「13の理由」
最近、知り合いともぎりぎり言い難い人が亡くなった。
理由は分からない。でもどうやら"自ら"らしい。
周りの人は野次馬となって、あーらしい、こーらしい、と噂が飛び回っている。
それを聞いてしまう自分もきっとその中の馬の一匹なんだろうとも思う。
ここ数日、亡くなったその人のことを考えていて、ふと自分の人生の終わりを考えた。
どうして終わりを迎えようと思ったのか、もし明日死を迎えたとき「終わりでもいいや」って思えるんかね、と。
なんとなく知りたくなった。どうやって"自ら"その選択にたどり着くのか。
それで検索して出会ったドラマだった。
「このテープの主人公は君だよ」
13個のテープが主人公である高校生のクレイの元に届く。
テープを作ったのはクレイが恋していたハンナ・ベーカリーという女性。
彼女は先日"自ら"この世を去った。
テープにはそれぞれ主人公がいて、このセリフは各テープでハンナがテープの主人公へ向ける言葉。
各テープの主人公は同じ学校の同級生たち。
彼女とテープの主人公との間にあった物語をクレイが聞く。
聞きながら回想へと入り、彼の頭の中で彼女が蘇る。現在と過去をクレイが行ったり来たり、後悔と思い出が交錯する。
またこのテープはクレイだけじゃなくて、各テープの主人公も聞いていて、ハンナの望みで順番で回っている。
そうやって彼女を追いやった理由にたどり着いていくクレイと、既に知っている同級生たちの焦り、嘘、自己防衛のためのやり取りに人間らしさや高校生らしさが詰まっていて生々しい。
「誰か一人が彼女を殺したんじゃない。みんなが彼女を殺したんだ。」
クレイの友人、トニーが言った言葉。
誰か一人じゃないんだ。いろんなことが重なって、それをきっかけに次の物語が始まって、少しずつ彼女を追い込んだ。
そうやって一人一人の登場人物にフォーカスが当たっていく。
恋愛、友情、レイプ、トラウマ、スクールカースト、貧富の差、いろんな要素と理由がそれぞれの「13の理由」に詰め込まれている。
「まだ聞いてないのか?」
すこぶるクレイのテープを聞くスピードが遅くて、それはハンナのことを思い出して苦しんでしまうからなんだけど、次の話を聞きたいイライラと、ゆっくりフォーカスを当ててくれる面白さにハマってしまうから製作陣優秀だな、と感心した。
テープの内容や順番についてはあえて書きません。見る楽しみが半減するから。
ぼくのような経験がなくてもきっと面白いドラマだと思う。
ちなみにNetflixオリジナルドラマだそうです。
人生を終える前に
ぼくのぎりぎり知り合いとも言い難いその人がどうして"自ら"それを選んだのか、そこにたどり着くことはきっとない。
きっとないんだけど、おそらくその人がそれを選んだ理由は1つや2つじゃないんだろう。
ぼくが知らない物語がいくつもあって、それがたくさんの理由となって、そうして選んだ。たぶん。
ドラマを見る前も見た後も、いろんなことが頭の中をぐるぐると回っている。
"自ら"それを選んだことによる一番の被害者は誰なんだろう。本人も然ることながら、親も被害者なのは間違いない。
まずは後悔しない自分になりたい。
ダルビッシュが40歳の自分がタイムスリップしてきたって話のように、死ぬ時に悔しさにまみれているところを想像して一つずつ後悔しない人生を歩んで行きたい。自分に厳しく自由に。
自分が思っている以上に、人生は自由だ。選択肢は無限である。選択肢を少なくしているのはいつだって自分なんだよ。
そして子供たちに。
ドラマを見て、学生の時の大人にバレたらいけないっていう後ろめたい気持ちを思い出した。ここでいう大人は先生や親である。そして大人の無力さや無神経さ、子供と大人の住む社会構造が違うこと、大人が大人の住む社会構造が子供の社会にも適用されていると勘違いした上で接していることも思い出した。だからハンナは救われないのだ。
きっと子供たちが親にいじめや嫌なことを言うのはとてもハードルが高い。無理とは言わないが期待できることではない。
だから、親が子供の社会を理解してあげることが大事なんだろう。我々のとは全くの別物だと。
話はきっとそこからなんだ。
他人の死から自らの人生に活力を得たかのような発言は、我ながら不謹慎にもほどがあると思う。
けれども死は平等に全員にやってくる。
だからこそ死も含めて人生を見つめるべきなんだよ。いつだっていい。不謹慎でもいい。
自分の人生に責任取れるのは自分だけなんだから。
最後に、考える機会をくれたドラマの制作陣とあなたへ感謝を。ありがとうございました。
おやすみなさい。
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