不思議なくらいです。
おそらくミヤさんも最初は軽く叱って履き直させるくらいの予定だったことでしょう。しかしもはや怒りの暴風は増幅を繰り返し人外の大軍を呼び出すほどになっています。
大賀がどんな目にあったかは言うまでもないでしょう。
合掌。
ちなみに全く関係ないのに私もその場を離れてはいけないような気がして、大自然の怒りが過ぎ去るまでなぜか一緒にいました。
私にも合掌。
ミヤさんの名誉のために言っておきますが、理不尽なことで怒られたりすることは全くありませんでしたよ。有り余る怖さを持っていただけですからね。
今会いたいけど会ったら怖すぎるんだろうなあ。バレずに遠くから見たいもんです。