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知識の記録方式(47) 個別システムの限界

 ものづくりに必要な仕事は製品開発・設計、実験、試作、部品・設備調達、工程設計、生産、検査、物流などである。仕事の一つが欠けてもものは造れない。その為、これらの仕事が効率的に推進できるように組織は構成される。 
 しかし、市場の環境変化に沿って組織は改造される。ただし、情報システムは組織とは無縁に造られるものでなければならない。組織変更の都度の情報システム改造投資を避けなければならない。

 製品を開発する人、その開発した製品の図面を見る人、試作品を評価する人など、ものづくりに必要な仕事は全て人で行われている。そこでは、仕事が自動で流れることは無い。あくまでも、仕事をする人が考え、適切な組織に相談し、その結果を他の組織に伝えることが行われる。その間、生まれた情報を受け渡ししていく。

 したがって、ものづくりのシステムとは、部分だけを対象としてもうまくいかないのである。効果も出にくいのである。部分の仕事を対象にシステム化するとそのシステムを動かすためのデータを入力しなければならない。そして、その入力を最小限にしたいがために、システム化対象を狭め、個々の組織や部分の仕事にだけ活用できるシステムが造られていくことになる。

 仮にこのようなことが多く行われると当然、いわゆるスパゲッティ状態になるわけである。しっかり硬いスパゲッティなら他方を引けば他方が動くが、そうではなく、他方を動かすと余計なものが動くとか、何も動かなくなっていく。経営者が嘆きたくなるような結果に至る。このような状態にあることは、全体を見抜こうとするシステム設計者の力不足であると思う。

 整理統合しようにも、もはや個別システムを前提に仕事の進め方を標準化してしまっており、一度に同時にシステムを直さないといけないことになる。結果、手のつけようも無い状況となる。これでは人の為に役立つ情報システムではなく、全体的にみると、かえって生産性をダウンするシステムになっている。それを解決するには、物づくり全体の仕事に対して、活用できるデータを定義することが重要である。

 残念なことに、2010年ごろまでは、ものづくり全体をシステム化させようとの動きがなかった。その後も、industry4.0とかのワードが流入してきても、個別システムに動いているように見える。今後も、企業がこのような意識では、形式的なIT活用に留まってしまうのではないかと大変心配である。

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