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ヨルシカ LIVE「前世」のモチーフについて思ったこと

初めまして、DBL-K です。

ヨルシカ LIVE 2023「前世」にて2公演、ヨルシカ LIVE TOUR 2024「前世」にて2公演に行き、10月の名古屋公演終わりにふと思ったことがあったのでノープランで書き始めた次第です。LIVEそのものの感想やレポート、考察の類ではなく、LIVE「前世」のモチーフに関する、ちょっとした想像程度のものですが、少しの間お付き合いいただけると嬉しいです。
*以下ネタバレになり得る内容を含みます。「再々演」がないとも言えないのでお気を付けください。












夏目漱石にまつわる俗説「月が綺麗ですね。」= "I love you."

『夏目漱石は "I love you." を「月が綺麗ですね。」と訳した』という話はあまりに有名ですが、英語教師時代の彼が "I love you." を日本語に訳すなら、それは間接的か比喩的に伝えるはずだから、「月が綺麗ですね。」とでも訳しなさいと生徒にアドバイスした、という言い伝えだそうです。

この言い伝えに真実味があるのは、専らその卓越した言語観とロマンティズムに加えて、夏目漱石のネームバリューによるものでしょう。あるいは、こういうことを言っとけば教養か何かがありそうに思われるから、とかかもしれません。

この言説に対する評価はさておき、重要なのは多くの人が「月が綺麗ですね。」= "I love you." という訳し方をなんとなく知っているということです。言い換えれば、重要なのは、月が綺麗である、という状況と、誰かに好きだ、愛していると伝えること、がどこかで繋がっている感覚です。
さらに言えば、この言説を知る人の多くが「この等式、夏目漱石が言ってるからなんか否定しづらいけど、ちょっとピンとこないな」と思っているのではないか、ということも重要です。

ヨルシカ LIVE「前世」、月と愛の話ではなかったでしょうか。さらに言えば、月を見たとき伝えたい思いが共有できない話ではなかったでしょうか。
月が綺麗であることを伝えることが、伝わらない方法で、言葉足らずな方法で、人に愛を伝えようとすることだとすれば、終盤の独白のようなシークエンスの発想が見えてくるような気がします。

愛を歌えば言葉足らず
踏む韻さえ億劫
花開いた今言葉如きが語れるものか

https://yorushika.com/lyrics/detail/43/

勝手にこの繋がりを見出し、夏目漱石についての言い伝えが、ヨルシカ LIVE「前世」の物語のモチーフ、あるいは出発点の一つだったのではないかな、などと想像しています。

余談:獣が月に吠える理由との関連

これはもはや自前の感想ですらないですが、「月に吠える」を筆頭に、ヨルシカは獣が月に吠える理由について表現してきました。

萩原朔太郎の詩集「月に吠える」から。月に吠える犬は、自分の影を怪しみ恐れて吠えるのだという。本詩で再解釈する月は魂の影であり、表現衝動であり、自らという形の獣性でもある。 n-buna

https://x.com/nbuna_staff/status/1445676245757222912?s=46

ヨルシカ LIVE「前世」の月のシークエンスは、それまでの前世に纏わる物語が現在進行形の生となっていくものでした。それまで見てきた自身の前世の「魂の影」が月であり、愛を伝えたい「表現衝動」であり、その愛は「獣性」の限り避けられないもの、と言えるかもしれません。

私がヨルシカ LIVEを好きな理由の一つに、披露されない曲の存在を感じられることがあるから、というのがあります。「前世」における最たるものが「月に吠える」なのではないかと思います。

終わりに

お付き合いいただきありがとうございました。

そもそも文学の知識が足りないのもあり、もっと時間をかけて調べ物でもしたら、より興味深いものになったかとも思いますが、千秋楽後の気持ちが熱さがなければ、書き上げられもしなかったような気もするのでこれで良いと思うようにします。

文学知識があるともっとヨルシカを楽しめるのだろうな、と思わない日はありませんが、無知であることが違った感覚をもたらしてくれると信じて、引き続き無理せずマイペースに聴いて、自分なりに楽しんでいければ良いなと思いながら、本稿を終わろうと思います。

ありがとうございました。また思い付きがあれば書こうと思います。

DBL-K

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