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3巻発売&三部作完結記念【ここが違うよ!せかまほ駒草出版バージョン】

 6/2に『世界の終わりの魔法使い 完全版 3 影の子どもたち』が駒草出版から刊行されました。このシリーズは2022年春までに全6巻を刊行し、完結する予定です。とりあえずこの最新3冊で折り返し地点。「最初の三部作」が完結し、次巻4巻以降、完全新刊となる5・6巻を含む「新・三部作」がスタートします。

 思い出せば、民間で成立しにくかった企画「せかまほ6部作構想」を、文化庁つまり「公」のサポートで電子書籍で制作すると発表したのが2019年の11月。電子書籍はすでに2021年3月に1-3巻を配信済み。駒草出版からの紙の単行本の刊行は、電子版から9ヶ月ほど遅れてスタートした発展的プロジェクトです。

 さて、ほぼ同じように見える『世界の終わりの魔法使い 完全版』電子版(島島)と、同・紙の単行本(駒草出版)。実は明確な差異があります。それも、細かすぎて伝わらないような微細な差異が・・・。以下説明します。

ここが違うよ!【その1 写植】

 旧版、つまり河出書房新社から刊行された1-3巻、そして1冊だけ講談社から刊行された4巻は、それぞれ写植指定を行う担当編集者が異なっていました。本シリーズは、連載ではなく、数年おき(不定期)に、描き下ろしで刊行されました。河出、講談の違いではなく、実は河出時代から担当編集者は各巻で違っていて(より詳しい事情を知りたい方はこちら)、結果、実は写植に統一性がありませんでした。

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 というわけで、画像のように駒草版【完全版】全6巻では全ページ写植を新調しています。写植は読者をスムーズに物語に呼び込むためのもの、「あ、ここが違う!」と「違和感」を覚えるほどの変化を必要とはしません。気付かれず、さりげなく、没入感や臨場感の底上げをします。紹介したのは一例ですが、現在刊行されている1-3巻の写植は、人知れずアップデートされています。

ここが違うよ!【その2 魔法文字】

 写植もそうですが、良いコンディションを保つため、今回、原画の再スキャニングも改めて行っています。制作のデジタル化が進むマンガ業界ですが、『世界の終わりの魔法使い』シリーズは未だにアナログ制作。「紙に手描き、スクリーントーン手貼り」の状態で制作されており、6巻までのトーンもまとめ買いしています。

 また島島DLストア(booth)で先行販売している「私家版」(9冊)には、生原稿を証明する鉛筆の跡が残ります。

 と同時に、せっかく再スキャンするならばと、一見気付きにくい、しかし作品全体にわたる修正を生原稿に施しています。それが「魔法文字」「科学文字」。古くは『指輪物語』のトールキン、最近では『進撃の巨人』の缶詰、ファンタジー作品ならば人工言語の創造は必須? そんなわけで、以下のような言語を二種類作りました。

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 アンのセリフ、背景や小道具、この「人工言語」は再スキャン時に作品のあちこちに描き加えられ、巻末の「魔法文字」「科学文字」の対応表により、読み解くことができます。

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 さてここで唐突にクイズです。コロナ禍で限定販売した下記のマスク(再販予定なし、判型は無料配布中)には何と書かれているでしょうか? さあ翻訳だ!(答えは記事末尾に↓)

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ここが違うよ!【その3 地図】

 旧・河出版では、色紙に印刷された見開き2ページ分サイズの地図を二つ折りにして挟み込みました。島島電子版には、それをカラー化した地図が見開きで挿入されています。しかし、駒草出版の単行本では、一見地図が見当たりません。まさか予算削減・・・?

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 いいえ、実は、新しい地図は「カバー裏面」にあるのです。もしかしたら、気づいていない読者の方もいるのでは? 2ページ分の見開きが限界だった旧地図に対し、カバー裏を活用すれば「2ページ+両袖」のスーパー・ワイドサイズに! 電子書籍にはできない、紙の単行本のアイデンティティの体現です。単行本ご購入いただいた皆様、ぜひカバーを外して地図を広げてみてください!

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 原画はこちら。カバー裏よりもさらに左右に広いため、トリミングして使っています。

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ここが違うよ!【その4 描き下ろし短編】

 駒草出版の各巻には、電子版には未収録の「描き下ろし短編」が収録されています。これも地図同様に、シリーズ全体を繋げる、ブリッジする意図があります。マーベル映画のエンドロール後に流れるあれとおなじ役割です。1巻の巻末には6巻に接続される短編「繰り返しの世界」を、2巻には後日談「戦争が終わった後に」、3巻には5巻に接続される「知識をはこぶ船」を収録しています。

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ここが違うよ!【その6  あとがきにかえて】

 河出書房版には作者目線の「あとがき」がありましたが、島島電子版にそれは未収録。駒草出版では、「あとがき」の代わりに「あとがきにかえて」と題する、キャラクター同士のトークを収録しています。掛け合い漫才、あるいはアニメ・ラジオ調?  1巻はアン&ムギが出演、2巻はキャストが変わりネズ&クリム、3巻ではアン&ムギに加え謎のゲストが登壇します。サンプルとして2巻の画像を貼ります。

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ここが違うよ!【その8 チラシ封入】

 これは新刊3巻からなのですが、折り込みチラシが封入されています。これは出版社の広告ではなく、島島制作のオーディブック(Amazon Audible & オトバンク)に関する広告です。電子音声配信を、SNSではなく「紙」「リアル」で告知する実験です。

ここが違うよ!【その9 ウェブ連載】

 刊行と並行して、駒草出版公式noteにて描き下ろし連載『世界の終わりのいきもの図鑑』を連載中。作品に登場する「変な生き物」を紹介しています。ウェブ連載なので、iPadで仕上げています。

    ここが違うよ!【その10 サインカード封入】

 あまり周知されていな印象がありますが、刊行済みの1−3巻には「手描きサインカード」が封入されています。一枚一枚手描きで、ランダム封入ではなく「単行本全てに個別の手描きカード」を封入。初回流通分なら当選率100%! これは「サイン会を行いにくい状況下での代替え行為」であり、旧来の書店流通で可能な予算のかからない人力の販促です。返本され出版社に本が戻るととカードは消える仕組みなので、「書店に本を留まらせる策」でもあります。帯で派手に謳っているわけでもなく、また封入チラシ同様ページに挟んでいるため、気づいていない書店員さんも多いのでは・・・?

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 現在は先行して4巻のカードにサイン中。というわけで、続刊4巻から始まる「新・三部作」にもご期待ください。(画像は、間違えてノロ王子にサーフボード持たせてしまったボツ絵)

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 その他、「影の魔法のライセンス」の実装や、Audibleのリリース、制作中のLINEスタンプ、などなど、ご報告もあるのですが長くなるのでここでは省略。引き続き『世界の終わりの魔法使い 完全版』(駒草出版)をよろしくお願いします。

 最後にクイズの答えです。マスクに記された魔法文字を英語に翻訳すると、T・・・A・・・K・・・E・・・C・・・A・・・R・・・E・・・

答えは「Take Care」でした。みなさまお大事に! プー!

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