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フォワードPER?ただのPERとの違いは?

当期マルチプルと翌期マルチプル - 時期の違い

PERを考えます。PERの式は非常にシンプルで以下の通りです。

PER = Market Cap (Share Price) / Earnings (EPS; Earnings per share)
PER = 時価総額(株価)/当期利益(一株あたり利益)

()内は、1株あたりに数字を直したバージョンです。当然ですが、1株あたりだろうが、合計ベースだろうが答えは同じです。EPSを使うと、株価の数字に即変換できるので便利なように見えますが、通常EPSが絶対値でいくらなのかということを気にしていませんので、別にどちらで覚えても大差ないと思います。

さてここで、EPSの予想値を使うということを考えます。例えば本決算の結果が出た日に、以下のような状態だったとします。

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株価の10000円は現在値であり、完全に所与です。そして、EPSの500も発表されたばかりです。当期PERは20になります。

一方の来期予想EPSである550は、ガイダンスにそった1年先の業績に対する市場コンセンサスです。この場合、現在の株価[10000]を1年先予想のEPS[550]で割った18.2xをワンイヤーPERとか呼びます。ワンイヤーフォワードPERとも言います。日本語だと一期先PERとかでしょうか。

注意点として、あくまで業績サイドを先日付を参照するだけで、株価は今の株価です。株価は1つしかありませんので。ちなみに、EPSが成長することを前提とした場合、フォワードPERはどんどん小さくなります。同じ株価に対して、使用するEPSが大きくなるので、株価÷EPSは小さくなっていきます。

なぜ翌期(フォワード)を見るのか

株価は先々の期待を織り込んで動いていきます。したがって、「来年なにが期待されているか」ということも議論したほうが株価の動きは説明できそうです。なぜなら、終わった期の数字というのはもう古く、未来の数字(に対する思惑)が市場を動かしていると考えられるからです。

特に、アーリーサイクルと呼ばれる景気サイクルの変化に敏感な企業(例えば工作機械など)は、来年景気が良ければ業績も「来年は」いいだろうということで、いわゆる「期待先行」で上がっていきます。この「期待」こそが来期(以降)の業績予想そのものであり、この数値で株価を除すことによって、「期待部分」も除去することができるので、議論がしやすくなります

具体例

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あなたはアナリストとして、当期と翌期のEPSの予想をしています。2-3か月に1回見通しを更新するのですが、今年度は業績不振により、当期EPS予想が期中どんどん下がって、100から60まで下落してしまいました。

しかしよく調べてみると、受注の回復が見られており、どうやら来年のEPSは元の水準を維持できそうです。年末にかけて、むしろ当初の予想を超えててくるというのがコンセンサスになっていきました。そこで来年度予想を100から120に切り上げました。

株価をその日のEPS予測で割れば、PERは算出できます。上記PERを見ると、当期PERは期初から上昇しました。40倍は明らかに高いと感じています。一方で、翌期は業績の急回復が予想されるため、16xで推移しており割安感があります。実際株価も年末にかけて大きく回復しました。約20%上昇しましたが、これは利益水準が100から120に増加したためで、PERは20xで変わっていません。

実務上よく使うPER

当期PERしか見ないということは、来年以降なにが起きるか考えていないというのに等しいです。したがって、実務ではデフォルトで翌期、または2期先を見に行きます。EV/EBITDAなども同じで、EVは現在の値ですが、EBITDAは先々の数字を使うことで「期待」の部分を考慮しにいきます。もちろん、時系列比較するときも、「当時の株価 / 当時から見た1期先のEBITDA」を並べることで同一条件で比較することができます。

また、年度変更の際に、業績が大きく変化するケースだと、チャートの連続性がなくなるので(年度が変わったところでがったがたになります)、常に先12か月のEPSを移動合計しながら計算する方法もあります。通常、業績予想は四半期が最小単位です。こうすると、四半期が変わるときに、4四半期のうち終わった1四半期が外れて、10か月後から始まる1四半期が追加されます。先12か月合計は、この出入りする2つの期の差分しか変化しないので、滑らかな推移を辿ります。

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このタイプのEPSの変化は、同一時期に対するEPSの見直し(予想変更)+対象時期が変わることによる成長、となります。

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