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第13回:どこにでもいるような会社員が、仕事で賞をいただいてしまった話
こんにちは。映像やWebコンテンツのプロデュースをしている多賀です。
このたび、ひょんなことから映文連アワード2024にて部門優秀賞(コーポレート・コミュニケーション部門)をいただく運びとなりました。
今回は割とどこにでもいるような会社員である私が、なぜこんなにすてきなことになれてしまったのかについて、頑張って客観的な視点を持ってご紹介していきたいと思います。
この記事を読んでくださった方々のやる気スイッチ的なものを押すことができたら嬉しいなと思います。
1.映文連アワードって何?
映文連アワードとは、
「プロフェッショナルが選ぶ、プロフェッショナルの仕事にふさわしい作品」を積極的に発掘・顕彰することによって、短編映像業界の活性化を図るとともに、次世代を担う新しい才能(学生・個人)を発掘し、映像業界のインキュベータとしての機能を担う。
とされています。
つまるところ映像業界の盛り上げを主たる目的とした賞なのです。
ちなみに、私たちDNPコミュニケーションデザインデザインは過去にも複数回の受賞実績があります。
今回エントリーするにふさわしい仕事に携わることができ、色気を出してみたところ受賞することができたわけです。
いやー、ありがたい。
2.賞に選んでもらえるような仕事ができたのはなぜ?
実は制作の過程においても映文連アワードを若干意識はしていました。
今回選んでいただいた「水無瀬イノベーションセンター イントロダクションムービー ~Impossible Object~」は『不可能立体』と呼ばれる不思議な模型を使用した錯視映像です。
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映像のコンセプトは私が依頼した映像ディレクターの発案です。「じゃあただのラッキーじゃん!」ってなっちゃうんですが、このアイデアを持ってきてもらうための情報整理とニュアンスの具現化は自分の力の見せどころだったと思います。
クライアントの積水化学工業様(以下、積水様)は水無瀬イノベーションセンター(積水様の自社施設)の来客に対し、インパクトのある映像コミュニケーションによって驚きとキラメキを与えたいと考えておられました。
この「驚きとキラメキ」をどう表現するか、そして積水様っぽさをどう宿らせるかを、決められた予算の中で達成するのが私の仕事です。
クライアントとのコミュニケーションから、私の中に確立されたイメージは「ピタゴラスイッチっぽい感じ」でした。
私は保育園に通う2児の父です。毎朝Eテレ0655と録画しているピタゴラスイッチを見るのが子どもたちの日課となっており、大人もながら見しているのが日常です。
アカデミック&理系な雰囲気の世界観は積水様っぽさとマッチしているし、皆さんご存知ピタゴラ装置は朝の眠気から覚ましてくれるいい感じの驚きをあずかるステキなコンテンツです。
「このイメージをさらに昇華させてほしい!」と依頼したところ、敏腕ディレクターがズバリな『不可能立体』を見つけてきてくれたわけです。
このような「情報整理とニュアンスの具現化」の作業がきちんとできていないと、ディレクターはさまざまなジャンルから無数のプランを用意しなければいけなくなってしまいます。
わかりやすく言えば、「このピッチャーはストレートしか投げてこない!」とわかっていれば、ホームランを打てる確率も上がるっていうのと似ていると思います。
ちなみに私は草野球をやっているのですが、球種が絞れないピッチャーからヒットを打つのは超絶難しいです。草野球レベルでもこれなんで、大谷選手のすごさは推して知るべしといったところです。
つまり私の仕事は相手ピッチャーのスカウティング(情報を収集し分析すること)と後ろに続くバッターへの情報伝達です。
実際の仕事は野球じゃないので、必要となるスキルは
1.クライアントが実現したいことの本質が何なのかを聞き出す力 と、
2.ふわふわしているニュアンスをさまざまなワードを用いて具現化する言語力
ということになります。
3.私は“あの海賊団”の船長だ!
突然の告白に驚かないでください。
ちなみに私が例の一族というわけでも、40手前のおじさんが現実に目を背け海に出たがっているわけでもありません。
プロデューサーの仕事というのは『みんなが大好きなあの漫画の主人公』に似ているという話です。
(意味がわからない人ゴメンナサイ。この感じ、ちょっと続きます)
あの麦わらの海賊はものすごく強くて、仲間を引き付ける魅力とさまざまなバックボーンを持つ人たちを受け入れる広い心があって、そして海賊王になるという壮大な野望を持っています。一方で、海を航海するための技術や、生きていくために必要な食事や医療、その他船を造ったり整備したりする技術は全然持ち合わせていません。
彼はそれを自認しています。そして「自分は何もできない」ということを自称しています。
それでも各分野のプロフェッショナルを仲間に加え、夢の実現に向かっていく壮大な冒険譚なのです。
話は戻って私です。
私はこの業界で名をはせるほどの強さがあるわけでもなく、あの海賊のような広い心があるわけでもなく、また強い野望を持っているわけでもありません。
さらに言えば、私は自分の夢ではなくクライアントの夢の実現のために動いています。
そんな私のどこが“あの海賊団”の船長なのか。
それは映像演出、撮影技術、編集技術、その他さまざま、私はコンテンツクリエイションに必要なスキルにたけていないけどそれぞれのプロフェッショナルに助けてもらえる関係性を構築できていること、そして仕事を楽しいと思っちゃっているところにあると思っています。
クライアントと接する立場には幅広い能力を高める、いわゆるジェネラリストの能力というものが求められがちです。もちろんジェネラリストとして活躍されている人がたくさんいることもわかっていますし、私自身もそういった資質を伸ばしていきたいとも考えています。
一方で、クリエイティブの現場においては、各分野のスペシャリストを集める能力、束ねる人間力みたいなものの方が、実は重要な要素なんじゃないかなって思っています。
そのために普段からたくさんの人と出会い、コミュニケーションを図っていく必要がありますし、そのネットワークを広げていくことも大事なことだと思っています。
「仕事の楽しさ」については、とりわけ今回の作品は見た目にもわかりやすく、「不可能立体」という不思議な模型そのものの面白さもありました。
撮影時にはある種の文化祭的なノリもあって、そのノリをともに形成してくれたスタッフの方々、クライアントのご担当者様方には感謝しなければいけないと思っています。
ちなみに「仕事の楽しさ」を求める姿勢が周囲の人を引き付けるということに気が付いちゃったのは社会人になって割と早い段階でした。過去に担当していた案件のディレクターの方がとても愉快で仕事を楽しんで取り組まれていて、ほどなくして私はその人のために仕事をしたいと思っていたのです。
そういった意味ではさまざまな経験を積ませてくださった先輩方には改めて感謝しないといけないですね。
さいごに
なんだかとりとめもない自分語りになってしまって後から見返して恥ずかしいのですが、この記事を読んだ人がなんかちょっと前向きになれたり、行き詰まっている現状をブレイクスルーできたりすることのきっかけになればうれしいなと思います。
私自身、これまで以上にたくさんのクライアント様とお仕事をご一緒させていただきたいですし、クリエイティブの仕事に興味を持ってくれる人が増えたらうれしいなと思っています。
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